穴村久の書評ブログ

漫才哲学師(非国家資格)による小説と哲学書の書評ならびに試小説。新連載「失われし時を求めて」

才能豊かな橋下徹くん

2012-11-12 23:05:55 | 書評
パトリシア・ハイスミス日記も五回目です。

短編集「11の物語」、他には大して興味あるものはありませんな。もっとも、まだ全部読んだ訳ではないが。一つ言えるのは彼女の短編はみんなこれは長編に膨らませられそうだな、というのが多い。こういう人は珍しいのではないか。モームとかモーパッサンとかはそんな気が起きない。もっとも、これも読む側の腕、技によるのでしょうが。

「太陽がいっぱい」を半分ほど読みました。物好きだなあ、と言われそうだが、適当な本がないときにとにかく続けて読ませるのはやはり彼女の「腕」でしょう。これも映画化された作品で映画の題も日本訳と同じで「太陽がいっぱい」。ところが小説の方の原題はThe Talented Mr.Ripley です。才能に恵まれたリプリー氏とでも訳しますか。あまり詩的な原題ではありません。

調子が良くて、相手を乗せることがうまい軽薄な青年です。波に乗って大化けする。なんとなく、橋下徹氏を思い出させます。

これも『見知らぬ乗客」と同じ三部構成。第一部犯行に至るシチュエイションが書き込んである。ただ、見知らぬ乗客と違い犯行は突発的だから第一部は犯行計画という訳ではない。

第二部は犯行、うまく主人公が機転を利かせて糊塗していくが、次から次へとばれそうな事態が出来(シュッタイ)する。それを乗り切ろうとして第二の成り行き殺人を犯す。この辺は読んでいてはらはらどきどき、主人公に肩入れしてうまく行けばいいな、なんて気にさせます。

第三部は読んでいないが、イタリアの警察との鬼ごっこということになるのでしょう。

ところで今日この映画のDVDが無いかとレコード店にいったら「見知らぬ乗客」のBDがあった。買ってきたのでこれから見てみます。チャンドラーが脚本化に梃子摺ってヒッチコックと喧嘩したというところにも興味がある。しかし、太陽がいっぱいのDVDは品切れでした。