穴村久の書評ブログ

漫才哲学師(非国家資格)による小説と哲学書の書評ならびに試小説。新連載「失われし時を求めて」

ヘミングウェイはハードボイルド作家か

2014-08-27 08:04:12 | 書評
ミステリーの初期ハードボイルド作家とならんでヘミングウェイをハードボイルド作家ということがある。これまでに読んだところでは同意しかねる説である。

もっとも初期の短編「殺し屋」はサスペンスとしても読める通俗作品ではある。さて、「武器よさらば」の主人公はタフガイである。ま、ハードボイルド小説に登場する主人公に似ているともいえないことはない。

やたらに酒を飲む場面が多い。不自然である。これはハードボイルド・ミステリーの多くのヒーローと同じである。いやマーロウの何十倍も飲んでいるようだ。不自然であるゆえに興ざめである。もっとも青少年読者にはかっこいいと受けるのかも知れない。水だってあんなにガブガブ飲めるものではない。

女の方もすごい。脚を負傷してベッドから起き上がれなくても年がら年中、病室のドアを開けっ放しで女とシコシコ、ギッタンバッコだ。手術の直前だろうと関係なし。種馬同様のはりきりかたである。大変に不自然なタフガイである。
マイク・ハマーも真っ青である。

最近は禁煙風潮で映画でも喫煙場面は少ないようだが、昔の若者向けの映画では日本でも、洋画でもやたらに喫煙場面が多かった。映画のポスターでもそういう場面が売りだった。チンピラがなにかというとタバコを唇のわきからたらす。あれがかっこいいんだね。ヘミングウェイの飲酒場面もその趣がある。

やはり原文で読まないとハードボイルドの所以は理解出来ないか。なにか読んでみるかな。あらかた、めぼしいところは読んでしまったし、後のこっているのは、「誰がために鐘は鳴る」くらいかな。それとも読んでしまったが「われらが時代」かな。これは短いからいいかも知れない。

しかし、翻訳で読んでもハードボイルドを予想させるような作品ではないしな。