sports-freak.blog
観客席で思ったこと ~200文字限定のスポーツコラム~
 



先週、世界バスケを観戦したさいたまスーパーアリーナで、プライド無差別級グランプリ2006決勝戦を見た。プライドの観戦は、昨年の8月にヘビー級グランプリ決勝戦以来、およそ1年ぶりだった。

昨年との一番大きなちがいは、フジテレビが放送を中止し、イベントにも関与していないことだろう。イベントとしては、これまでのプライドと同じように見えたが、会場の装飾や対戦カードを紹介する映像がやや貧弱になっていたように思った。また、決勝戦をリングサイドで観戦していたノゲイラが、負傷を理由に、決勝戦後の3位選手の表彰式に姿を見せなかったことなど、段取りの拙さも垣間見えた。

ただ、そんなことよりも、リングの上の密度が濃くなれば問題はなかったのだが。

準決勝のミルコ・クロコップ対バンダレイ・シウバ、ホドリゴ・ノゲイラ対ジョシュ・バーネットの2つの試合は、十二分に見ごたえがあった。これまでのプライドの看板選手同士の決勝戦進出をかけた戦いは、大観衆を熱狂させた。

そして、ミルコ対ジョシュの決勝戦も、準決勝以上に見る者の心を熱くした。この日、32歳の誕生日を迎えたミルコが優位に試合を進める。ノゲイラとの対戦でのダメージが感じられるジョシュは、寝技に持ち込みたいところだが、逆に、ミルコに上になられてしまう。ミルコがマウント状態からパンチを繰り出す。最後は、必死にこらえるジョシュの左目あたりにとどめのパンチが入り、ジョシュが思わずタップ。試合後のジョシュの顔の左半分は少し変形していたのではなかったか。短い時間で決着がついたものの、2人のプライドが凝縮していた試合だった。

試合後の表彰式で、チャンピオンベルトを腰に巻いたミルコが泣いていた。プライドという舞台での、これまでの苦悩が思い起こされたのだろう。いよいよ、ヒョードルとの対戦が待っている。

無差別級グランプリの試合はプライドらしい素晴らしいものだった。しかし、その一方で、この日登場した新たな顔が総崩れだったことは、プライドの厳しさとともに、プライドの今後の不安を感じさせた。

韓国相撲シルムの王者、イ・テヒョンとベテランファイター、ヒカルド・モラエスの対戦では、両選手にテクニック、スタミナ、スピリットのすべてが欠如していて、場内の失笑を買うはめになった。続く、期待の日本人選手、中尾“KISS”芳広と中村和裕の対戦も、「戦い」の片鱗さえなく、最後はブーイングの嵐となった。マウリシオ・ショーグンに敗れたザ・スネークもシャープな蹴りを披露したものの、総合格闘技の場には程遠い選手だった。今後も新たな選手の発掘に期待したいが、そのときの最低条件として、「気持ちの折れない選手=プライドを放棄しない選手」であることをあげておきたい。

プライドがフジテレビと決別してから3ヶ月。この日の観衆の数は4万7410人と発表された。多くのプライドファンの期待にこたえるためにも、主催のDSE(ドリーム・ステージ・エンターテインメント)には、確固としたプライドをもって、がんばってほしいと思う。

コメント ( 0 ) | Trackback (  )




プライドグランプリ2005決勝戦(さいたまスーパーアリーナ)

今日2005年8月28日、さいたまスーパーアリーナにつめかけた4万7692人(昨年の動員新記録とまったく同じ)は、プライドの歴史に残る2つの光景を目にしたことになった。

一つ目は、プライドグランプリ2005ミドル級トーナメントの準決勝で、王者ヴァンダレイ・シウバ(ブラジル)が、ヒカルド・アローナ(ブラジル)に敗れたことである。

この日の第2試合、早くも最高潮となった観客の大声援に迎えられたシウバだったが、いつものような覇気がなく、アローナに常に優勢に試合を進められ、0対3で判定負けを喫した。1回戦で桜庭の顔面をボコボコにして、強さと冷徹さを印象づけたアローナに対して、シウバは何にもできずに、シウバらしさのかけらをみせることなく、ミドル級グランプリから去ることになった。

試合内容から十分予想できたことだったが、判定がくだった瞬間、会場にはすーっと冷たい空気が流れた。期待していたシウバの敗戦で、一気に観客のボルテージが下がったのがわかった。

シウバを倒したアローナを決勝戦で破ったのは、シウバの後継者と言われるマウリシオ・ショーグン(ブラジル)だった。準決勝のアリスター・オーフレイム(オランダ)に続いて、2試合連続のKO(レフェリーストップ)勝利は新王者にふさわしいものだった。ショーグンの勝利で、さいたまスーパーアリーナには、最後に再び熱い空気が流れた。

桜庭とのライバル対決をへて、日本のファンの心をつかんだシウバの敗北と後継者ショーグンの優勝は、新しい選手が次から次へと現れるミドル級の厳しさと「桜庭・シウバ」時代の終わりを感じさせるものだった。

そして、もう一つは、ヘビー級のタイトルマッチで、王者エミリヤーエンコ・ヒョードル(ロシア)が、ミルコ・クロコップ(クロアチア)に勝って、タイトルを保持したことである。

関節技が得意なアントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ(ブラジル)が勝てなかったヒョードルを倒せるのは、強烈なハイキックという必殺技をもつ打撃系のミルコしかいないはずだった。第6試合に登場したときのミルコへの声援、すなわち期待は、この日の中では、シウバに次ぐ大きなものだった。

しかし、その期待は、試合時間が進むにつれてしぼんでいった。序盤こそ互角だったが、徐々にヒョードルが巧さを発揮し始める。ヒョードルは勝つことと同時に、負けない試合展開に持ち込む巧さを持っていた。

テイクダウンを仕掛け、ミルコを倒す。インサイドガードながら、常にミルコの上になり、細かいパンチを繰り出しミルコのスタミナを奪う。第3ラウンドには、ミルコのハイキックが、ヒョードルのわき腹を軽く叩くほどの弱弱しいキックになっていた。今までに見たこともないミルコのキックを見たとき、観客はヒョードルの勝利を確信した。誰がヒョードルを倒せるのだろうかという疑問とともに。

シウバや吉田秀彦がヘビー級への階級アップを匂わせているが、この日の試合を観た限りでは、2人ともヒョードルにはほど遠い。ヘビー級には新しい風が吹かないのだろうか。ヒョードルの時代はいつまで続くのか。

ミドル級よりも軽いライト級でおこなわれる「プライド武士道」も群雄割拠の様相を呈している。それはそれで面白いのだが、最強の格闘家であるはずのヘビー級を活性化させるために、ヒョードルの地位を脅かす新たな刺客の登場を願ってやまない。

コメント ( 0 ) | Trackback (  )




全日本柔道選手権大会(日本武道館)

4月29日(みどりの日)の恒例イベント、体重制限を設けず日本一の柔道家を決める大会。
ここ数年は、井上康生中心の大会だった。しかし、今大会は、ケガで井上が不参加。他の出場選手の顔ぶれはあまり変わらなかったが、井上の名前がないだけでちょっと盛り上がりに欠けた。そのためか、会場の日本武道館もかなり空席が目だった。そんななか、結局王者の座を射止めたたのは、やはり五輪(アテネ・100kg超級)王者の鈴木桂治だった。
1回戦は、エンジンがかからなかったのか、優勢勝ちだったが、続く2回戦、3回戦、準決勝はきっちり1本勝ちを奪った。その試合ぶりは、あわてず、さわがず、一瞬のすきを逃さないものだった。決勝は、ベテラン村元の圧力に押され、旗判定(2対1)となったが、4週間前の体重別選手権をケガで回避していたことを考えると、十分王者らしい戦いを見せてくれたといえよう。
井上なきこの大会。鈴木のほかに注目されたのは、棟田の復活、高井の躍進。そして、アテネ五輪66kg級王者内柴が、体重が2倍近くもある猛者にどこまで戦えるか。
棟田、高井は、決勝に進出した村元にいいところなく敗れた。
内柴は、普段は90kg級で戦う飛塚に1分強で軽く投げ飛ばされた。内柴と飛塚が組んだ姿は、まるで大人と子ども。ぼくのまわりは、内柴が所属する旭化成の応援団の席だったが、その身内からも思わず笑いが漏れるほどの光景だった。格闘技において「柔よく剛を制す」は真理かもしれないが、「小よく大を制す」というわけではない。
五輪3連覇の野村も、それがわかっているから、この大会には出ない。世界王者が簡単に投げ飛ばされてはいけない、というのが野村の信念なのだ。しかし、その野村に唯一勝ち越している内柴は、大男への挑戦を選んだ。
しぶとく王者の威厳を示した鈴木桂治と、王者の肩書きを投げ打って挑戦した内柴正人。
みどころは十分にあった大会だった。

コメント ( 0 ) | Trackback (  )



   次ページ »