<パリ・オリンピック雑感 2024/8/17>
パリ大会の勝ち組の一つとして、国際オリンピック委員会(IOC)の最高位スポンサーである「ワールドワイドパートナー」のサムスンがあげられるだろう。サムスンは、1998年の長野冬季オリンピックからのIOCパートナーで、「ワイヤレスコミュニケーション機器、タブレットおよびその周辺機器、携帯電話」を権利カテゴリーとする。
サムスンは、今回のパリ・オリンピック&パラリンピック大会で、オリンピックとパラリンピックの選手、ファミリー(役員など)を対象に、同社の新製品スマホ「Galaxy Z Flip6 オリンピック・エディション」約17000台を提供する。パラリンピックはこれからだが、オリンピックでの、その効果は絶大だった。選手村で製品を受け取った選手たちが、早速、そのことを動画に撮ってSNSで発信した。同製品の他にも医療品などが選手村で配られるのだが、そのキットを紹介する動画がたくさん流れていた。サムスンにすれば、製品を渡しただけで、世界中のオリンピアンがタダで、新製品の宣伝をしてくれていることになる。過去に、日本代表選手団に対して、NTTドコモがスマホを、パナソニックが小型ビデオカメラを提供したことはあった。しかし、選手たちが、そのことを発信することはなかった。その思考も、手段もなかった。時代が変わったのだ。
そして、それ以上に、インパクトがあったのが表彰式だ。メダル授与、優勝者の国歌吹奏の後の表彰台上でのフォトセッションのときに、係員がメダリストにスマホを渡し、自撮りを促していた。金、銀、銅メダリストたちが仲良く写真を撮る。もちろんその画像はすぐにSNSで拡散される。その交流を深め、広めるツールとしてメダリストの手にあるのは、選手村でも配っていたスマホ「Galaxy Z Flip6 オリンピック・エディション」だ。
オリンピックの表彰式でメダリストに自社製品を持たせ、使わせるなんて、史上最高のスポンサー・アクティベーション(スポンサーの権利を活用してコミュニケーション、プロモーション、キャンペーン、イベントなどを実施すること)ではないか。
選手・役員へのスマホの提供も表彰台での自撮り促進も、SNS時代のオリンピックだからこその仕掛けであり、見事にはまった。サムスンの幹部は笑いが止まらないだろう。