梅の実を採りに来るようにと、母から電話があった。3本の梅の木には、たわわに実がついていた。母の手製の収穫袋は、エプロン仕様の大ポケットのものだ。木に登って手を伸ばしてどんどんポケットに梅を入れていく。
いらない枝を伐採してほしいと父が言う。膝が痛い父は、家の中から梅採りにやかましく口だけ参加していた。木に登るわたしに「猿みたいなもんや」というので、「さるお方と言うてほしいわ」といいつつ、豚もおだてりゃ木に登る式で、のこぎり片手に枝を切る。そういえば「桜切るバカ、梅切らぬバカ」という。下の枝に陽が当たるように切ったものの、枝がひっかかって下に落ちない。なかなか俄か庭士はうまくいかない。
しこたま喋りまくる父に釘をさすと、父は旦那に「あれは、よくしゃべるし、忙しない。誰に似たんやろう?」と、言うのでおかしくて笑いをこらえていたのだという。その間、母は黙々と梅を採っている。