しかし震災復興が急がれる臨時国会を一週間も休止してまで出席する
必要が本当にあったのかといえば、実は決してそうではない。
国連総会の中心は21日から始まる各国代表の一般討論である。
しかし今年それに参加するのは、国連加盟国・地域193のうち121
である。実に三分の一以上が参加しないのだ。
しかも参加して一般討論をするのはその国の大統領・首相とは限らない。
外相などの閣僚はもとより、現地の国連代表部大使が行なう国が多い。
現にわが国も大使が日本を代表して一般討論を済ませた例は過去にも
多くあった。
そう言うと、現地大使ですますような国は予算のない小国だろうという
声が聞こえきそうだが、それは間違っている。
今年は中国の胡錦涛国家主席は出席を見送っている。
今度の国連の最大の焦点はいうまでもなくパレスチナによる国連加
盟問題だ。
当然ながら世界はアッバス・パレスチナ自治政府議長の演説に注目する。
メディアは野田首相の初デビューだと騒ぎたてるが、初デビューする
のは何も野田首相だけではない。
ブラジルのルセフ大統領は女性として史上初めて一番手で演説するし、
「アラブの春」を象徴する中東の新代表たち、特にリビアの国民評議会
代表の演説に世界は注目するに違いない。
野田首相は、大震災への支援のお礼だとか、復興についての決意や原発
事故の安全表明などと言っているが、半年もたって大震災や原発を世界に
語るのは自意識過剰だ。世界の関心はとっくに別のところに移っている。
それでは野田首相はなぜ国連総会に行くのか。
いうまでもなくそれは真っ先に訪米することであり、オバマ大統領と
会談するためだ。
しかもそれはワシントンを訪れそこで行う公式な首脳会談ではない。
あくまでのニューヨークのホテルで行なう国連総会の機会を捉えた
非公式会談に過ぎない。
そこまでして何を話すと言うのか。
実は何もない。
それは露払いとして19日に行われた玄葉外相とクリントン国務長官
の会談をみれば明らかだ。
玄葉外相は若かりし頃の自分とクリントン前大統領との写真を見せて
「これが誰か分かるか」とクリントン国務長官に聞いたという。
クリントン国務長官は、内心ではあきれ果てていたことだろう。こんな
写真を持ち出して関心を惹くしかない玄葉外相とは、一体何者であるかと。
普天間やTPPを早くはっきりさせろとイラだったに違いない。
要するに今の日本は米国に話すことなどないのだ。
ギリシャのパパンドレウ首相は財政危機への対応に専念するため訪米
延期を決めたという。
野田首相も大震災の復興と財政再建のために専念する、といって国連
欠席を宣言したほうが、米国や世界に本気度をアピール出来たに違いない。
了
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他にも次のテーマで書いています。
1.「鳩山首相にいら立ちなど感じていなかった」と証言した元米高官
2. 原発事故が起きても責任を問われない唯一の存在、それは裁判所
引用元 http://www.amakiblog.com