「保育園落ちた」から1年。今春、原則2歳までを預かる小規模な保育施設で、3歳以降の居場所が見つからない「3歳の壁」問題が顕在化してきてい る。次の預け先となる認可保育所の多くは満杯。やむなく幼稚園に移る例も少なくなく、7日に国会で開かれた保育問題を考えるイベントでは、「3歳の壁が厚 すぎる」との声が広がった。

 2歳までの認証保育所に通う長男(3)をもつ東京都練馬区の会社員女性(34)は、認可保育所の1次選考に落 ちた。区役所に相談すると、区独自の幼保一元化施設「練馬こども園」を紹介され、内定した。しかし預かり時間は午後6時半まで。自宅から約3キロ離れてい るので通園に時間がかかり、これまで通り働けなくなる。平日の面談や行事が多く、夏休みもフルに預かってはもらえない。だが、こども園を蹴って保育所の2 次選考に落選すれば、最悪の場合は仕事を辞めなくてはならない。

 悩んだ末、認可保育所の申し込みをキャンセルした。「昇進や仕事のやりがいはある程度あきらめるつもりです」。夫婦で時差出勤制度や有給を使いながら乗り切るつもりだ。

  「#保育園に入りたい!を本気で語ろう」と題した7日のイベントでは、乳飲み子を連れた母親ら100人以上が集まった。昨秋、住民の反対運動で認可保育所 の開園が見送られた東京都武蔵野市の一部地域では、2歳までの保育所を卒園する子供たちの受け入れ先をめぐり、親たちが苦慮している。

 運 営に関わった武蔵野市の会社員、中井いずみさん(40)も3歳の壁にぶつかった。認証保育所に通う次男(3)が、5歳まで受け入れる認可保育所に転園申し 込みをしたが、落選。やむなく、今の保育所に残る決断をした。保育所にとっては初めての3歳児で、12人の同級生のうち半数は幼稚園に移り、残るのは6 人。「できれば集団保育で社会性を身につけてほしかった」と中井さん。来年以降も保活を続ける予定だ。

 待機児童の問題では、0〜1歳児の 預け先が見つからずに職場復帰できない親の不安が注目を浴びがちだ。だが3歳以上の待機児童は全国で3107人(厚生労働省調べ)おり、3歳の壁に突き当 たる親は少なくない。中井さんのように、とりあえずの進級先がある場合や、保育所の申し込みをあきらめ、最初から幼稚園やこども園に申し込んだ場合は待機 児童としてカウントすらされないことも多い。

 定員が6〜19人の小規模保育所が2015年に「子ども・子育て支援新制度」で国の認可事業 として位置づけられてから、この春で2年。当時1歳で入園した子供たちが「3歳の壁」に直面している。昨年4月時点の小規模保育施設は2429カ所で前年 の新制度スタート時よりも774カ所増えた。「3歳の壁」問題はさらに深刻化しそうだ。

 国は、小規模保育施設でも3歳以上の受け入れがで きるよう国家戦略特区を設けることで、「3歳の壁」に対応する方針だ。しかし、保育園を考える親の会の普光院亜紀代表は「園庭がなく集団保育が難しい小規 模保育施設で、年齢制限を緩和して受け入れを拡大すると、子供の利益を損なう恐れがある」と指摘している。【中村かさね】

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「3歳の壁」の実態について、当事者アンケートにご協力ください

 毎日新聞は「待機児童」として問題が数値化されにくい「3歳の壁」について、アンケートを実施します。当事者の声を集め、紙面やデジタルで「3歳の壁」が抱える問題を検証します。

 対象は、今春から3歳児クラスに進級する子供の保護者で、3月まで0〜2歳対象の保育施設か、3歳児以降の定員が少数の保育施設に子供を預けていた方です。

 アンケートは以下のフォームからご回答いただけます。

 ご意見、ご感想もお待ちしています。

「3歳の壁」アンケート』

 

「3歳の壁」問題が顕在化しているのは、文明先進国の日本の「保育行政の貧困さ」です。

少子化と子育て環境の悪さが、リンクしている今の日本のなかなか改革されない現実です。