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浅野秀弥の未来創案
【経済優先の安倍政権】
2017年8月17日大阪日日新聞
アベノミクス崩壊が進んでいる
安倍改造内閣がスタートしたが、有権者は再び「経済第一」を掲げて支持率回復を目指すアベノミクス自体の破綻をとっくに見抜いている。日本経済にもたらした最大変化は、円安株高。経済が本当に良ければ円高株高に振れる。日本経済の力で外国からの投資を呼び込み、景気好循環に双子の値上げが耐え、賃金や物価も上がるインフレに転じる。
ところが、アベノミクスの実態は株価を郵貯や年金、国債で引き上げる官製相場で、実体経済の成長戦略を伴わない。異次元の金融緩和といえば聞こえはいいが、「マイナス金利が嫌なら危ない企業にも金を貸せ」という禁じ手だ。企業の収益増を家計の所得増へつなげ、資産効果も含め個人消費の拡大を促すという段階までは、見せかけだけとはいえ、おおむね想定通りの経済成長を描いた。しかしその先にあるはずの継続的な消費拡大や企業の国内生産・投資増加など、政権が言う「経済の好循環」がちっとも起きない事が今年に入って露呈してきた。
円安・株高の恩恵は大手製造業とその従業員および都市部富裕層に限られ、非製造業や中小企業、地方、一般家庭へのメリットは薄い。結局、国民の間に利益や富の偏在という格差をもたらし押し広げただけ。行き詰まりの経済格差は、1%の富裕層と99%の貧困をもたらす。
国歳入の根幹は税収。所得税・法人税・消費税を中心に、たばこ税や相続税などだが、技術の進歩による実体経済成長とはほど遠く、バブル時期に似た金融商品や土地の高騰で作り出されたものだ。年金や医療費など歳出の社会保障費増大を国民に負わせ、地方交付税や公共事業・教育・防衛・政府開発援助(ODA)などへのバラマキで、赤字を増やし続けている。
現状に対し、竹中平蔵氏は当初「トリクルダウン(富のこぼれ落ち)には時間がかかる」と説明していた。現実直視すれば、経済成長戦略が本物になるまで消費税は5%に戻すべきで、逆に10%に引き上げれば日本企業は海外に逃げ出す。今、悦に入っている海外旅行者が支えるインバウンド景気は瞬時にバブルと消える危険性を直視すべきだ。
あさの・ひでや(フリーマーケット=FM=社社長、関西学生発イノベーション創出協議会=KSIA=理事長)1954年大阪市生まれ。わが国のFM創始者で日本FM協会理事長。関西経済同友会幹事。数々の博覧会等イベントプロデュースを手掛ける。