浅野秀弥の未来創案
【アベノミクスの自己矛盾】
少子高齢化を視野に入れよ
安倍総理にとって森友と加計の問題は、内閣改造と自民党役員人事で関係者をリセットしただけで「有権者へのおわびと丁寧な説明」が本質隠しに過ぎないことがハッキリした。あれだけ自信タップリと語っていた改憲論議も党に丸投げし、ひたすら経済対策に全力投球らしい。
ところが皮肉にも、アベノミクス自体が自己矛盾を起こしつつある。本来の狙いは、金融緩和と財政出動で時間を稼ぐ間に成長戦略を推し進め、日本経 済の成長力を底上げするはずだった。しかし景気は腰折れし消費増税や円安の副作用ばかりが目立ち、やがてアベノミクスそのものの成長戦略が機能不全を起こ していることが露呈してきた。
3本の矢に象徴される成長戦略は、岩盤規制に穴を開けるはずの規制緩和や女性活用、働き方改革など労働環境改善と数多いメニューこそ並んだもの の、いずれも掛け声倒れの中途半端で決め手に欠く。特に歯がゆいのは、アベノミクス自体が既得権益にどこまで本気でメスを入れるつもりなのか、加計学園問 題処理からは本気度が伝わってこない。
財政当局は社会福祉法人の課税強化を検討していたが、2015年度の税制改正議論で結局見送り。介護分野で企業参入が進み、税制優遇を受ける社会 福祉法人との間で不公平感が生じている。社福法人自体が与野党問わず議員支持母体のケースも多く、決定そのものが政治的な反発を恐れた結果に見える。
他にも所得税最高税率引き上げや公的年金支給開始年齢引き下げなど、政治的な配慮から腰砕けとなったケースが目立つ。「女性活躍推進」やプレミアムフライデーのように、スローガンや数値目標は勇ましいのに、中身や財源が伴わない政策がおしなべて多い。
すでに経済専門家の間では「従来型高成長前提の政策に無理がある」と主張する人も出始めた。日本の急所は少子高齢化に伴う人口減少であり、その増 加策によほどの劇的変化がない限り成長期待はできない。日本経済は構造問題も考慮しながら成長戦略を立てていくべきだ。つまり成長一辺倒ではない視点を 持った政治家が今こそ必要なのだ。