浅野秀弥の未来創案
維新の会が、日ごろから唱える「都構想実現=二重行政解消」という理屈は、ご都合主義による財源ぶん取りにほかならず、市民にとってはメリットの少ない実態が次第に明らかになってきた。
もともと自民系の太田房江府知事(現自民参院議員)が2000年に唱えた都構想は、府の財政逼迫(ひっぱく)を大阪市などに補わせ、予算を重点配 分することにより成長戦略を推し進め、大阪経済全体の成長力を底上げするのが目的だった。当時、政令都市大阪市は強く反発し、話しはいつの間にか立ち消え に。実現には旧大阪市民へのさまざまな環境整備や市民サービスの大幅な好循環をもたらせることが大前提だ。ところが、維新版都構想は、住之江区の住吉市民 病院の統廃合一つを取っても思い付き倒れで、利用者に多大の負担を強いて、彼らの言う成長戦略の機能不全が明らかになっている。
維新政治のこれまでの成長戦略を眺めると、規制緩和や労働市場改革など数多くの項目が並ぶが、いずれも中途半端どころかマイナス感が目立つ。むしろ旧勢力から維新の会関係者への利権と既得権の付け替えだけに映ってしまう。
南港WTCの二重庁舎問題をほったらかして、その沖合の汚染産廃物処理も不十分な夢洲を万博会場にする必然性はまったくない。本気で万博を府が誘 致するのなら、すでに公園化している1970年の千里万博会場跡地で行えば良い。ギャンブル依存症を新たに生み出すIRカジノ特区構想を実現したいための 方便であり、今後衰退が予想されるパチンコ産業界と新たなギャンブル需要を模索、新興企業との癒着が見え隠れしている。カジノ隠しの万博誘致こそ、都構想 の本質を見た思いがする。
財源の裏付けもないまま都構想を振りかざし、掛け声だけで中身の薄い維新の政策はもうたくさんだ。それはちょうど、小泉改革での郵政民営化で「世 の中すべてが良くなる」と世間に思い込ませ、チルドレンが大量当選した時と状況的に似ている。大阪市民は、維新の都構想一辺倒政策ではなく、仮に低成長 だった場合でも中長期的に持続可能な行政健全化プランの吟味が欠かせない。