元TOKIOの山口達也さんは退院当日に酩酊したことを認め、アルコールの問題が浮き彫りになった。アルコールで日常生活や社会生活に支障が出ることを、「問題飲酒」という。
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肝臓のy−GTPの数値は若干高いし、酔えば羽目を外すこともある。だけど、依存症まではいっていない。酒量が多く、ちょっと酒癖が悪いだけだ。そんな問 題飲酒を抱える層にアプローチする試みがある。久里浜医療センター(神奈川県)の減酒外来だ。酒量を減らす、問題のない飲み方をするなど、目標にあわせた 酒との付き合い方をサポートする。
40代の会社員男性が来院したのは、妻が寝酒を心配してのことだ。同僚らと飲む機会は月に数度。寝つきが悪いからと始めた寝酒は、ウイスキー1杯から3、4杯へと増えた。酔うと怒りっぽくもなってきたようだ。
同センターで減酒外来を担当する瀧村剛医師は言う。
「妻が今後に不安を持っていて、本人は今後もお酒は楽しみたいが、家での寝酒はやめたいとのことでした。そこで、寝酒を適正な量の睡眠薬に置き換え、減酒に取り組んでいます」
多量飲酒者すべてが依存症に移行するわけではないが、予備軍も含めるとその数は実に多い。毎日アルコールを平均60グラム以上摂取する多量飲酒者は約 250万人、うち治療の必要なアルコール依存症患者は107万人いると推定される。だが、受診にたどり着いているのはわずか約6万人(2014年厚生労働 省患者調査)と6%に満たない。表は、飲酒習慣から問題の有無の目安を測るチェックだ。ドキリとする人は多いのでは。
飲酒で脳に起こる変化を、自然科学研究機構生理学研究所の柿木隆介医師はこう解説する。
「酒は百薬の長と言うように、ほろ酔い程度なら、脳にはα波とドーパミンが出て、リラックスしている。そのあたりでやめられればいいのですが」
脳にはアルコールに弱い部位が3カ所ある。運動機能を司る小脳と記憶を司る海馬、理性を司る前頭葉だ。酔うと千鳥足になってろれつが回らなくなり、記憶が抜け落ちる。理性のタガが外れ、失言して信頼を失い、暴力行為やセクハラに及ぶというなら、目も当てられない。
都内在住の会社員の男性(47)は、酔うと誰彼かまわず相撲を取りたくなる。脈絡もなく路上で「よし、やるぞ!」。勝手にがっぷり四つに組み、相手の衣服 をビリビリにしたことも。ある男性(37)は、酒を飲む機会は年に数回程度だが、飲むと大抵飲みすぎ、荷物を放り出して帰宅してしまう。いずれもよく聞く ような話だが、身近な「酒癖の悪い人」は、問題飲酒のぬかるみにはまってはいないか。
前出の瀧村医師は言う。
「人によりお酒に強い弱いがあるように、脳のアルコールとの結びつき方にも個人差があるのでは。悪酔いが過ぎるタイプは、正直お酒を飲まないほうがよいのではと、私自身は思います」
酒に強ければかまわないかというと、そうとも言えない。
「ス トレスがたまっていれば悪酔いしやすいのも、つらいことがあってやけ酒を飲む心理も皆さん想像できますよね。日本には一生のうち少なくとも1回は『依存 症』レベルになる人が100万人程度いるといわれます。全国の『中村さん』という名字の人と同じくらい、身近なものです」(瀧村医師)
脳はアルコールでたやすく失敗する。つらい時こそ酒量をコントロールする、増えた酒量は減らすなどの自衛策を心がけたい。(編集部・熊澤志保)
【あなたのお酒の飲み方、大丈夫?】
Q1.アルコール飲料をどのくらいの頻度で飲みますか。
(0)飲まない
(1)1カ月に1度以下
(2)1カ月に2〜4度
(3)1週に2〜3度
(4)1週に4度以上
Q2.通常どのくらいの量を飲みますか。
(0)0〜2ドリンク※
(1)3〜4ドリンク
(2)5〜6ドリンク
(3)7〜9ドリンク
(4)10ドリンク以上
Q3.1度に6ドリンク以上飲酒することはどれくらいの頻度でありますか。
(0)ない
(1)1カ月に1度未満
(2)1カ月に1度
(3)1週に1度
(4)毎日またはほとんど毎日
※アルコール10g=1ドリンク換算(5%のビール250ml、7%の酎ハイ180ml、15%の日本酒0.5合)とする
介入不要
男性(0)〜(4)点
女性(0)〜(3)点
問題飲酒もしくはアルコール依存症が疑われる
男性(5)点以上
女性(4)点以上
注)(0)〜(5)はQ1〜Q3の合計点。点数はあくまで目安。このチェックだけで問題飲酒や依存症の有無が診断できるものではありません
出典:飲酒習慣スクリーニングテスト(AUDIT)から
※AERA 2018年5月28日号