新型コロナウイルス感染症患者が入院を拒んだ場合などに罰則を設けることを盛り込んだ感染症法改正を政府が検討していることについて、日本医学会連合は14日、門田守人(もんでんもりと)会長名で緊急声明を発表した。感染者らの人権と個人情報が守られ、最適な医療を受けられるためとして、患者・感染者の入院強制や検査・情報提供の義務に罰則を伴う条項を設けることに反対している。

 日本医学会連合は、医学系136学会が加盟する学術団体。各学会に所属する会員の総数は約100万人。緊急声明では、今の感染症法の施策は、かつてハンセン病などで、「科学的根拠が乏しいにもかかわらず患者・感染者の強制収容が法的になされた歴史的反省のうえに成り立つことを深く認識する必要がある」と説明。

 入院を拒むのには仕事や家庭、周囲からの偏見・差別などのさまざまな理由があるかもしれず、「これらの抑止対策をせずに感染者個人に責任を負わせることは、倫理的に受け入れがたいと言わざるをえない」とする。

 ほかに、入院に施設間・地域間の格差が出ないようにする▽入院勧告や施設・自宅療養の措置では、所得保障や医療介護サービスなど十分な補償を行う▽偏見・差別を防ぐために適切で有効な法的規制を行う――ことを併せて求めた。

 門田会長は、「個人に罰則を科すことで感染対策は成り立たず、(個人の)協力と努力によって、感染防止や医療体制の整備などの目的が果たされる」と話す。感染症法に関わりの深い日本公衆衛生学会と日本疫学会も同日、連名で同様の声明を出した。(熊井洋美)