教育カウンセラーの独り言

今起こっている日本の教育の諸問題と受験競争の低年齢化している実態を見据えます。

大阪市立の高校の大阪府への移管は「市民の財産を棄損」と住民監査請求へ 幸田泉 | ジャーナリスト、作家

2021年06月18日 17時05分11秒 | 受験・学校

大阪市立の高校の大阪府への移管は「市民の財産を棄損」と住民監査請求へ
幸田泉 | ジャーナリスト、作家
6/18(金) 8:00

 

大正13年創立の大阪市立工芸高校=大阪市阿倍野区、筆者撮影

 昨年12月の大阪市会と大阪府議会で、大阪市立の高校が大阪府に移管されて来年4月1日に府立高校になることが決まった。大阪市立の高校は現在21校あり、来年4月に3校が1校に統廃合されるため、計19校が市立から府立となる。

 これについて、「高校の大阪府への移管は大阪市の財産を棄損する行為」だとして、大阪市民らが住民監査請求を行う準備を進めている。来月7月にも大阪市の監査委員に「移管の差し止め」を求める監査請求書を提出する。

大阪市は1500億円の土地・建物を大阪府に無償譲渡
 住民監査請求で移管の差し止めを求める根拠は、大阪府への移管にあたり19校の土地、建物が大阪市から府に無償譲渡される違法性である。19校の財産的価値は、大阪市の台帳価格で計約1500億円、市場価格ではさらに高額になるとも言われる。

 生徒数の減少で大阪市も大阪府も高校の統廃合を進めており、大阪市立の高校については、来年4月の大阪府への移管後、東淀工業高校、泉尾工業高校、生野工業高校の3工業高校を統廃合すると大阪市教委と大阪府教委が方針を決定している。これらの高校のうち廃校になったところが民間に売却されるなどした場合、その代金は大阪府の収入となる。

 住民監査請求をする市民らは「大阪市立のままであれば、廃校にした高校の土地、建物が生み出す利益を、新型コロナウイルス禍で疲弊した経済の立て直しや、公衆衛生の体制強化など、大阪市の課題のために使うことができる。統廃合方針を決めたうえで大阪府に無償譲渡するのは、土地、建物の売却や再利用の利益まで大阪府に寄付するのと同じだ」と憤る。

大阪市立扇町総合高校。来年4月に市立西高校、市立南高校との統合が決まっている=大阪市北区で、筆者撮影
2度の大阪都構想住民投票が示した民意にも反する?
 2011年11月に行われた大阪府知事と大阪市長のダブル選挙で、大阪府と大阪市の二重行政を解消するため大阪市を廃止する「大阪都構想」を掲げた「大阪維新の会」(維新)が、両選挙とも勝利し、府知事が松井一郎・維新幹事長(当時)、大阪市長が橋下徹・維新代表(同)となった。同年12月、「大阪府市統合本部」が設置され、大阪府と大阪市が重複して同じような行政サービスを提供するいわゆる「二重行政」の洗い出しを開始した。

 大阪府立高校と大阪市立の高校が併存しているのも「二重行政」とされ、大阪市立の高校は大阪府に一元化する方針が示された。こうした個別事業の見直しとともに、大阪市を廃止する大阪都構想も実現に向けた作業が進められており、大阪市立の高校のほか、市立大学、市民病院、市信用保証協会などが「二重行政」とやり玉に挙げられたのは、「大阪都構想によって大阪市は廃止される」のを見据えてのことだった。

 大阪都構想は2015年5月に行われた大阪市民を対象とする住民投票で否決され、大阪府市統合本部は廃止された。しかし、同年11月の大阪府知事、大阪市長のダブル選挙ではどちらも維新候補が勝利。松井知事、吉村洋文・大阪市長の体制となって大阪都構想が復活した。2度目の住民投票に向け制度設計の練り直しが行われる中で、松井知事と吉村市長は大阪市立の高校については「大阪都構想の議論とは別に、早期に大阪府に移管する」との方針を提示した。

 2019年4月の府市首長ダブル選挙は、松井知事と吉村市長が立場を入れ替えて出馬する奇策「クロス戦」で勝利。この年の7月に、大阪市立の高校の大阪府への移管について、大阪府教育庁と大阪市教員委員会事務局で構成する「一元化プロジェクトチーム」が設置され、土地、建物を大阪府に無償譲渡する形で移管する検討が行われることになった。

 2020年11月1日、新型コロナウイルス禍で実施された大阪都構想の2度目の住民投票は、またもや反対多数で否決。しかし、大阪市立の高校の府への移管は大阪都構想と切り離して協議していたため、住民投票の直後に大阪市会と大阪府議会に、大阪市立の高校を大阪府に移管する議案が提出され、両議会で可決された。

大阪府は「大阪市の巨額財産目当て」なのか
 大阪市会では野党会派の議員から「大阪市立の高校を府立高校にするならば、土地、建物は有償譲渡か貸与とすべきだ」と無償譲渡への反対意見が相次いだが、大阪市を廃止して巨額の市有財産を大阪府に承継する大阪都構想の制度設計をなぞるかのように、無償譲渡の方針は変わらなかった。

 三つの大阪市立工業高校は既に統廃合が決まっているが、「高校つぶし」の懸念は3工業高にとどまらない。大阪府は3年連続定員割れした高校は統廃合の対象にすると府立学校条例で定めており、これに従って府に移管された市立の高校はどんどん廃校にされ、土地、建物は売却されることが危惧される。

大阪市から大阪府に移管後、統廃合する方針が決まっている三つの市立工業高校のうちの一つ、大阪市立生野工業高校=大阪市生野区、筆者撮影
 大阪府市の両首長が維新体制になってからの10年、大阪府による大阪市の乗っ取りのような施策が次々に打ち出されており、高校移管も「大阪府は大阪市の財産目当て」が透けて見える。

 立命館大学の森裕之教授(地方財政学)は「大阪市立の高校を府立にするというならば、まず教育上の効果がなくてはならないし、土地、建物の無償譲渡には、大阪市の財政上のストック(資産・負債)とフロー(支出・収入)への影響、まちづくりの観点からみた諸課題などについて総合的な説明が必要だ」と話す。「しかも、府立学校条例は高校の統廃合を目的に持つため、府への高校移管は、政治による目先の言説で判断してはならない。議会での慎重な審議や住民からの意見聴取が前提となるはずであり、これらが行われていない市立高校の無償譲渡は非常に問題である」と指摘する。

 住民監査請求を行おうとする市民らは、「自治体が誘致した企業や学校に土地を寄付するケースはあるが、それは人口増や税収増などのリターンが見込めるから。市立の高校の土地、建物を府に無償譲渡して、大阪市にどんな利益があるのか全く示されていない」とし、「維新の首長らによる市有財産の私物化のようなもので、大阪市の財産を大阪府に移し替え、あたかも二重行政を解消したかのように見せる政治パフォーマンスだ」と問題視している。

 住民監査請求で大阪市の監査委員が移管の差し止めを勧告しなかった場合は、住民訴訟に踏み切る構えだ。「大阪市民の財産を守る会」を結成し、賛同人や支援カンパの募集を行うとともに、1500億円という巨額な市民の財産が市長の一存で譲渡されようとしていることを大阪市民に広く知ってもらう活動を展開していく。
https://news.yahoo.co.jp/byline/koudaizumi/20210618-00243493/

幸田泉
ジャーナリスト、作家
大阪府出身。立命館大学理工学部卒。元全国紙記者。2014年からフリーランス。2015年、新聞販売現場の暗部を暴いたノンフィクションノベル「小説 新聞社販売局」(講談社)を上梓。現在は大阪市在住。ブログ「フリージャーナリスト幸田泉の取材日記」で、大阪都構想の法定協議会や大阪市議会での議論など、大阪の公共政策に関する問題を発信中。

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jlj0011のblog 北朝鮮人道支援する時<本澤二郎の「日本の風景」(4118)

2021年06月18日 14時38分35秒 | 国際・政治

jlj0011のblog

北朝鮮人道支援する時<本澤二郎の「日本の風景」(4118)
2021/06/18 09:350


<日本人は困窮する隣人を救済する人道憲法国家=即行動せよ!>

 この際、拉致も核も棚上げだ。直ちに困っている朝鮮の人々に手を差し伸べよ!人道支援に躊躇するなかれ、と叫ばねばならない。

 隣人が悲鳴を上げている!中国の山間部に希望小学校建設、北朝鮮に中国米を購入して、列車で北朝鮮に運んだJR東労組の労働運動の、正に戦闘的リベラリスト指導者・松崎明のことを思い出した。


 昔の自民党にも、人助けをする人道的な政治家がかなりいた。外国との対立を解消するために率先して行動した。日本国憲法の命じるまま、道義の外交を展開した国際政治家だ。加藤勝信の義父母が入り浸った金丸信夫妻でさえも、北朝鮮に手を差し伸べた。筆者も超党派の訪朝団(石井一団長)が編成され、その仲間の同行記者団として、晩年の金日成に会うことが出来た。驚いたことは、整地された水田が、緑の絨毯となって美しく広がっていたことだった。灌漑用水も完璧で、自民党農林族も仰天していたほどだった。それが、ここ数年の大洪水で被害を受けたのだろう。同情を禁じ得ない。


 肝心の権力政党の自民党・公明党も、今は戦前の国家神道に舞い戻ったかのように、人道主義・道義の外交をドブに捨ててしまっている。許されざることである。


<日朝友好にかけた平和軍縮派・戦闘的リベラリスト・宇都宮徳馬の信念>

 38度線で南北に分断された南北朝鮮にした元凶は、河野洋平も指摘した日本の植民地支配にある。清和会傍流政権によって、今も日本外交の基本線を揺さぶっている。慰安婦徴用工など古い傷を、意図的に浮上させた安倍の神道・日本会議外交が、韓国や北朝鮮との分断対立を強いている。そうした極右の神道外交を、コロナ政局が卒業させようとしている。


 神道国家主義による皇国史観論的歴史認識が、21世紀に生きる日本人の精神を操ることなど論外である。平和憲法に戻るための2021年であろう。世界不況に輪をかけているコロナ大不況が、狂った脳みそを洗浄している現在でないだろうか。時代は、間違いなく変化を求めている。


 安倍も去り、菅も数か月の命だと見たい。


 新しい潮流が、日本海・東海から湧いてきている様子も目にチラつく。幻想ではない。日朝友好・正常化にかけた平和軍縮派・宇都宮徳馬の道義の外交が、間もなく開花するかもしれない。平和軍縮の宇都宮主義の再現は、時代の要請とみたい。


 戦闘的リベラリストが、次々と誕生する日も近い。その先頭に立ったのが、確か新潟出身の森ゆうこだ。彼女が、野党をリードする時代がやってくる!そう信じたい。そこに日本の明日が見えてくるような予感がする。


 第二の宇都宮徳馬である。戦闘的リベラリストの宇都宮は、自民党内の右翼・神道派からアカ呼ばわりされながら、中国・ソ連・北朝鮮との友好交流に率先して取り組んだ。自身の平和軍縮論を、かの国の指導者に堂々と訴え続けた。彼は病から癒えた石橋湛山を、北京に案内して、岸信介のワシントンにひれ伏す戦前派国家主義に抵抗した。そんな宇都宮の不屈の信念を、立憲民主党参院議員の森ゆうこに見たばかりである。


<森ゆうこ議員が提案した北朝鮮コロナワクチン提供は当たり前!>

 彼女が、有り余って始末することが出来ないとされるワクチンを、台湾やベトナムに提供する、多分に利権がらみに関連して「北朝鮮にも提供すべきだ」と提案した。真っ当な主張を、議会で主張したことが、ネット情報に載ったのだ。


 極右内閣が応じることはなかったが、彼女の主張は、当たり前のものとして、世界に発信されたはずである。不当・不正を許さない信条を有する政治家の発言が、不浄極まりない永田町で、一輪の蓮の華のように感じたのは、筆者だけではあるまい。歴史を知る多くの国民の熱い思いであろう。


 事情を知らない、政府宣伝に埋没している国民の一部は、極右の神道派に惑わされているため、森発言に反発しているようだが、問題の拉致問題の解決を遅らせ、北の脅威論を喧伝している情報操作にこそ根本的な原因がある。ワシントンの策略との連携との指摘も、的を射た分析であろう。


 南北和解と日朝正常化を恐れる、ワシントン戦略に委ねるJCIAにこそ、問題の元凶が潜んでいる。米前大統領のトランプでさえも、その陰謀から抜け出すことが出来なかった、とみたい。米国の産軍複合体制に、現在のホワイトハウスでさえも、手も足も出ないのだ。


 無様すぎる神道外交から、離脱しなければならない時であろう。その先頭に森ゆうこが立った点を、高く評価、注目してゆきたい。彼女こそが、野党をリードする主役に違いない。

 

<批判するほうが間違っている、人の道ではない右翼報道姿勢>

 立憲民主党の森裕子副代表(65)が「新型コロナウイルスの問題で、ワクチンの余剰分を人道支援として北朝鮮に提供してはどうか」と提案し、批判を浴びている。 (デーリー新潮)


 昨夜上記の記事を見つけた。狂ったような報道をする書き手に注目する必要はない。無視するだけのことであるが、それもこれも日本の言論の劣化を裏付けたもので、まことに悲しい。もっとも、戦闘的リベラリストに勇気を与えてくれるものでもある。


<余剰米をたくさん提供して友好の窓口を大きく広げる好機!>

 竹野内ファイルで、異常気象・気候変動原因を、ようやく理解したばかりのジャーナリストである。強力な台風と大豪雨による大洪水の元凶は、原発からの膨大な量の温排水である。これが世界の海水温を上昇させた犯人なのだ。


 地球も人間も、核との共存は、絶対に不可能である。核・原発を全廃しないと、人類は生き延びることは出来ない。西欧の科学技術の行き着いた終着点である。原発に執着する国は、日本と中国・フランス・英国の4か国である。原発を全廃しないと、地球も人類も滅びる!


 昨今の気候変動は、繰り返すが、原発からの温排水に起因する。まずは日本が、率先して原発ゼロにする責任がある。ドイツに続くほかない。チェルノブイリに次いで、311のフクシマを真正面から受け止めれば、ドイツ首相のメルケル判断は、今日を生きる最高の政治指導者であることを知らしめてくれる。


 本物は男よりも女である。


 結論を言うと、北朝鮮の食糧事情の悪化は、気候変動と関係している。その責任の一端を54基の原発再稼働の日本にある。これも、間違いなく関係している。全世界から原発をゼロにする人民運動の展開が不可欠だ。


 改めて、いま日本が出来る人道外交は、ワクチンと食糧支援を、隣人に対して直ちに実施することだ。その義務が、日本にある。森裕子に続け、である。菅・自公とは、オサラバするしかない。

2021年6月18日記(東芝製品不買運動の会代表・政治評論家・日本記者クラブ会員)


【6月16日 AFP】北朝鮮で、朝鮮労働党の中央委員会総会が開催され、金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-un)朝鮮労働党総書記が、国内の食糧事情が「緊迫している」と認めたと、国営メディアが16日、報じた。北朝鮮では1990年代に壊滅的な飢饉(ききん)が発生し、数十万人が死亡している。


{狂った安倍ハイエナ=台湾国と発言(産経)}

 安倍晋三前首相は17日放送のニッポン放送番組「飯田浩司のOK!Cozy up!」で、政府が新型コロナウイルスワクチンを台湾に提供したことについて「台湾は日本にとって古く大切な友人だ。その国が困っている中でワクチンを提供するのは当然のことだ」と述べた。台湾の蔡英文総統から「国民の皆さまに感謝を伝えてください」とお礼の電話があったことも明らかにした。

中国も原発にブレーキ?

【AFP=時事】中国南部広東(Guangdong)省にある台山原子力発電所(Taishan Nuclear Power Plant)で採用された新世代の原子炉で問題が起きたことを受け、この原子炉を設計し普及を目指していたフランスの関係企業は大きな痛手を負い、中国の原発産業も影響を受ける可能性が出ている。

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大阪市立の高校の大阪府への移管は「市民の財産を棄損」と住民監査請求へ

2021年06月18日 11時30分34秒 | 受験・学校

 

大阪市立の高校の大阪府への移管は「市民の財産を棄損」と住民監査請求へ
幸田泉 | ジャーナリスト、作家
6/18(金) 8:00




大正13年創立の大阪市立工芸高校=大阪市阿倍野区、筆者撮影

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 昨年12月の大阪市会と大阪府議会で、大阪市立の高校が大阪府に移管されて来年4月1日に府立高校になることが決まった。大阪市立の高校は現在21校あり、来年4月に3校が1校に統廃合されるため、計19校が市立から府立となる。

 これについて、「高校の大阪府への移管は大阪市の財産を棄損する行為」だとして、大阪市民らが住民監査請求を行う準備を進めている。来月7月にも大阪市の監査委員に「移管の差し止め」を求める監査請求書を提出する。

大阪市は1500億円の土地・建物を大阪府に無償譲渡
 住民監査請求で移管の差し止めを求める根拠は、大阪府への移管にあたり19校の土地、建物が大阪市から府に無償譲渡される違法性である。19校の財産的価値は、大阪市の台帳価格で計約1500億円、市場価格ではさらに高額になるとも言われる。

 生徒数の減少で大阪市も大阪府も高校の統廃合を進めており、大阪市立の高校については、来年4月の大阪府への移管後、東淀工業高校、泉尾工業高校、生野工業高校の3工業高校を統廃合すると大阪市教委と大阪府教委が方針を決定している。これらの高校のうち廃校になったところが民間に売却されるなどした場合、その代金は大阪府の収入となる。

 住民監査請求をする市民らは「大阪市立のままであれば、廃校にした高校の土地、建物が生み出す利益を、新型コロナウイルス禍で疲弊した経済の立て直しや、公衆衛生の体制強化など、大阪市の課題のために使うことができる。統廃合方針を決めたうえで大阪府に無償譲渡するのは、土地、建物の売却や再利用の利益まで大阪府に寄付するのと同じだ」と憤る。

大阪市立扇町総合高校。来年4月に市立西高校、市立南高校との統合が決まっている=大阪市北区で、筆者撮影
2度の大阪都構想住民投票が示した民意にも反する?
 2011年11月に行われた大阪府知事と大阪市長のダブル選挙で、大阪府と大阪市の二重行政を解消するため大阪市を廃止する「大阪都構想」を掲げた「大阪維新の会」(維新)が、両選挙とも勝利し、府知事が松井一郎・維新幹事長(当時)、大阪市長が橋下徹・維新代表(同)となった。同年12月、「大阪府市統合本部」が設置され、大阪府と大阪市が重複して同じような行政サービスを提供するいわゆる「二重行政」の洗い出しを開始した。

 大阪府立高校と大阪市立の高校が併存しているのも「二重行政」とされ、大阪市立の高校は大阪府に一元化する方針が示された。こうした個別事業の見直しとともに、大阪市を廃止する大阪都構想も実現に向けた作業が進められており、大阪市立の高校のほか、市立大学、市民病院、市信用保証協会などが「二重行政」とやり玉に挙げられたのは、「大阪都構想によって大阪市は廃止される」のを見据えてのことだった。

 大阪都構想は2015年5月に行われた大阪市民を対象とする住民投票で否決され、大阪府市統合本部は廃止された。しかし、同年11月の大阪府知事、大阪市長のダブル選挙ではどちらも維新候補が勝利。松井知事、吉村洋文・大阪市長の体制となって大阪都構想が復活した。2度目の住民投票に向け制度設計の練り直しが行われる中で、松井知事と吉村市長は大阪市立の高校については「大阪都構想の議論とは別に、早期に大阪府に移管する」との方針を提示した。

 2019年4月の府市首長ダブル選挙は、松井知事と吉村市長が立場を入れ替えて出馬する奇策「クロス戦」で勝利。この年の7月に、大阪市立の高校の大阪府への移管について、大阪府教育庁と大阪市教員委員会事務局で構成する「一元化プロジェクトチーム」が設置され、土地、建物を大阪府に無償譲渡する形で移管する検討が行われることになった。

 2020年11月1日、新型コロナウイルス禍で実施された大阪都構想の2度目の住民投票は、またもや反対多数で否決。しかし、大阪市立の高校の府への移管は大阪都構想と切り離して協議していたため、住民投票の直後に大阪市会と大阪府議会に、大阪市立の高校を大阪府に移管する議案が提出され、両議会で可決された。

大阪府は「大阪市の巨額財産目当て」なのか
 大阪市会では野党会派の議員から「大阪市立の高校を府立高校にするならば、土地、建物は有償譲渡か貸与とすべきだ」と無償譲渡への反対意見が相次いだが、大阪市を廃止して巨額の市有財産を大阪府に承継する大阪都構想の制度設計をなぞるかのように、無償譲渡の方針は変わらなかった。

 三つの大阪市立工業高校は既に統廃合が決まっているが、「高校つぶし」の懸念は3工業高にとどまらない。大阪府は3年連続定員割れした高校は統廃合の対象にすると府立学校条例で定めており、これに従って府に移管された市立の高校はどんどん廃校にされ、土地、建物は売却されることが危惧される。

大阪市から大阪府に移管後、統廃合する方針が決まっている三つの市立工業高校のうちの一つ、大阪市立生野工業高校=大阪市生野区、筆者撮影
 大阪府市の両首長が維新体制になってからの10年、大阪府による大阪市の乗っ取りのような施策が次々に打ち出されており、高校移管も「大阪府は大阪市の財産目当て」が透けて見える。

 立命館大学の森裕之教授(地方財政学)は「大阪市立の高校を府立にするというならば、まず教育上の効果がなくてはならないし、土地、建物の無償譲渡には、大阪市の財政上のストック(資産・負債)とフロー(支出・収入)への影響、まちづくりの観点からみた諸課題などについて総合的な説明が必要だ」と話す。「しかも、府立学校条例は高校の統廃合を目的に持つため、府への高校移管は、政治による目先の言説で判断してはならない。議会での慎重な審議や住民からの意見聴取が前提となるはずであり、これらが行われていない市立高校の無償譲渡は非常に問題である」と指摘する。

 住民監査請求を行おうとする市民らは、「自治体が誘致した企業や学校に土地を寄付するケースはあるが、それは人口増や税収増などのリターンが見込めるから。市立の高校の土地、建物を府に無償譲渡して、大阪市にどんな利益があるのか全く示されていない」とし、「維新の首長らによる市有財産の私物化のようなもので、大阪市の財産を大阪府に移し替え、あたかも二重行政を解消したかのように見せる政治パフォーマンスだ」と問題視している。

 住民監査請求で大阪市の監査委員が移管の差し止めを勧告しなかった場合は、住民訴訟に踏み切る構えだ。「大阪市民の財産を守る会」を結成し、賛同人や支援カンパの募集を行うとともに、1500億円という巨額な市民の財産が市長の一存で譲渡されようとしていることを大阪市民に広く知ってもらう活動を展開していく。
https://news.yahoo.co.jp/byline/koudaizumi/20210618-00243493/

幸田泉
ジャーナリスト、作家
大阪府出身。立命館大学理工学部卒。元全国紙記者。2014年からフリーランス。2015年、新聞販売現場の暗部を暴いたノンフィクションノベル「小説 新聞社販売局」(講談社)を上梓。現在は大阪市在住。ブログ「フリージャーナリスト幸田泉の取材日記」で、大阪都構想の法定協議会や大阪市議会での議論など、大阪の公共政策に関する問題を発信中。

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