うがい薬での過剰なコロナ予防に注意。「水でも十分効果あり」医師が見解
90分周期を守った6時間睡眠、うがい薬でコロナ予防、梅干しや甘酒などの発酵食品は体にいい……これまで我々が正しいと信じていた健康習慣の中には、実は体を害する危ない行為が存在する。健康になるつもりが、かえって不健康になる日常の意外な習慣とは?感染症対策の専門医である水野泰孝氏に正しい感染対策について聞いてきた。
◆うがい薬で過剰にコロナ予防はNG
コロナ禍では、うがい薬の需要も高まったが、感染症対策の専門医である水野泰孝氏は、「ヨウ素系うがい薬を長期間使い続けると、甲状腺機能に異常が起こる可能性がある」と警鐘を鳴らす。
「日本甲状腺学会も『現時点では、重症化予防に繋がる効果は明らかになっていない』と、見解を発表しています。うがいの効果についても疑問で、そもそも、感染症専門医の間では『うがいは感染対策として重要ではない』という認識です。
ウイルスは喉に付着したとしてもすぐに細胞に取り込まれてしまいます。うがいの効果がないというわけではありませんが、厚労省が発表しているコロナの感染対策は、“うがい”を含んでいません。ただ飛沫を浴びた直後や、短時間の外出後のうがいなら、物理的に洗い流せることもある。ただそこで、ヨウ素入りのうがい薬を使う必要はない。水でも十分効果があります」
うがいの効果の定説も覆されつつあるようだ。
◆アルコール消毒の誤用で皮膚炎に
今やどこの店先にも置いてある消毒液にも注意が必要だ。
「やたら何回も消毒すればいいというものではありません。アルコールは手の水分を蒸発させ、乾燥で肌が荒れてしまう。そうすると傷ついた皮膚から病原菌が入り、皮膚炎などのリスクが高まります。
また消毒はタイミングが重要で、感染しやすい状況の直前直後に行うのが効率的です。そのためスーパーやデパートの出入り口でただ消毒してもその後の行動に気をつけなければ『感染対策やってる感』の産物でしかありません。それに消毒するために入り口で行列ができていたりすると、人の流れが滞ってしまう弊害が生じてしまいます。
アルコールにこだわらず手洗いは流水でも十分です。むしろ回数にこだわることによる弊害のほうが問題です。新たな害を生みかねません」
感染のメカニズムと有効なタイミングを理解していない感染予防は、ほかの病気やコロナ自体を呼び込むと言えそうだ。
◆感染メカニズムを知り、うがいの適正タイミングを把握
ヨウ素の入ったうがい薬は使用しない。アルコール消毒はガイドラインなどで、適正なタイミングが決まっている。
このタイミングをしっかり理解することで、回数だけに頼る『やってる感』の感染予防から卒業しよう。
◆手指消毒の3つのタイミング
1.不特定多数の人が触れるものを使用する前後
2.くしゃみや咳による飛沫が付着したとき
3.仕事や散歩などの外出から帰宅したとき
水野氏がガイドラインを参考に考案した消毒のタイミングだ。無駄な予防で体を壊すようなことは避けたい。
【日本感染症学会感染症専門医・水野泰孝氏】
グローバルヘルスケアクリニック院長。東京医科大学准教授・同大学病院感染制御部長・感染症科診療科長などを歴任し現職。正しいコロナ情報の発信を目指し、活動中
<取材・文/週刊SPA!編集部>
―[危ない健康習慣]―