ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ケニー・ドリュー/ジス・イズ・ニュー

2024-03-02 20:53:42 | ジャズ(ハードバップ)

ケニー・ドリューについては以前「ダーク・ビューティー」でご紹介しましたが、1960年代にデンマークに移住し、70年代から80年代にかけて多くのリーダー作を発表しました。50年代のドリューはむしろサイドメンとしての活動がメインでしたが、その中でもリーダー作はいくつかあり、本作「ジス・イズ・ニュー」もそのうちの一つです。本作の特徴はピアノトリオではなくドナルド・バード(トランペット)とハンク・モブレー(テナー)をフロントラインに迎えていることで、他のリヴァーサイド作品「ケニー・ドリュー・トリオ」「パル・ジョーイ」とは違った趣があります。ちなみに他のメンバーはウィルバー・ウェア(ベース)、G・T・ホーガン(ドラム)です。

セッションは2つに分かれており、1曲目~3曲目が1957年3月28日録音で2管のクインテット編成、同4月4日録音の4曲目~7曲目がモブレーが抜けたワンホーン・カルテット編成です。全編を通じてドナルド・バードのトランペットが大活躍しており、予備知識なしに聴くと彼のリーダー作と勘違いしても不思議ではありません。中でも5曲目のバードの自作曲"Little T” は彼のショウケースと言っても良いナンバーで、バードの溌溂としたトランペットが存分に味わえます。その他では冒頭のタイトル曲”This Is New”も素晴らしいです。「三文オペラ」で有名なクルト・ヴァイルの作品で、「闇の女(Lady In The Dark)」と言うミュージカルで使われていた楽曲だそうです。ジャズで演奏される機会はあまり多くはないですが、他ではチック・コリア「トーンズ・フォー・ジョーンズ・ボーンズ」のバージョンも良いので聴き比べて見るのもよいでしょう。ここではモブレーも加わったクインテットで原曲の持つドラマチックな旋律を活かした見事な演奏に仕上げています。2曲目ドリュー作のメランコリックなバラード”Carol”、スタンダードをハードドライビングに仕上げた3曲目”It’s You Or No One"も捨て難い出来です。以上、ドリューのピアノを期待して聴くと少し肩透かしを食らうかもしれませんが、バードやモブレーも含めたハードバップセッションとして十分楽しめる作品です。

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