本日はルー・ドナルドソンを取り上げたいと思います。ドナルドソンはブルーノートの看板アーティストの1人で特に60年代以降にオルガン奏者と組んだソウルジャズ路線で人気を博しました。本作は1959年2月18日録音の作品で、この頃はまだソウルジャズではなく正統派ハードバップ路線です。共演するのはザ・スリー・サウンズ。ジーン・ハリス(ピアノ)、アンドリュー・シンプキンス(ベース)、ビル・ダウディ(トリオ)の3人から成るトリオで、当時ブルーノートが猛プッシュしていた存在です。前年9月に「イントロデューシング・ザ・スリー・サウンズ」でブルーノート・デビューをした後、「ボトムズ・アップ!」を経て臨んだのが本作です。
ただ、実は私はそれらのスリー・サウンズ作品はそこまで好きではないのです。一般受けを狙ったのか"O Sole Mio"や"Besame Mucho"なんかが入ったりしていて、ちょっとベタな感じで深みに欠けるんですよね。個人的にはスリー・サウンズ、特にピアノのジーン・ハリスはトリオで演奏している時より、サイドに回った時の方が輝くような気がします。先日取り上げたナット・アダレイ「ブランチング・アウト」もそうですし、他にスタンリー・タレンタインの「ブルー・アワー」も良いです。リーダーである管楽器奏者を向こうに回して、まるで張り合うかのようにダイナミックなソロを取る。その構図がハマってるような気がします。
全7曲、うちオリジナルは2曲と少なめですが、このアルバムに関してはスタンダードが素晴らしいので問題なし。1曲目”Three Little Words”はドナルドソンが切れ味鋭いソロを取った後、ハリスが3分間にわたって怒涛のピアノソロを披露します。驚異の速弾きテクと溢れ出るソウルフィーリングは圧倒的の一言です。3曲目”Just Friends”も似たような感じで、中盤でハリスが輝きに満ちたソロを取った後、シンプキンス、ダウディもソロを取り、スリー・サウンズとしての存在感を見せつけます。オリジナルのバップナンバー”Jump Up"もドナルドソンに続き、今度はシンプキンスの長尺のベースソロ→躍動するハリスのピアノという展開です。さっきからスリー・サウンズばかり褒めてますが、リーダーのドナルドソンももちろん素晴らしいですよ。スピーディーな曲でも決して歌心を失わないメロディアスなアドリブは、さすがパーカーの後継者の一人と目されただけのことはあります。ラストの”Confirmation"では、パーカーの代表曲をスリー・サウンズをバックに伸び伸びと吹いています。以上、あまり名盤特集などに出てくることはない作品ですが、個人的には超おススメの1枚です。