ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ナット・アダレイ/ブランチング・アウト

2024-03-05 21:13:55 | ジャズ(ハードバップ)

本日はナット・アダレイを取り上げます。皆さんご承知のとおりナットはジャズ界きってのスター、キャノンボール・アダレイの弟であり、長年にわたって彼のグループにも在籍していたためつい兄の陰に隠れがちですが、一方で自身のリーダー作もたくさんあり、ピンで主役を張れる実力の持ち主でした。少なくともコルネット奏者としては当代随一のプレイヤーだったと言ってよいでしょう。本作「ブランチング・アウト」はそんなナットがリヴァーサイドに残した7枚のリーダー作のうち最初の1枚です。録音は1958年9月です。メンバーはジョニー・グリフィン(テナー)、ジーン・ハリス(ピアノ)、アンディ・シンプキンス(ベース)、ビル・ダウディ(ドラム)です。お気づきの方もいるかもしれませんが、リズムセクションはブルーノートの看板トリオであるザ・スリー・サウンズです。彼らがブルーノートにデビュー作「イントロデューシング・ザ・スリー・サウンズ」を録音したのが同じ1958年9月。この頃はまだブルーノートと専属契約を交わしていなかったのかもしれません。

アルバムはナット・アダレイらしくファンキーな演奏が中心。セロニアス・モンクの”Well, You Needn’t”や自作のタイトルチューン"Branching Out"がその代表で、トランペットより小ぶりなコルネットを壊れんばかりの勢いで演奏するナット、トレードマークのビッグトーンでそれに対抗するグリフィン、そしてジーン・ハリスも鍵盤の上を跳ね回るようなダイナミックなピアノソロで彩りを添えます。ハリスは全編にわたって絶好調で、ファンキーかつゴージャスなピアノソロは演奏のレベルを一段階引き上げています。個人的には小さくまとまった感のあるスリー・サウンズよりも本作のでのプレーの方が好みですね。ラストの”Warm Blue Stream”だけがバラードですが、これがまたしみじみとしたとてもいい曲です。素朴なナットのコルネットと艶やかなグリフィンのテナーで、最後は余韻を残すようなエンディングを迎えます。

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