ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ジョン・コルトレーン/コルトレーン・サウンド

2024-03-11 21:12:59 | ジャズ(モード~新主流派)

1959年にプレスティッジからアトランティック・レコードに移籍したジョン・コルトレーンはジャズ史上に残る名盤「ジャイアント・ステップス」を発表。モードジャズの時代を新たに切り拓いたとされています。ただ、実際はそう単純なものではなく、以前ご紹介した「コルトレーン・ジャズ」はウィントン・ケリー・トリオをバックに従えたハードバップ・スタイルの演奏です。コルトレーンのサウンドを決定的に変えたのは、やはりマッコイ・タイナーとの出会いでしょう。1960年10月、コルトレーンはフィラデルフィアからニューヨークにやってきたばかりのタイナー(当時21歳)、スティーヴ・デイヴィス(ベース)、エルヴィン・ジョーンズ(ドラム)をメンバーに迎え、かの歴史的名盤「マイ・フェイヴァリット・シングス」を生み出します。本作「コルトレーン・サウンド」はその一連のセッションから未収録曲を後に編集し、1964年に発売されたものです。

従来の演奏との違いは冒頭"The Night Has A Thousand Eyes(夜は千の目を持つ)"を聴いただけで明らかです。ジェリー・ブレイニンという作曲家が書いたこのスタンダード曲。ホレス・シルヴァー「シルヴァーズ・ブルー」のバージョンも素晴らしいですが、ここでは明らかにハードバップとは違うアプローチがなされています。天空を飛翔するようなタイナーのピアノ、アグレッシブなジョーンズのドラム、そして全てから解き放たれたように自由なアドリブを繰り広げるコルトレーン。まさに唯一無二のコルトレーン・ワールドがそこに広がります。4曲目”Body And Soul”も数多のジャズメンによって演奏されてきましたが、ここでは完全にモード風のアプローチです。

自作曲も素晴らしいです。2曲目”Central Park West”は後にスタンダード曲となった名バラード(個人的には大坂昌彦・原朋直クインテットの演奏がおススメです)。ここではコルトレーンはソプラノサックスを使用し、セントラル・パークの冬の夕暮れを思い起こさせるようなメランコリックで美しい旋律を歌い上げます。5曲目"Equinox"もスピリチュアルな雰囲気に満たされたスローブルース。3曲目”Liberia”と6曲目”Satellite”では後のフリー時代を予感させるようなアグレッシブなアプローチも見られます。本作は上述のように「マイ・フェイヴァリット・シングス」に漏れた曲の寄せ集めですが、そんなことが信じられないぐらいの充実の内容で、全盛期のコルトレーン・カルテットのクオリティの高さを証明する一枚です。

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