今回は先日UPの「ニュー・トロンボーン」に続きカーティス・フラーを取り上げます。1957年にデトロイトからニューヨークにやって来たフラーはトロンボーンのニュースターとしてあっという間にジャズシーンの寵児となりました。5月11日に上述「ニュー・トロンボーン」を吹き込んだ後、早くもブルーノート社長アルフレッド・ライオンの目に留まり、6月2日には「クリフ・ジョーダン」にサイドメンとして参加。そして2週間後の6月16日には初リーダー作である本作「ジ・オープナー」を吹き込みます。メンバーはハンク・モブレー(テナー)、ボビー・ティモンズ(ピアノ)、ポール・チェンバース(ベース)、アート・テイラー(ドラム)。期待のニューフェイスをサポートすべく名手たちがレコーディングに集められました。
全6曲うち3曲が歌モノスタンダードで、特に1曲目"A Lovely Way To Spend An Evening(素敵な夜を)"と4曲目(レコードのB面1曲目)”Here’s To My Lady”はワンホーンによるバラード演奏。もっとガツンとしたハードバップで押してくるかと思ったら意外とゆったりした始まりで意表を突かれます。ここら辺のあまり強く自己主張しないというところが、フラーが他のジャズメンのセッションで重宝された要因の一つかもしれません。あえて硬派の曲を挙げるとすれば3曲目"Oscalypso"。オスカー・ペティフォード作のエキゾチックなナンバーで、重低音たっぷりのソロを聴かせてくれますす。2曲目”Hugore”と5曲目"Lizzy's Bounce"はフラーのオリジナルで、前者はブルース、後者は典型的なパップナンバーです。ラストはガーシュウィン作のスタンダード”Soon”。ミディアムテンポのスインギーな演奏に仕立て上げられており、モブレー→フラー→ティモンズ→チェンバースが軽快にソロをリレーしていきます。フラーはアドリブに不向きと言われていたトロンボーンで軽々とメロディアスなソロを紡ぎますが、技術的に相当高度なことをサラッとやっているあたりが凄いですね。