モダンジャズの最も基本的な組み合わせであるクインテット(2管+リズムセクション)にはさまざまな組み合わせがあります。最もメジャーなのはトランペット+サックスですが、サックス2本(テナー+アルト)も多いですし、トロンボーン+テナーまたはアルトという組み合わせも珍しくはないです。ただ、トロンボーンとバリトンサックスの組み合わせはかなり珍しい。私のコレクションで調べた限りは今日取り上げる「ボーン&バリ」以外には、ペッパー・アダムス&ジミー・ネッパーの「ペッパー=ネッパー・クインテット」があるのみでした。やはりスモールコンボで重低音楽器2本というのは華やかさに欠けるのでしょうか?ただ、本作はそんな地味な楽器2本で見事なハードバップ作品を作り上げています。
本作「ボーン&バリ」は1957年8月4日録音のカーティス・フラーでのブルーノートでの2枚目のリーダー作に当たります。フラーは6月に「ジ・オープナー」をブルーノートに吹き込んだ後、7月にはソニー・クラーク「ダイアル・S・フォー・ソニー」、前日の8月3日にはバド・パウエル「バド!」にサイドメンとして参加するなど、まさに破竹の快進撃を続けていたところです。そんなノリに乗っているフラーの相棒に選ばれたのはテイト・ヒューストン。正直あまり馴染みのない名前ですが、フラーと同じくデトロイト出身の黒人バリトン奏者です。1940年代からビッグバンドを中心にプレイしていたようですが、スモールコンボでの起用は稀です。ただ、実力は申し分なく、本作でもフラーを向こうに回して堂々たるプレイを聴かせてくれます。リズムセクションはソニー・クラーク(ピアノ)、ポール・チェンバース(ベース)、アート・テイラー(ドラム)。さすがブルーノートと言うべき、充実のラインナップです。
全6曲、うち4曲がフラーのオリジナルです。中では3曲目のタイトル曲”Bone & Bari"が素晴らしいです。重厚感たっぷりのテーマアンサンブルの後、ソニー・クラークが目の覚めるようなピアノソロを取り、続いてヒューストン、フラー、チェンバース、テイラーが軽快にソロをリレーして行きます。ラストの"Pickup"は急速調バップでフラーが超絶技巧で高速パッセージを吹き切ります。スタンダード2曲はどちらもワンホーンで、”Heart And Soul"はカーティス・フラーが、”Again"はテイト・ヒューストンがそれぞれたっぷりソロを取ります。特に”Again"はムードたっぷりのバラードで、ヒューストンのダンディズム溢れるバリトンソロに惚れ惚れとさせられます。