ウェス・モンゴメリーは遅咲きのジャズマンでした。彼がリヴァーサイドに初のリーダー作「ウェス・モンゴメリー・トリオ」を録音したのが1959年、36歳の時で、それまでは地元のインディアナポリスでプレイしていました。その時にバンドを組んでいたのがオルガン奏者のメルヴィン・ラインで、上述の「ウェス・モンゴメリー・トリオ」にも参加していす。その後、ウェスは1960年に「インクレディブル・ジャズ・ギター」、1962年に「フル・ハウス」とジャズ史に残る名盤を立て続けに発表し、一躍ジャズ界きってのスターとなりますが、ラインとの良好な関係は続いていたようで、1963年に本作「ボス・ギター」と「ポートレイト・オヴ・ウェス」の2作品をリヴァーサイドに吹き込んでいます。いずれもギター+オルガン+ドラムのシンプルなトリオ編成で、本作ではジミー・コブがドラマーを務めています。なお、タイトルは当時”ボス・テナー”と呼ばれていたジーン・アモンズにちなんだものと思われます。
全8曲。2曲がウェスのオリジナルで残り6曲は歌モノスタンダードです。ギター+オルガンの組み合わせは通常ソウル・ジャズのくくりに入れられることが多いですが、本作ではオリジナル"The Trick Bag"と"Fried Pies"がその範疇でしょうか?ただ、全般的にはポップス寄りの選曲が多く、その後の「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」等のスムーズジャズ路線を予見させるものがあります。特に1曲目"Besame Mucho"など何ともベタな選曲ですが、ウェスのギター自体はやはり凄く、十八番のオクターブ奏法でグイグイ迫ってくる様は圧巻です。ジェローム・カーンの"Dearly Beloved"も通常はミディアムテンポですが、ウェスが超速弾きでダイナミックなチューンに仕上げています。一転して"The Days Of Wine And Roses(酒とバラの日々)"や"For Heaven's Sake"はほぼ弾き語りに近いスローバラードで硬軟織り交ぜたギターソロはさすがです。メルヴィン・ラインは随所にオルガンソロを披露しますが、あくまで主役のウェスを盛り立てる役割に徹しており、ジミー・コブと共にウェスと息の合ったトリオ・サウンドを作り出しています。