■「サイドカーに犬」(2007年・日本)
監督=根岸吉太郎
主演=竹内結子 古田新太 松本花奈 ミムラ 谷山毅
竹内結子の主演作はドラマも映画もまったく見ていない。朝の連ドラ出身だけに、なーんとなく清純派な女優さんというイメージしか僕にはなかった。中村獅童と結婚し、しばらく銀幕から離れていた後の復帰第1作が本作。おそらくパブリックイメージからはほど遠い役柄だろう。冴えない中古車屋の愛人ヨーコさん。しかも奥さんが出て行った後、子供に食事つくるために家に突然やって来た見知らぬ女性。
映画は小学生の薫の視線から捉えられる。それまで接してきた大人の女性とは異なる存在であることを、日常的なエピソードを積み重ねて我々に教えてくれる。「歯が溶ける」と言って飲ませてもらえなかったコカコーラ、麦チョコをカレー皿にたっぷりくれること。そこには説明臭さはない。主人公薫がヨーコさんに心を開くことになる、自転車のエピソードがなかなかいい。「自転車に乗れると人生変わるよっ」確かにそうだ。でも自転車に乗ることを教えてくれても、そう言ってくれた人って僕にもいない。むしろ乗れるようになっても「遠くに行ってはいけません」と言われていたよなぁ。この映画には心に残る台詞や場面がたくさんあるし、80年代の空気を感じさせる小道具たちも素敵だ。「嫌いなものを好きになるより、好きなものを嫌いになるのって難しい」・・・何をしても堂々として見えるのに、繊細な心をみせるこの場面は実にいい。僕が女の涙に弱い・・・のかもしれないが、女性が泣き笑いをみせる場面には本当に弱い。「親切なクムジャさん」のイ・ヨンエが復讐を遂げる場面の何とも言えない表情、「キル・ビルvol.2」のラストでみせるユマ・サーマンの泣き笑い。竹内結子扮するヨ-コさんが、薫に突然みせる涙。僕はこの場面もきっと忘れないだろう。
父親と別れる場面、薫が犬の真似をしながら父親に頭突きする。それまで自分を出さなかった薫が、初めてみせた意思。
「犬になって誰かに支配されるのって嫌だよね?」
「むかしサイドカーに乗せられてる犬を見たことがあるの。あんなだったら犬でもいいなぁ。」
母親と暮らすことを選択した自分。誰かについていく犬だ。でも戻ってきた母親に頭突きをくらわしたヨーコさんのように、自分も自分でありたい・・・。この場面は心に響いた。薫の人生において、何かの啓示を与えてくれた人、ヨーコさん。僕にとっては誰なのだろう。
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