村上春樹の小説やエッセイには、数々の音楽が登場する。スタンダードジャズだったりロックだったり、クラシックだったり、多岐に渡る。何でも聴いてる人なんだろうな、とは思っていたし、エッセイでもそうした部分が語られてもいた。僕もグッとくればそれはGood Musicだというのが持論なので、節操なく何でも聴く自分を肯定できる気がして、春樹氏の音楽に関する文章は嬉しい、楽しい。
それにしても思うのは、聴いたことがない曲なのに、初めて聞く名前のピアニストなのに、読んでいて退屈しないこと。特に僕はクラシックの知識が乏しい。プーランクの名は初めて聞く。不勉強で申し訳ないけど。それでも、春樹氏の考察に、そういう音楽の聴き方もあるのか、と気づかされたり、興味をそそられたり。
僕がこれまで聴いてきた音楽たちと最も重なるのは、ブルース・スプリングスティーンやビーチボーイズだ。スプリングスティーンのBorn in the U.S.A.が本来の意図と反する受け取られ方をした、というのは僕ら世代もリアルタイムだけに、そう感ずるところはあった。高校の友人にも、あの曲が国威高揚の曲と思っていたヤツがいた。歌詞に出てくるのは、アメリカの厳しい現実。それが聴衆に誤解されてしまうこと。ブルーカラーの心情を代弁してきたスプリングスティーンにはつらい現実。
そういえば、僕の父親が、Born in the U.S.A.のPVを見て、こう言ったことがある。
「黄色人種を殺しに行った、とか歌う歌やろが。どーくっちょん(大分弁で"とんでもない"の意味)のぉ。」
僕は、この曲にアメリカ人が"こんな国に生まれちまった"という嘆きがこめられていることを話した。真意を理解した父親は、以来この歌をよい歌だと言い続けている。
ビーチボーイズに関する章には、なんとも言えない切なさがある。ブライアン・ウィルソンが目指す音楽的方向と世間がビーチボーイズに求めるものの差違。以前にアルバム「スマイル」に関するドキュメンタリーを見たことがある。繊細さ故に精神的にダメージを受けていくブライアン。番組の最後にツアーで演奏する場面には泣けた。春樹氏の文章からは、ビーチボーイズに対する愛情と、ブライアンに対する尊敬を感じてやまない。
※写真はブライアン・ウィルソン選曲のベスト盤。サーフィンだけがビーチボーイズではない。
他の章にも興味と知的好奇心をかきたてられる。スタン・ゲッツやウィントン・マルサリスはプロフィールをよく知らなかっただけに、まるで伝記を読んでいるようなドラマティックな感動がある。スガ・シカオを春樹氏が聴くのにはかなり驚いた。
これまでも春樹氏の音楽に対する考察は、僕ら読者に影響を与えてきた。この本はさらに深い愛情と敬意が込められている。紹介された音楽に僕らが触れる時、きっとこれまでとは違う感動を感じられることだろう。
☆
ついでに。
Amazonで見つけた村上春樹ダイアリー。とってもお洒落なデザインで気に入っておりました。昨年、春樹好きの友人にプレゼントしました。使ってくれているだろか。装丁ががあまりにお洒落なので「もったいない」と思ってるかも。多分僕は「もったいない」派だけど。
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それにしても思うのは、聴いたことがない曲なのに、初めて聞く名前のピアニストなのに、読んでいて退屈しないこと。特に僕はクラシックの知識が乏しい。プーランクの名は初めて聞く。不勉強で申し訳ないけど。それでも、春樹氏の考察に、そういう音楽の聴き方もあるのか、と気づかされたり、興味をそそられたり。
僕がこれまで聴いてきた音楽たちと最も重なるのは、ブルース・スプリングスティーンやビーチボーイズだ。スプリングスティーンのBorn in the U.S.A.が本来の意図と反する受け取られ方をした、というのは僕ら世代もリアルタイムだけに、そう感ずるところはあった。高校の友人にも、あの曲が国威高揚の曲と思っていたヤツがいた。歌詞に出てくるのは、アメリカの厳しい現実。それが聴衆に誤解されてしまうこと。ブルーカラーの心情を代弁してきたスプリングスティーンにはつらい現実。
そういえば、僕の父親が、Born in the U.S.A.のPVを見て、こう言ったことがある。
「黄色人種を殺しに行った、とか歌う歌やろが。どーくっちょん(大分弁で"とんでもない"の意味)のぉ。」
僕は、この曲にアメリカ人が"こんな国に生まれちまった"という嘆きがこめられていることを話した。真意を理解した父親は、以来この歌をよい歌だと言い続けている。
ビーチボーイズに関する章には、なんとも言えない切なさがある。ブライアン・ウィルソンが目指す音楽的方向と世間がビーチボーイズに求めるものの差違。以前にアルバム「スマイル」に関するドキュメンタリーを見たことがある。繊細さ故に精神的にダメージを受けていくブライアン。番組の最後にツアーで演奏する場面には泣けた。春樹氏の文章からは、ビーチボーイズに対する愛情と、ブライアンに対する尊敬を感じてやまない。
※写真はブライアン・ウィルソン選曲のベスト盤。サーフィンだけがビーチボーイズではない。
他の章にも興味と知的好奇心をかきたてられる。スタン・ゲッツやウィントン・マルサリスはプロフィールをよく知らなかっただけに、まるで伝記を読んでいるようなドラマティックな感動がある。スガ・シカオを春樹氏が聴くのにはかなり驚いた。
これまでも春樹氏の音楽に対する考察は、僕ら読者に影響を与えてきた。この本はさらに深い愛情と敬意が込められている。紹介された音楽に僕らが触れる時、きっとこれまでとは違う感動を感じられることだろう。
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ついでに。
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