「偶然」の積み重ねがなせる業(わざ)か、世の中には不思議な体験をすることがある。村上春樹のこの短編集は、そうした不思議な話を集めたものだ。本の冒頭、春樹氏がジャズのライブを聴きながら経験した「偶然」が語られる。
冒頭の短編「偶然の旅人」は、ホモセクシャルのピアノ調律士の物語。同じ本を読んでいることから始まる偶然が、幾重にも重なっていく。癌で手術を受けることになっている女性が彼に不安な気持ちを打ち明けることから、彼の周りの様々なことが連鎖を始める。村上春樹らしいセンチメンタルな味わいがある。同じ乳癌のエピソードが登場する映画「エレジー」を観た直後に、僕がこの本を手にしたのも「偶然」のいたずらなのかもしれない。
先日テレビで見たインタビューで、「日の名残り」で知られる作家カズオ•イシグロ氏は、村上文学にあるのは"もののあはれ"だと述べた。日常にある悲しみやさみしさ。僕は、それに浸りたくて春樹氏の本に手がのびることがある。「東京奇譚集」め例外でなく、喪失感が漂う。何かをなくした虚しさ。それは「名前」であったり、「サーファーの息子」であったり。
自分の人生にとって意味のある女性は3人しかいない、という父親の言葉に縛られる「日々移動する腎臓のかたちをした石」も面白い短編。自分を縛るような言葉って、誰かに言われたばかりに自分の縛っている言葉って、少なからず人生においてはある気がするなぁ。
冒頭の短編「偶然の旅人」は、ホモセクシャルのピアノ調律士の物語。同じ本を読んでいることから始まる偶然が、幾重にも重なっていく。癌で手術を受けることになっている女性が彼に不安な気持ちを打ち明けることから、彼の周りの様々なことが連鎖を始める。村上春樹らしいセンチメンタルな味わいがある。同じ乳癌のエピソードが登場する映画「エレジー」を観た直後に、僕がこの本を手にしたのも「偶然」のいたずらなのかもしれない。
先日テレビで見たインタビューで、「日の名残り」で知られる作家カズオ•イシグロ氏は、村上文学にあるのは"もののあはれ"だと述べた。日常にある悲しみやさみしさ。僕は、それに浸りたくて春樹氏の本に手がのびることがある。「東京奇譚集」め例外でなく、喪失感が漂う。何かをなくした虚しさ。それは「名前」であったり、「サーファーの息子」であったり。
自分の人生にとって意味のある女性は3人しかいない、という父親の言葉に縛られる「日々移動する腎臓のかたちをした石」も面白い短編。自分を縛るような言葉って、誰かに言われたばかりに自分の縛っている言葉って、少なからず人生においてはある気がするなぁ。