■「日本侠客伝 花と龍」(1969年・日本)
監督=マキノ雅弘
主演=高倉健 星由里子 二谷英明 津川雅彦 藤純子
昨年秋から半年間、映画ロケの実績がある北九州市若松でロケ地観光を考える市民講座に参加した。若松はかつて石炭積出港として栄えた歴史があり、これまでも数々の映画の舞台・ロケ地となってきた。若松出身の作家火野葦平の「花と龍」は彼の代表作。これは葦平の父金五郎と母マンの半生、石炭荷役ごんぞうのエネルギッシュな生き様を描いた義理と人情にあふれた人間ドラマ。これまで何度も映画やドラマ化されてきた。しかし、いわゆる任侠映画のひとつとして世間ではイメージされており、原作のよさが誤解されている状況がある。僕が参加した市民講座でも、若松映画祭実行委員会委員長をされている真花氏が、「もう一度「花と龍」が若松ロケで撮られ、やくざものとして知られている誤解を解きたい」とお話されていた。
小倉昭和館でタイムリーに高倉健特集があり、「花と龍」が上映されると聞いて行ってきた。この「日本侠客伝」はシリーズとして製作された、日本各地を舞台にした任侠もの。本作が第8作、続く9作目の「日本侠客伝 昇り龍」が火野葦平原作となっている。最近石原裕次郎主演の「花と竜」を劇場で観る機会に恵まれた。その時に感じたのは、任侠映画のかっこよさというよりも筋を通す男の生き様のかっこよさ。決してバイオレンスを楽しむ映画ではないことに驚いた。
裕次郎版と比べると、高倉健版はやはり荒っぽい。そこはやっぱり「日本侠客伝」と銘打っているだけに、任侠映画のかっこよさをクールに追求した出来映えとなっている、と感じた。高倉健の金五郎は最初はやや頼りないし、どちらかと言うと不器用ながらも人に懸命に立ち向かっていく真摯さが魅力だ。地味だけど懸命に頑張る姿を周りが評価して慕われる男。それを助ける女性たち。裕次郎の金五郎のグイグイ引っ張っていくような男気とは違って、寡黙に自分を貫く男。それは健さんのキャラ故の役作りだろう。しかし最初にも述べたように、世間での誤解につながるようなバイオレンス色を印象づけたのは間違いないだろう。
「若大将」シリーズのヒロイン星由里子が気っぷのいい石炭荷役を演ずるのに最初は「え?」と思ったが、だんだんと自然に見えてくる。女彫り物師を演ずる藤純子がやはり美しい。クライマックス、黒田節を歌いながら銃を構えて主人公を救う場面は健さんがかすむね。
監督=マキノ雅弘
主演=高倉健 星由里子 二谷英明 津川雅彦 藤純子
昨年秋から半年間、映画ロケの実績がある北九州市若松でロケ地観光を考える市民講座に参加した。若松はかつて石炭積出港として栄えた歴史があり、これまでも数々の映画の舞台・ロケ地となってきた。若松出身の作家火野葦平の「花と龍」は彼の代表作。これは葦平の父金五郎と母マンの半生、石炭荷役ごんぞうのエネルギッシュな生き様を描いた義理と人情にあふれた人間ドラマ。これまで何度も映画やドラマ化されてきた。しかし、いわゆる任侠映画のひとつとして世間ではイメージされており、原作のよさが誤解されている状況がある。僕が参加した市民講座でも、若松映画祭実行委員会委員長をされている真花氏が、「もう一度「花と龍」が若松ロケで撮られ、やくざものとして知られている誤解を解きたい」とお話されていた。
小倉昭和館でタイムリーに高倉健特集があり、「花と龍」が上映されると聞いて行ってきた。この「日本侠客伝」はシリーズとして製作された、日本各地を舞台にした任侠もの。本作が第8作、続く9作目の「日本侠客伝 昇り龍」が火野葦平原作となっている。最近石原裕次郎主演の「花と竜」を劇場で観る機会に恵まれた。その時に感じたのは、任侠映画のかっこよさというよりも筋を通す男の生き様のかっこよさ。決してバイオレンスを楽しむ映画ではないことに驚いた。
裕次郎版と比べると、高倉健版はやはり荒っぽい。そこはやっぱり「日本侠客伝」と銘打っているだけに、任侠映画のかっこよさをクールに追求した出来映えとなっている、と感じた。高倉健の金五郎は最初はやや頼りないし、どちらかと言うと不器用ながらも人に懸命に立ち向かっていく真摯さが魅力だ。地味だけど懸命に頑張る姿を周りが評価して慕われる男。それを助ける女性たち。裕次郎の金五郎のグイグイ引っ張っていくような男気とは違って、寡黙に自分を貫く男。それは健さんのキャラ故の役作りだろう。しかし最初にも述べたように、世間での誤解につながるようなバイオレンス色を印象づけたのは間違いないだろう。
「若大将」シリーズのヒロイン星由里子が気っぷのいい石炭荷役を演ずるのに最初は「え?」と思ったが、だんだんと自然に見えてくる。女彫り物師を演ずる藤純子がやはり美しい。クライマックス、黒田節を歌いながら銃を構えて主人公を救う場面は健さんがかすむね。