- 80's Movie Hits! - 目次はこちら
■Sex Crime (1984)/Eurythmics
この映画は、ジョージ・オーウェルが1948年に書いた近未来小説「1984」を、その84年に映画化した意欲作。社会主義国と思われる国が舞台。国民は国家の下での”党員”で、思想を持つこと、日記をつけること、恋愛をすることが禁じられ、国民が(思想的に)無知であることを強要しているような社会。国家は”偉大なる兄弟(Big Brother)”が統治する徹底した管理社会。各部屋に取り付けられた双方向モニターには、指導者の画像が映り、国民を監視する。そして反政府的行動には、拷問、洗脳が施される。
その暗い世界観を彩る音楽に起用されたのがユーリズミックスだった。このエレクトロポップデュオは、Sweet Dreams の大ヒットで知られている。初期は無機質なシンセ音で、重く暗い雰囲気の、独特の世界を作り出していた。結局、サントラとすべく製作されたアルバム「1984」から本編に数曲が使われたのみだったが、使われた曲は映画の世界観にマッチしていたように僕は思う。Julia は淡々としたシーケンスと、エフェクトが効いたヴォーカルのスローナンバーだった。当初、主題歌として作られたのが Sex Crime(1984) 。ビデオにも映画のシーンがふんだんに挿入されていたのだが、本編では使用されなかった。Sex Crime(1984) はダンサブルなエレクトロポップで、”いかにも80年代につくられた音”であるが故に監督の意向に合わなかったと伝えられている。この曲の不運はそれだけではなく、”セックスが犯罪”とされる社会を皮肉った内容だったにもかかわらず、現実社会では”性犯罪を助長する”との理由で英国では放送禁止になったと伝えられる。僕は彼らの曲の中でも Sex Crime(1984) はお気に入り。87年(だったかな?)の福岡公演では1曲目がこの曲だったなぁ。
映画「1984」についてはこんな話もある。実は日本の一般映画館で無修正で上映されたヘア解禁映画1号。これは東京国際映画祭で上映された際、「外国人も来るのにボカシはいかがなものか?」という論議から修正なしで上映したもの。映画祭のために来日したラザフォード監督に「最初のヘア解禁映画(注)となったのですが、お気持ちはいかがですか?」という質問を浴びせたインタビューアーも。困った顔しながらも監督は”管理社会”とひっかけてうまい答えをしたらしいですが。
注・大阪万博で公開されたスウェーデン映画「私は好奇心の強い女」が日本初の無修正上映。あれは万博会場が治外法権となるため日本の規制が及ばなかったから。映画祭ではあれ、一般映画館での上映では「1984」が初めてってことになるのでしょうね。
eurythmics sex crime