Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

ジョジョ・ラビット

2020-02-01 | 映画(さ行)



◾️「ジョジョ・ラビット/Jojo Rabit」(2019年・アメリカ=ドイツ)

監督=タイカ・ワイティティ
主演=ローマン・グリフィン・デイビス タイカ・ワイティティ スカーレット・ヨハンソン トーマサイン・マッケンジー サム・ロックウェル

おっさんの戯言だと思って読んでくだされ。世間は高評価だけれど敢えて言わせていただければ、どんなにファンタジックな描写をしても戦争はあくまでも戦争なんだ。過酷な現実をほんわかしたもので包んで受け入れやすくしたところで、どうしても違和感が残るのだ。こんなんじゃない。

クライマックスの市街戦の場面、サム・ロックウェルの演技も、友人ヨーキー君との再会も泣かせどころで素敵な場面だ。しかし、「ヒトラー 最期の12日間」で描かれた同じ市街戦の悲惨さ、おびただしい死体と瓦礫、握手を求めたら血塗れの手が差し出される場面が強烈に僕の心に残っている。こんなんじゃない。
「外は危険なの?」「とてもね」
前との対比があっていい会話だ。でもドアの外は英米軍が来たからって、こんな落ち着きを取り戻してるのか。今年観たばかりの「モーガン夫人の秘密」じゃ、とてつもなく悲惨だったじゃないか。こんなんじゃないよ。

ユダヤ人を匿っているのか疑われる場面も引き込まれる。すごいよ。ワイティティ監督が上手いの認めるよ。でも、「さよなら子供たち」で描かれたユダヤ人だとバレるかどうかの緊張、その想像を超える切なさと怖さを知った今となっては、この映画のミュージカルのような楽しいラストを気持ちよく受け入れきれない自分がいる。戦争を扱っている映画観てるのに、僕はデビッド・ボウイで足を踏み鳴らしてていいのかな。こんなふうに考えてしまう僕には、ずっと敬遠している「ライフ・イズ・ビューティフル」もきっと向かないのでは。

「ジョジョ・ラビット」は、10歳の少年の成長物語だ。だから彼をとりまく戦時下の過酷さを過剰に描く必要はないとは思う。ここだけに注視すれば、「ジョジョ・ラビット」は、この上なく素敵な映画だ。ヒトラーユーゲントの合宿で心身共に傷ついた主人公。ナチスの流布する思想を疑うことなく信じる彼。彼を見守る母親スカーレット・ヨハンソンの強さとカッコよさが心に残る。愛の力を説き、恋する気持ちを「お腹の中に蝶がいる」と表現する。でも子供と政治の話はしたくない。「ディナーは中立。黙って食べなさい」って、素敵な台詞だ。そしてエルサとの関わりで次第に現実に気づいていく主人公の変化。

友人ヨーキー君の言葉ひとつひとつが重みがある。合宿で「ユダヤ人も僕らと同じ」と言い、映画のラストにはヒトラーの真実をジョジョに伝え、「彼女がユダヤ人だって大した問題じゃない」と言い放つ。こいつ、カッコいいやん。そんな彼が戦争が終わって街が解放されて口にするひと言に泣きそうになった。
「ハグされたい」
これこそ過酷な戦争に駆り出された少年の本音だ。こんなんじゃないと繰り返し述べてきたけど、この少年のひと言こそが戦争の過酷さを見事に言い表している。
コメント
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