◾️「ボヘミアン・ラプソディ/Bohemian Rhapsody」(2018年・アメリカ=イギリス)
監督=ブライアン・シンガー
主演=ラミ・マレック ジョセフ・マッゼロ エイダン・ギレン ベン・ハーディ
クィーンは大好きなロックバンド。80年代の活躍はリアルタイムで見てきたし、この映画のクライマックスである、1985年のライブエイド衛星中継放送はテレビにかじりついた。そしてフレディ・マーキュリーが亡くなった日、黒いネクタイで出勤した。洋楽ファンだけでなく、多くの人々が一度は耳にし、愛されている数々のヒット曲がこれ程あるロックバンドはなかなかない。それだけに逸話や伝説化したエピソードも数多く存在する。フレディの伝記映画として2時間余りの尺で、クィーンを語り尽くすなんて到底できない。けれどかなり練られたと思われる脚本やメンバーの音楽監修で新旧ファンを満足させ、しかもクィーンの楽曲の魅力を詰め込んだ愛すべき力作だ。
映画最大の魅力は音楽の力だ。未発表音源を駆使して演奏シーンを再現しており、特にライブエイドの20分間を再現したクライマックスは圧巻だ。いかに新たなことに挑み、聴衆を巻き込んで音楽を創りあげる姿勢を貫いてきたのか。長い歴史の中、フレディがその才能や個人的事情からメンバーと疎遠になっていく様子は観ていて辛い。聴衆に愛された男がどんどん孤独になっていき、それを埋めるために仕事に没頭して、仲間とのバカ騒ぎに耽る。それでも生涯友人としてフレディを支えたメアリーとの関係は、LGBTを扱った映画としても好印象を残してくれる。
ディープなクィーンファンには、本国では遅咲きで日本で先にブレイクした逸話やら、フレディの死後に名曲I was born to love you が誕生するエピソードが欲しいところかもしれない。しかしフレディの死後を描かないことはかえって潔い印象を受ける。「善行をしろ」と言う父親の教えを裏切り続けたフレディが、音楽史上最大のチャリティイベントであるライブエイドに出演することで初めて父に認められる。これをクライマックスに持ってきたことは、アーティストの伝記映画としては定石かもしれないが、そこから続く圧巻のライブシーンが、感動を見事に高めてくれるのが素晴らしい。フレディのそれまでとそれからを思うと、歌詞がやたらと心に染みる。Radio GAGA の"手を挙げて拍手"を映画館でやりたいー!ww
オープニングのFOXファンファーレがクィーン風になってたり、あのマイク・マイヤーズに「車の中で頭を振るには最高だ」って言わせるなんて、クスッとさせる仕掛けもいっぱい。ボブ・ゲルドフ役の俳優さんは美男過ぎ(笑)、ジョン・テイラーかと思った。途中降板したと伝えられるブライアン・シンガー監督。どこまで彼の指揮で撮ってるのかは分からないが、見せ方の巧さは随所に光る。
サントラ盤はこちら