図書館から借りていた 平岩弓枝著 「新・御宿かわせみ」(文藝春秋)を 読み終えた。直木賞受賞作家、平岩弓枝の代表作のひとつ、長編時代小説「御宿かわせみシリーズ」の続編として 2007年1月から文芸誌「オール讀物」に連載された「新・御宿かわせみシリーズ」の第1弾目の作品である。
前作の「御宿かわせみシリーズ」(全34巻)は 一昨年3月から、1年10ケ月掛かって 昨年12月に読み切り、数年前までまるで読書の習慣等無かった爺さんとしては信じられないことで 我ながら「あっぱれ!」と叫んだものだが、乗り掛かった船・・・、続編「新・御宿かわせみシリーズ」も 最後まで読んでみたいものだと思っているところだ。「新・御宿かわせみシリーズ」では 時代が 幕末から明治に変わり、「御宿かわせみシリーズ」の主要人物の子供達が主役になっている。維新後 幕藩体制が一掃され 「江戸」が「東京」に。大名の上屋敷、下屋敷、八丁堀の組屋敷等も取り壊され、あるいは荒廃し、その跡地には 桑畑や牧場等が出来、風景が一変、新橋~横浜の岡蒸気も登場、洋館があちこちで出来、外国人がぞろぞろ登場、新政府による急造組織、新貨幣、太陽暦7曜日制採用、庶民が混乱した時代の物語である。
読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう爺さん、読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも その都度、備忘録としてブログに書き留め置くことにしている
(目次)
「築地居留地の事件」「蝶丸屋おりん」「桜十字の紋章」
「花代の縁談」「江利香という女」「天が泣く」
(主な登場人物)
神林麻太郎
元南町奉行所吟味方与力神林通之進の養子。実は 通之進の弟神林東吾の息子。父親譲りの美男子、行動力、好奇心旺盛、人懐っこい性格。維新の混乱の中、祖父麻生源右衛門、叔母麻生七重、従兄弟麻生小太郎が何者かに惨殺される事件が起き、イギリス留学が決まっていた小太郎に代わり、イギリスに留学。5年半の留学を終えて帰国するところから物語が始まっている。新進気鋭の医師としてバーンズ診療所で診療にあたりながら 次々起きる事件や揉め事に首を突っ込み、畝源太郎の手伝いをする。「御宿かわせみシリーズ」の神林東吾と畝源三郎の姿の再現の如くに・・。
神林千春
旅館「かわせみ」の女主人神林るいと神林東吾の一人娘、母親譲りの美人でおきゃんな性格。父親東吾が乗った軍艦が破船沈没し、行方不明になっているが 父親の生存を頑なに信じて、旅館「かわせみ」を取り仕切っている。
畝源太郎
元南町奉行所定廻り同心畝源三郎の息子、正義感強く実直、お人好しで野暮なところは父親譲り。父親が麻生家襲撃事件探索中に何者かに銃撃され非業の死を遂げたことから 母親畝千絵、妹千代と別れ、八丁堀の近くで一人暮らしを始め、長助と共に麻生家襲撃事件の犯人と父親銃撃犯人の探索に執念を燃やしている。
麻生花代
元将軍家御典医天野家長男で麻生家に婿入りした医師麻生宗太郎の娘、お転婆で舌鋒鋭い。繊細で勘が鋭いが、面倒見が良い。幼馴染の麻太郎、源太郎は 毎度翻弄される。維新の混乱の中、祖父麻生源右衛門、母麻生七重、弟麻生小太郎が何者かに惨殺された後、父親麻生宗太郎と離れて 旅館「かわせみ」に下宿し 築地居留地の女学校に通う。
長助
元南町奉行所定廻り同心畝源三郎の下で 深川界隈を縄張りにして働いた老練な岡っ引きだったが 主が銃撃され非業の死を遂げてからも、主の忘れ形見である畝源太郎に命を掛けて奉公している。
仙五郎
元南町奉行所定廻り同心畝源三郎の下で 飯倉・麻布周辺を縄張りにし働いていた岡っ引き。維新後は 町の世話役として揉め事の仲裁等をしているが 事件や相談事等で 神林通之進に通じている。
○旅館「かわせみ」
神林るい(旅館「かわせみ」の女主人)、嘉助、お吉、正吉、お晴
○築地居留地に開業した「バーンズ診療所」
リチャード・バーンズ(医師)、たまき、マンダラ・バーンズ(マギー夫人)、
○狸穴方月館の隣りの神林家
神林通之進(元南町奉行所吟味方与力)、神林香苗、
○狸穴方月館建物で開業した「方月館診療所」
麻生宗太郎(医師)、天野宗三郎(医師)、おとせ、
○日本橋で開業の古美術商「和洋堂」
畝千絵(畝源三郎の妻、源太郎の母)、畝千代、
(豆知識)
「邏卒(らそつ)」
江戸時代、市中取締りや事件解決に当たっていたのは 町奉行所、同心、岡っ引き、下っ引き等だったが 明治新政府は それらを解体一掃、改めて、旧藩士や旧同心等 3,000人を 「邏卒(らそつ)」として採用したという。ただ、所詮、寄せ集め、その任務に精通していなかったり、訓練されていなかったり、高飛車な態度の連中が大半で、初期には あまり機能していなかったようだ。後に「巡査」と改称され、現在の「警察官」の前身ということになるのだろう。「新・御宿かわせみ」には 「邏卒(らそつ)」が 駆け付ける場面が登場している。