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諸田玲子著 「炎天の雪」(上)(下)

2019年10月27日 20時04分50秒 | 読書記

図書館から借りていた 諸田玲子著 「炎天の雪」(上)(下) (集英社)を やっと、やっと 読み終えた。

諸田玲子著 「炎天の雪」(上)(下)

江戸時代、宝暦年間の加賀藩は 藩主が次々早死にし、頻繁に藩主交代劇が繰り返されていた。
加賀藩は 前田八家と呼ばれる重臣で運営されていたが 5代藩主前田綱紀は 祖父で戦国武将の前田利常の影響を受けて 藩主の主導権を確立し、名君と言われ、さらに 6代藩主前田吉徳は 広く人材を登用、足軽の三男に過ぎなかった大槻伝蔵の才を見出し、側近に重用、藩政改革、財政の悪化を食い止める等を成功させたが 加増され前田八家にも並び 藩政を握った大槻伝蔵に対して 反大槻派からは 憎しみ、嫉妬が向けられた。
6代藩主吉徳が死去するやいなや 反大槻派重臣達から 証拠も無い疑惑をかけられ、大槻伝蔵派粛正が行われた。
大槻伝蔵は 五箇山に流刑(後に自害)、連座制(罪を犯した者の家族や親類等を全て罰する)で罪も無い関係者も蟄居、閉門等に追い込んだ。
「加賀騒動」として史実に残っている事件である。
物語は 「加賀騒動」そのものを描いた作品ではなく 「加賀騒動」後、連座制で 苦難に陥っている人達の姿を描きつつ、
加賀の稀代の大泥棒 白銀屋与左衛門とその妻 多美等 数奇な運命に翻弄される人達に焦点を当てた人間ドラマ、
(上)(下)2巻の長編時代小説になっている。

(目次)
(上)巻 「人ちがい」「経王寺」「奇怪な話」「藩主の母」「襲撃事件」「悲運の子」「大火」「焼け跡」「五箇山」
(下)巻 「秘密」「妙成寺」「八十五郎」「蜉蝣」「急坂」「盗賊」「明暗」「煉獄」「拈華微笑」

冒頭から 登場人物の多さで 記憶力減退老人には なかなか先に読み進めず難渋する。
次々代わる藩主名、その側室も多く、子が藩主になると側室が藩主の母になり 前藩主との母との関係が生じる等、
しばらくは 関係図をメモしながらでないと こんがらがってしまう。
主な登場人物
白銀屋与左衛門(与一)(与左)・・銀細工師・多美の夫、
多美(前波多美)・・与左衛門の妻・前波忠隆の妹
当吉・・与左衛門・多美の息子・前田駿河守家臣・木村惣太夫奉公人
前波忠隆・・前田家御馬廻役・多美の兄
小松屋佐吉・・元小鳥商
小笠原文次郎・・元高畠郎党・預玄院の密偵
たみ・・大槻伝蔵の妻
ひさ・・大槻伝蔵の次女
猪三郎・・大槻伝蔵の三男、
預玄院・・前田家5代藩主前田綱紀の側室・6代藩主前田吉徳の母、
元吉(前波家下男)、富蔵(橋番、団子屋主)万千代(遊女)、高桑政右衛門、浅香三四郎(道場主)、熊坂長範(盗賊頭領)・・・、
等々

「加賀騒動」、「宝暦の大火」、「度重なる藩主交代劇」、「藩士に広がった博打等荒れた世相」、「藩札乱造等財政の悪化」等々、
史実に基づく話に 多美等多くの女性の恋の姿を細やかに描く等、作者のフィクションを織り込んだ 読み応え有る大作だと思う。
随所に 城下町金沢の情景描写が織り込まれていたり、終始 金沢弁?で 描かれていたり 諸田玲子氏の力量が伝わってくる。
これまで知り得ていた「加賀百万石」のイメージに無かった多くの史実、実態を知ることが出来、目から鱗にもなっている。

これまで読んだ 「狸穴あいあい坂シリーズ」や「お鳥見女房シリーズ」で見られた 諸田玲子氏独特の世界、女性が主人公のほんわか時代小説とは若干異なり、「加賀騒動」という歴史上事件を深く掘り下げた骨の有る作品だという印象を持った。


 


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