映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

セレンディピティ~恋人たちのニューヨーク~

2007年10月02日 | 映画(さ行)

(DVD)

セレンディピティは「幸せな偶然」という意味ですが、この映画の登場人物ジョナサンとサラが出会ったニューヨークのカフェの名前でもあります。
偶然同じ手袋を買おうとして知り合った二人は一緒に食事をし、スケートをして楽しい時間をすごします。
そして別れの間際、二人のこの先は運命に任せましょう、ということで、たまたま持っていた5ドル札と本にそれぞれの名前と電話番号を記し、手放す。
もし運よく再びこれが相手の手元に戻ることがあれば、連絡を取りましょう・・・と。
さて、数年が過ぎて、二人はそれぞれ恋人ができ、まもなく結婚ということになっています。
けれども、いよいよ式が近づくにつれて、数年前の出会いが思い出され、彼・彼女が本当の「運命の人」だったのではないかと、気になってならない。
ジョナサンは友人の助けをかりて、その手袋のレシートに記されたカードの番号から彼女の身元をたどれないかと調べ始めます。
かなり現実的。
一方サラは、住んでいるサンフランシスコからわざわざニューヨークまでやってきて、運命の啓示が指し示すまま、運命に身をゆだね、彼を探し出すことにします。
このあたりが男女の違いというか、なんだかわかる気がしますね。
まあ、「お話」ですので、どのような結果になるかは想像がつくというものですが、わざとらしいすれ違い劇もはさみつつ、思いっきりロマンティックに話は展開。
女性はきっと気に入るでしょう。

でも神秘的な何かにすがろうとするサラを笑うことはできません。
なんだかんだ言っても、現実的でないものをよりどころにすることはよくあることで、私など、テレビの星占いはつい気になってみてしまうし、お正月に神社で引くおみくじも実は結構気にしている。
男女の出会いというのも実際、いろんな偶然の重なりでその人と出会うわけで、すべての出会いが神秘とも言える。
きっと運命の赤い糸で結ばれた相手がいるに違いない。
そう思いたくなるのも無理のないことです。

最期に、ジョナサンは勇気ある決断をします。
とうとうサラとのことは夢に終わったけれど、なんだかんだといってサラを探したのは、結局今の彼女とは結婚したくないからなのではないか。
そう気づいて潔く結婚をキャンセル。
現実と向き合う、しっかりした決断でした。
そしてその決断こそが運を呼ぶのです。

さて、楽しかったのは、セレンディピティの店員さん。
ジョナサンにカードの情報を教える見返りに、紫のネクタイやらスーツまで売りつける。
なんだかんだでやっと見つけた情報も役にたたなかったけれど、アイデアは提供。
意地悪なんだか親切なんだか、とってもユニーク。
もしかしたらすべてはこの人の画策?
こんなオジサンのクセにもしかして恋のキューピッド??
そんな想像までしてしまうのでした。
まだちょっと早いですが、クリスマスに見たい映画です。

2001年/アメリカ/91分
監督:ピーター・チェルソム
出演:ジョン・キューザック、ケイト・ベッキンセール、ジェレミー・ピーヴン、モリー・シャノン