映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「一度も植民地になったことがない日本」 デュラン・れい子

2007年10月15日 | 本(エッセイ)

「一度も植民地になったことがない日本」 デュラン・れい子 講談社+α新書

著者は英国国際版画ビエンナーレで銅賞受賞のアーティスト。
スウェーデン人と結婚し、スウェーデン・オランダ・ブラジルと移り住み、そして今は南仏プロヴァンス在住。
完璧な国際人。
彼女が見聞きした、ごく一般的なヨーロッパ人の日本観を紹介した本です。

まず、この表題、「一度も植民地になったことがない日本」。
日本人はあまりこんなことを意識することはありませんが、
ヨーロッパの人々は「日本はアジアの国々の中で数少ない、一度も植民地にならなかった国」、
という認識が一般的だというのです。
・・・確かに、それは誇るべきことかもしれません。
でもまあ、同じアジアの他の国を食い物にしちゃったので、あまり威張れない、ということでもあるかな。

著者は、30年に渡るヨーロッパ暮らしで、
日本の文化・習慣について、周りの人に伝えたり誤解を解こうとしたり、かなり孤軍奮闘しているように見受けられます。
ご苦労様です。
1942年生まれといいますから、それなりのお年。
もちろん時々日本にも帰国されているようですが、彼女自身の日本観も、やや古風なところもあるかな?と思いました。


さて、ヨーロッパで日本について自慢できることがいくつかあげられているので、ご紹介しましょう。

★多彩なお弁当とお箸の文化。
ヨーロッパは駅弁などなくて、どこも同じサンドイッチだというのです。お箸を使うからこそ、こういうことができるのでは?と著者は言う。

★日本のマンガはフランスでもすっかり浸透。
本にアニメに、若者がとりこになっている。

★宅配業者のきめ細やかなサービス。
ヨーロッパでは宅配はほとんど企業などで利用するくらいで、個人の家へ時間指定までして配達など、考えられないとのこと。

★フランス人は親子の絆が希薄。
親子でさえも個人主義。
日本の子が親の老後の面倒を見る風習は捨てがたい。
・・・今、日本でもそれは崩れている気がするのですけれど・・・。

一方、あまり威張れない話ももちろんあります。

★日本人は子供に甘すぎ、しつけがぜんぜんなっていない。
子供は動物と同じ。
社会全体でしっかりしつけるべし!
・・・そうそう、厳しくしつけることと、虐待することはまったく別物です。

★日本人は性善説?人を見る目が甘い。
・・そこがよいところでもあるのだろうけれど・・・。
自分を守るため、たやすく相手もいい人と思い込むのは危険、ということか・・・。

★日本はお金ですべてを解決する国?
・・・残念ながら、そう思っている人は多いようですね。

よく外国の映画を見て思うのは、どこの国の人も、結局、心のありようはみな同じ、ということなのです。
でも、言葉・文化・風習、そうした違いで、うまく意思が伝わらなかったり、誤解されたりすることはある。
日本人ももっとフランクに外国の人と語り合わなくては、と思います。


この本の冒頭に書いてあったことですが、
「英語を学べば国際人になれる」わけではないというのです。
まったく、そのとおりと思いました。
英語を話すことが大事なのではなくて何を話すかが大事。
だから、小学校から英語の授業をするのが本当に必要だとはどうも思えないのです。
自分の考えをきちんと相手に伝えること。
自分の主張を大事にすること。
こういうことこそ、「生きる力」とかいって、めざしていたのではなかったのか。
教育再生とか言って、いったい何を再生しようとしているのかさっぱりわからない。
学力だけ再生したいなら、学校なんか辞めてみんなで塾に行ったほうがいいよ。

あ~、大幅に軌道が外れてきたので、今日はここまで。

満足度 ★★★★