映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

インベージョン

2007年10月24日 | 映画(あ行)
古典SF「盗まれた街」(ジャック・フィニィ著)の4度目の映画化、ということです。
筋立ては、宇宙から来たウィルスが人に感染し、その肉体はそのままだけれども、精神は、「人間」でない何者かになってしまう。
ある朝起きてみたら、夫が夫でなくなっていた・・・というように。
その感染力はすさまじく、瞬く間に、地球上のほとんどが「宇宙人」に成り代わってしまう、というもの。
前3作はきちんと見た記憶があるような、ないような・・・、というところですが、割と有名な話なので、それほど、目新しい感じではないですね。
何で今また、リメイクなんだか・・・と思わなくもないです。

ちょっと新しい趣向としては、このウィルスがDNAに影響を与えるのは、本人がレム睡眠中に限る、ということ。
だから、感染しても、眠らなければとりあえずは人間のままでいられる、
ということで、ニコール・キッドマン演じる精神科医キャロルの悪戦苦闘が始まるというわけです。
彼女は元夫からウィルスを感染させられるのですが、愛する息子オリバーを宇宙人の手から守るため、正気を保たなければならない。
眠いのを耐えるのはほんとにつらいですもんねー。
幸いこの映画は眠くならなかったですが・・・。
最後にやっと出会えた友人(恋人?)のベンがすでに、別人になっていたというのも、予想の範囲内だし、もう一ひねりほしかったなあ、というところです。

ただ、この宇宙人、人を仲間に取り入れるところは、妙に強引で、不気味なんですが、その後仲間同士では実に穏やか。
感情をあらわに出さず、無表情、ではありますが、彼らは武器を持たない。
全体が一つの共同体で、個々はそのほんの一つの細胞と心得ているようだ。
映画の中で、時折出てくるニュースでは、世界各地の紛争がたちどころに平静化。
彼ら内部同士では、争いはないのです。
地球上の全人類が彼らに感染したとしたら、それはそれで悪くはないのじゃないか・・・という気もしてきます。

私はよく、吸血鬼モノを見たり読んだりすると思うのです。
すべての人が吸血鬼になれば、皆さん不老長寿。
何も怖くない。めでたしめでたしなのではないかと・・・。
吸血鬼を「悪」とするのは、単にキリスト教から見た「異端」意識なんじゃないかなあ。宇宙人でも、同じようなものかも。

そうして、宇宙ウィルスがすっかり地球を支配したとする。
そうすると、彼らは、今の社会にある「格差」をどう解決するのでしょうか。
同じ国では個人ごとの。
また、明らかにある、国ごとの格差。
経済発展が目標でないのなら、完璧な共産主義的社会になるのかもしれない。
また、明らかに、人類が食いつぶし、破壊している自然。
彼らなら、人間の生活と自然のバランスを保つために、あっさりと個体数の調整さえするかも知れない。
私は、むしろこのまま宇宙ウィルスが支配する地球の1年後の世界を見てみたいです。

2007年/アメリカ/99分

監督:オリバー・ヒルシュビーゲル
出演:ニコール・キッドマン、ダニエル・クレイグ、ジェレミー・ノーサム、ジャクソン・ボンド

「インベージョン」公式サイト