「桜宵」 北森 鴻 講談社文庫
ビア・バー「香菜里屋」シリーズ。第2弾。
お店の紹介は「花の下にて春死なむ」をご覧ください・・・。
今回も冴える工藤の推理。
これも表題の「桜宵」から。
亡き妻の手紙に導かれて、香菜里屋にやってきた刑事の神崎。
そこで供されたメニューは、「桜飯」。
ただし、本当はほんのりピンク色のはずのそのご飯は、なぜかうす緑色をしている。
工藤は生前の神崎の妻に「もし夫が来ることがあったら、このご飯を出してほしい」と頼まれていた。
このうす緑のご飯の謎。
神崎はこの薄緑の桜飯を見て、「御衣黄(ぎょいこう)」を連想する。
御衣黄とは、薄緑色の花をつける、珍しい桜の品種名。
神崎は以前、この花の咲く公園で、変わった光景を見たことを思い出すのです。
一人の中年女性が、黄緑のワンピースを着て何時間も公園のベンチに座っている。
誰かを待つようでもない。
そしてまた、一年後、同じ花が咲く時期に、再び、全く同じ光景を目にする。
彼女は何のためにそこにいて、毎年同じことを繰り返しているのか。
また、その女性とはまったく無関係の妻が、なぜ、それを暗示する薄緑の桜飯を夫に食べさせようとしたのか。
この謎を解くには、人の気持ちを読み取る洞察力が必要です。
香菜里屋マスターのお手並み拝見。
さて、この本では、工藤の友人、香月圭吾が登場します。
こちらは、プロフェッショナル・バー香月のマスター。
カクテルの腕はピカイチ。
「縦にも横にもがっちりと広い、それでいて弛んだところのない強靭な肉のかたまり」ときた。
この二人は、いつからのどんな友人なのやら。
興味は深まります。
今回の香菜里屋メニュー。
★エソのすり身を白菜の葉で巻き込んでロールキャベツ風に和風仕立てに煮込んだもの。合鴨の切り身のつけ焼きを添え、とろみをつけただし汁をひたひたにかけて。
★別々に蒸し上げた白身魚と蕪に黄身酢をかけ回したもの。
★小鯛を昆布で締め柚をあしらった小皿
★かたく水切りをした豆腐を四つ割りにし、さらにそれぞれ二枚にスライス。中に四種類の具(洋辛子と焼き海苔、明太子の生クリームあえ、生うに、生ハムとホースラディッシュ)を別々にはさんで揚げる。コンソメのスープをつゆに仕立てて。
★春キャベツとアンチョビーのパスタ。
★山独活を炭火で焼き皮を剥く。抹茶で色を加えたヨーグルトソースをかける。
★ザワークラウトに千切りの鶏皮をかりかりに揚げたものをそえて。
★鶏の砂肝を薄くスライスし、白髪ネギとともに炒めたもの。
★生のほうれん草とゆで蟹をパルメザンチーズを聞かせたソースで和えたシーザーズサラダ風。
★賽の目にしたレンコンと新銀杏のかき揚げ風。濃い目のコンソメスープで。
★松茸の土瓶蒸し。(正統。)
★手羽先と大根、ごぼう、にんじん、たまねぎを塩と日本酒でじっくり煮込んだスープ。
★牡蠣のグラタン
★河豚皮のにこごり
う~ん、お腹が空いてきた・・・。
満足度 ★★★★