映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「鴨川ホルモー」 万城目学

2009年04月12日 | 本(その他)
鴨川ホルモー (角川文庫)
万城目 学
角川グループパブリッシング

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京都。学生。サークル。
・・・ときたらやはり、森見登美彦を思い出してしまいます。
この作品を読み始めて、どうもそこに引っかかってしまって、
これはその亜流なのか・・・とやや、がっかりしてしまいました。

しかし、読み進むうち、「吉田代替りの儀」に及んでは、ぷっと吹き出してしまいました。
女人禁制の場で、彼らが踊る奉納の舞とは・・・。
この本は、まもなく映画が公開されますね。
全然、見たいとは思っていなかったのですが、
このシーンは見てみたいかも・・・なーんて、思ってしまいました。

ともかく、これはへんてこなストーリーです。

彼らの入ったサークルは、京大青竜会。
しかし、一体何をするためのサークルなのやら、入っていながらも良く分からない。

次第に見えてくるその全貌は・・・
京都に千年続く「オニ」を操る摩訶不思議なバトル。
その名も「ホルモー」。
まあ、ファンタジーの類ですが、
奇想天外のそのディテールが、なにやら楽しいです。
映画となればCGアニメたっぷりとなるのでしょうね。
この、表紙のカットにあるように、
なぜか突然チョンマゲ男子登場のナゾも、読んでいくうちに分かります。

この、奇想と、純情なラブストーリーが絡み、大変楽しい物語。
まあ、あっけらかんと楽しむのには良いでしょう。
ここには、すごく好きな相手は別の相手を思っていて・・・という
いくつかの報われない恋の連鎖が描かれています。
でも、私が思うに、こういうときって、
その人がいつもある人の姿を視線で追っている、
ということに気づくものじゃないかなあ・・・。
だから、このストーリーで、それぞれそういうことに気づいていないのは
ちょっと不自然に思いました。
「忍ぶれど色に出にけり・・・」というのはあると思うなあ・・・。

古都京都。
まあ、こんな不思議があってもおかしくない気がしてしまうのが、
やっぱり北海道ではかなわないところです・・・。

満足度★★★★☆(気持ち的には3.5)


ザ・バンク  堕ちた巨像

2009年04月11日 | 映画(さ行)
世界を支配する多国籍企業

          * * * * * * * *

この映画のクライヴ・オーウェンは終始、苦みばしっています。
渋いです。
彼、サリンジャーはインターポールの捜査官。
国際メガバンク、IBBC銀行の捜査に当たっています。
何でも、銀行が国際間の武器取引に関与しているという・・・。
しかし、捜査するうちに、つぎつぎと消されてゆく同僚や重要証人。
次第に、この世界を動かしているのは国家や宗教でなく
この多国籍企業である銀行であることが浮かび上がってきます。
諜報機関や、麻薬ディーラー、マフィア、第三世界諸国の独裁者
・・・そのようなところまで彼らは資金に任せて、
思うがままに世界を操っている。

まさに、これはフィクションでありながら、
限りなく真相に近づいているような気がして、怖いですね。

この監督は、トム・ティクヴァ。
「ラン・ローラ・ラン」とか、「パフューム/ある人殺しの物語」、
独特な物語を紡ぐ監督さん。
この作品は、社会派ドラマ、というよりは
サスペンス・アクションと思ったほうがいいのかもしれません。
ニューヨークのグッゲンハイム美術館での銃撃シーンはすごかったです。
日中、一般客をも巻き込んでの激しい銃撃戦。
美しい螺旋状の廊下に、びしびしと銃弾により穴が開いてゆく。
砕け落ちるガラススクリーン。
どくどくと血が流れ出る銃創・・・。
圧巻でした。
実際、こんなことがあったら、大問題ですが・・・。

結局サリンジャーは、この問題は正当な方法では解決できないと悟り、
真実を暴くために、法の枠を超える決断をするのです。
お金のためではない。
「正義」のために。


私は、アメリカの言う「正義」には胡散臭いものを感じてしまいます。
彼らが「正義」をかざす時にはたっぷり、眉につばを付けなければ・・・。
でもまあ、ここでのサリンジャーは本気みたいです。
ベルリン、ミラノ、リヨン、ニューヨーク、そしてイスタンブール。
まさにグローバルな問題にふさわしい舞台で繰り広げられる
サスペンスアクションを、お楽しみあれ。

2008年/アメリカ/117分
監督:トム・ティクヴァ
出演:クライヴ・オーウェン、ナオミ・ワッツ、アーミン・ミューラー=スタール、ブライアン・F・オバーン


4/4公開『ザ・バンク 堕ちた巨像』予告編



「僕の散財日記」 松任谷正隆 

2009年04月10日 | 本(エッセイ)
僕の散財日記 (文春文庫)
松任谷 正隆
文藝春秋

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いわずと知れた、音楽プロデューサーである松任谷正隆氏の、
買い物に関するエッセイです。
買い物といっても、スーパーで食品を買うのとは違う。
まさに、男のこだわりの品の数々。
ナイキのシューズ、
ホンダのモンキー、
エルメスのハンドタオル、
ガーデニングチェアetc…。
う~ん、正直いって、私にはかなり縁の遠いものばかりです。
だから、この本に書かれている○○というメーカーの××という商品
・・・というのがほとんどイメージがわかない。
にも関わらず、結構面白かったんですよね。

というのも、何というか、
このモノを選ぶための基本的スタンスが、きっちり自分流。
このこだわりを大事にすることって、いいなあ、と思うのです。
ダンディです。
例えば洋服などは、女物なら相当のバリエーションがあります。
色、素材、デザイン。
スカートあり、パンツあり。
ミニあり、ロングあり。
でも、男物はかなり限られてくる。
その狭い範囲では、ディティールにこだわるしかなくなるわけですが、
そこにこだわり抜くのは、本当におしゃれなんですよね~。

服を試着して、「これこそ、自分のために作られた服だ・・・」
なんて、思ってしまうあたり、
クスリと笑ってしまうところでもありますが、
そこまでこだわって、本当に好きな服とめぐり合ってみたいものだ・・・と、
思わせられます。

けれど、この本が「散財日記」とあるように、
なかなかそのような出会いはめったにあるものではなく、
数々の失敗を積み重ねてここまで来ている・・・ということのようです。
確かに私も、気に入って買ったはずなのに、
結局たんすの肥やしになっているものって、結構あります。

しかし、更に言わせてもらえば、氏の買い物は結構贅沢です。
大富豪とは言いませんが、
一般庶民の感覚よりはリッチなことは確か。
この、不景気なご時勢に、
このような散財を皆さんがしてくれれば
ちょっとは景気回復につながるかもしれません。
いや、それにはまず先立つものが必要なんですが・・・。
この本の解説で小山薫堂氏が言っています。
正隆さんが定額給付金を受け取ったら、
12000円でどんな買い物をするのだろう?と。
12000円ではねえ・・・。
と思いつつ、でもまあ、みなさんも大いに散財することにしましょう。
でも、品物選びはこだわりを持って!!

満足度★★★★☆


噂の二人

2009年04月09日 | 映画(あ行)
噂の二人 [DVD]

20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント

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ないことの証明は難しい・・・
                       
                * * * * * * * *

この作品はウィリアム・ワイラー監督が、
「ベン・ハー」以来2年ぶりに製作・監督したものということです。
ずいぶん違ったジャンルに・・・と思ったら、
もともと、自身で監督した作品をまた更にリメイクしたものということで、
このストーリーにはかなりの思い入れがあったのでしょうね。
オードリー作品でも、これはコメディではなく、シリアスな作品。


カレン(オードリー・ヘップバーン)とマーサ(シャーリー・マクレーン)は
学生時代からの親友で、
共同で、寄宿の女学校を経営しています。
カレンにはジョーという医師の恋人がいて、結婚を決めるのですが、
なぜかマーサは浮かない顔。

そんな時、地元の有力者ティルフィールド婦人の孫娘、メアリーが、
カレンとマーサが、おかしなことをしているのを見たと言い出します。
この子は、虚言癖のある子なんですが、
すっかりそれを信じ込んだ婦人が
子どもたちの親に、二人は同性愛だと言いふらし、
学校には誰もいなくなってしまう。

50年近くも前の話です・・・。
今なら確かに噂にはなるでしょうが、
それで社会的に抹殺されるほどのことにはならないでしょう・・・。
町の人たちの奇異なものを見るような視線。
見方してくれていたジョーまでもが、いつしか疑惑を抱いていた・・・。
あることの証明は簡単なのですが、ないことの証明は難しい。
ちょっと、先日見た「ダウト」を思い出してしまいました。

さて、このような理不尽なことで生活が立ち行かなくなってしまったら・・・、
どのようにして乗り越えていけばよいのでしょう。
・・・私は、この二人が勇気を振り絞って、この問題に立ち向かい、
生きるすべを取り戻してゆく、
そういう展開を期待したのですが、残念ながら・・・。

この作品中に、こんなセリフがあります。
「実際に、そういう関係の人たちはいる。
けれど、彼女たちは自ら覚悟して、そういう道を歩み、闘っている。
でも、私たちは違う・・・。」
そうなのです。
だから、余計に絶望感が深い。

この作品では、オードリーよりもシャーリー・マクレーンが光っていました・・・。
今は大御所で、時々スクリーンにも登場するこの方。
古い作品を見ると、時々このように思いがけず、
現在大御所の、とっても若いお姿に出会うのも楽しいですね。

しかし、この映画で更に目立っているのは、
この嘘つき少女のメアリーでした!
ものすご~く、かわいくないのです。
見ていても、腹が立ってきます。
・・・というのはつまり、名子役ということ? 
かわいい子ぶりっ子なら、大抵の子ができてしまいます。
でも、ここまでふてぶてしく憎々しい演技は難しいのでは・・・? 
すごい存在感でしたね。

初めは、同性愛者への偏見を描いた、
今となってはもう過去の作品なのかと思いながら見ていましたが、
実際に体の関係の有無だけで問うことができない、
その問題の深さ、
また、いったん抱いた疑惑は消し去ることは難しく、
そのあとそれを修復するのは不可能に近い・・・など、
時代を超えた問題が多々。
今見ても十分考えさせられる作品でした。

1961年/アメリカ/109分
監督:ウィリアム・ワイラー
出演:オードリー・ヘップバーン、シャーリー・マクレーン、ジェームズ・ガーナー、ミリアム・ホプキンス


「舞姫テレプシコーラ 第2部2」 山岸凉子 

2009年04月07日 | コミックス

「舞姫テレプシコーラ 第2部2」 山岸凉子 メディアファクトリー

長編バレエ漫画。
お待ち兼ねの最新刊が出ていました。
ローザンヌ国際バレエコンクールの続き。
われらが篠原六花(ゆき)ちゃんは頑張っています。

お人よしの六花ちゃんは、
周りの皆が自分のことだけに必死で
とにかくライバルを蹴落としたい、その一心なのに、
彼女は、困っている人の手助けをしてしまったりして、つい出遅れてしまう。
・・・またやっちゃった、と後悔しつつ、
でも、やっぱりこの性分は変えられないというあたり、好感触ですねえ。
人のことに気づく、というのは逆に言えば余裕がある、ということなのかもしれません。

「アラベスク」などと比べると、大変リアルにバレエ界を描いており、
専門用語もいっぱいで、
ともすると読むのがつらくなってきますが、
こういう気持ちの優しい六花ちゃんに、ずいぶん救われます。

この巻で、ひやひやさせられるのは、彼女の体調について。
どうも、風邪をうつされたらしいのですが、
微妙に熱が出たりしながらも、持ちこたえている。
今のところ踊りにも影響なし。
・・・どうなっちゃうのでしょうね、これ。
しかしこれは、六花ちゃんが、体調の心配に気をとられて、
大会そのもののプレッシャーから、多少気をそらされているようにも思うのです。
案外これが、良い方向に作用するのかも、などと思ったりして。

参加者の中では群を抜く、26番ローラ・チャン。
彼女との会話はまだありませんが・・・、
この先、何らかのかかわりは必ず出てきそうな予感。
彼女は果たして、ナニモノ?

というところで、また、長らくの「待ち」です。

満足度★★★★☆


トワイライト/初恋

2009年04月06日 | 映画(た行)
100年を待って、めぐり合った女性

           * * * * * * * *

高校生ベラが、母親の再婚のため、はなれて住んでいた父親の元にやってきます。
ワシントン州の小さな町フォークス。
雨の多い町。
ベラは、転校した高校で、
なぞめいた美しい青年エドワードと出会います。
青白い肌、赤い唇。目の色が変化する・・・。
初めは嫌われ、避けられていたように思えたのですが、
意識するほどに、お互いへの想いが止められなくなってくる二人。

エドワードの家族には重大な秘密があって、
なんと、不老不死のヴァンパイアの一族。
果たしてこの禁断の恋の行方は・・・。


とにかく、ロマンチック好きのオンナノコのための映画ですね。
もちろん、元オンナノコでも。
なにしろ、「ポーの一族」が大好きな私ですので、
迷わず、見に行ったわけです。
美形、結構。
ヴァンパイア、結構。

この、カレン家のヴァンパイア一族は、
これまでのヴァンパイアとはちょっとイメージが違います。
まず、牙がない。
昼間、棺に入って眠ったりしない。
(彼らは、眠ることは無いのだそうで・・・。)
日光に当たっても平気。(やや、変化はあります。)
血をエネルギーとしているのですが、
このカレン家だけの特性としては、いわば、ヴェジタリアンで、
動物の血を飲んで生きており、
絶対に人は襲わないと決めている。
「怪物にはなりたくない」、これが彼らの生活信条。
また、彼らは、不老不死というだけでなく、スーパーマンでもあるのです。
人並みはずれた身体能力。
エドワードは、スパイダーマンまがいにスルスルと大きな木に登ってみせる。
しかし、本能としては、やはり人の血が欲しいのです。
彼らは人を襲うとき、最高のエクスタシーを感じる。

そこで、エドワードの葛藤があるのです。
愛するベラに近寄りたい、キスしたい。
しかし、そののど元にかぶりつきたいという欲求を押さえるのに必死。
それは、彼女の命を奪い、彼女を彼女でなくしてしまうことなのだから・・・。

まあ、このあたりは、乙女の花を摘んでしまいたくなる
その欲求を押さえるのに必死、
という普遍的なオトコノコの悩みと、さほど、変わらないといえるでしょう。


さてここへ、よそ者のヴァンパイアが流れ込んでくるのです。
彼らは、平気で人を襲う。
そこで、ヴァンパイア同士の戦いが始まる・・・と。
意外にもアクション作品でもあったりするのでした。

エドワードも素敵でしたし、ストーリーもまあ、面白かったのですが、
期待したほどのうっとり感はなかったですね・・・。
この話はシリーズでまだ続きそうですので、先に期待しましょう。

結局、この二人はどうなるのか・・・、
やはりそこが問題になってくるでしょう。
いつまでも18歳のままのエドワード。
しかし、ベラは確実に年をとっていきます。
ほんの一瞬のすれ違いの恋に終わってしまうのか・・・
それとも、二人で永遠の時を生きる覚悟をするのか・・・。
ヴァンパイアものって、この、永遠の時を生きるという部分に、
絶大なロマンがあるんですね。
私たち人間には決してかなわない夢だから・・・。

2008年/アメリカ/120分
監督:キャサリン・ハードウィック
出演:クリティン・スチュワート、ロバート・パティンソン、エリザベス・リーサー、ニッキー・リード


Japanese Trailer [HQ]



パリで一緒に

2009年04月05日 | 映画(は行)
パリで一緒に [DVD]

パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン

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映画好きのための、遊び心いっぱいの作品

             * * * * * * * *

さて、ここでのオードリーはタイピスト。
パリで映画のシナリオを執筆中のベンスンのところへ、雇われてやってきました。
ところがなんと、締め切りは2日後だというのに、
まだ1ページもできあがっていない。
おりしも、その2日後はパリ祭。
そこで、ベンスンはパリ祭の一日を舞台にパリ娘の物語を作ろう・・・と、
物語を語り始めます。

そこで始まる劇中劇。
このタイピスト、ガブリエルと脚本家ベンスンが主役となって紡ぐストーリー。

まあ、内容はとやかく言うほどのものではありません。
遊び心たっぷりで、雰囲気を楽しんでね
・・・というくらいのロマンチックコメディです。
実際に、締め切り間際で案に詰まった脚本家が、
苦し紛れにでっち上げたストーリーなのではないか・・・と、
勘ぐってしまいそうです。
ともかくオードリーを引き立てるための作品なので、
さすがに彼女は素敵に描かれています。

彼女の作品はどれもそうですが、なんて素敵なファッションなんでしょう。
やわらかい黄緑色のスーツに、白い帽子、ハンドバッグ。
清楚で、この7月という季節にもマッチしています。
また、別の時には派手すぎず淡すぎないピンクのワンピース。
この色合いがさすがパリで、センスがいいですね。
リカちゃん人形に着せてみたい。
ここは、本場のナイスバディのバービー人形より、
ペタンコ胸のリカちゃんのほうが似合います。

それにしても、やはりオジサマですね。
オードリーの相手って。
この頃の映画がほとんどこうだったのでしょうか。
それとも、若い相手を組み合わせるとリアルすぎて、
オードリーのイメージに傷がつくとでも・・・?
はたまた、映画製作陣がこのようなオジサマばかりで、
自分たちの夢を描いただけなのか。


今ならこうですよ・・・。
若く新進気鋭のシナリオライター。
人気だけが先行して、近頃スランプ。
全く筆が進まない。
そこへ派遣されてきたアシスタントは、バツイチのシングルマザー。
時間になると子どもを迎えにいかなくてはならないので、
早くしてと急かすのだけれど、仕事は進まない。
そのうちには喧嘩になり、彼女は飛び出してしまうが・・・。

なーんてね。
ありそうじゃないですか?

映画のあり方も、時代と共に変わっていくものなんですね・・・。
だから、この作品はどうもテンポがのろくて能天気に思えてしまうのですが、
まあ、時にはのんびりと、
古き良き時代を思いながら・・・というのも良いでしょう。

1963年/アメリカ/110分
監督:リチャード・クワイン
出演:オードリー・ヘップバーン、ウィリアム・ホールデン、グレゴワール・アスラン、トニー・カーティス


「九杯目には早すぎる」 蒼井上鷹

2009年04月04日 | 本(ミステリ)
九杯目には早すぎる (双葉文庫)
蒼井 上鷹
双葉社

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あらやだ!
今じっくりこの本の表紙カバーを見て、やっと分かったのですが、
この著者、

「アオイ ウエタカ」と読むのですね。

私はてっきり「アオイウエ タカ」さんだと思っていました。
アオイウエ??? 
アイウエオではなく??? 
・・・と勝手に思っていた私。

まあ、このようなことでも分かるとおり、私にははじめての作家です。
「小説推理新人賞」受賞作「キリング・タイム」を含む。

この本は短篇5篇とショートショート4篇が交互に並んでいます。
どれも結構くせのある感じの人物登場。
意外な事件はシニカルな結果を招きます。

この著者はある年会社をやめ、
5
年間小説家を目指すため、
多々のミステリのアイデアを書き溜めたといいます。

そんな中から生まれたのが、
ひねりの聞いたプロット、
小市民的でいささか頼りないキャラクター。


「キリング・タイム」では
冒頭から主人公が上司の黒住に階段から突き落とされます。

さっきまで、普通に一緒に飲んでいたのに・・・。

黒住は、最近どうも誰かに付けねらわれているという。

おまけに妻が浮気をしているらしい・・・。
つまり、主人公は妻の浮気相手だと思われたのだろうか。
しかし真実はそうではなくて・・・。

なかなかにひねりの利いた作品でした。


さてと、このように確かに面白くなくはナイのですが・・・。

私は、あまりのめりこめませんでした。

どうも登場する人物たちに魅力を感じられません。

ルックスはともかく、
ニヒルであるとか、ユーモアにあふれているとか
・・・どこかになにかしら魅力があってこそ、
心を添わすことができる気がするんですね。
まあ、あくまでも私の感覚、ということです。
この小市民的なところに共感を覚える・・・
なんていう人も、いるかもしれませんしね。


いかにも、アイデアを書き溜めました・・・という感じはします。
だから、そのネタを使うことに主力が費やされていて、
読み物としての、楽しさに欠けるような・・・。

まあ、単に私に合わない、ということにしておきましょう。

 

満足度★★☆☆☆


「深淵のガランス」 北森 鴻

2009年04月03日 | 本(ミステリ)
深淵のガランス (文春文庫)
北森 鴻
文藝春秋

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銀座の花師、佐月恭壱。
花屋じゃなくて花師というのが、ミソなんですね。
濃紺の作務衣に白足袋、雪駄履き。
腰の近くまで伸びた総髪。
肩にアーガイルチェックのケープ。
花の入った木桶を携えて・・・。
相当特異ですが、これが普段の佐月の花師としてのスタイル。

さて、この男のもう一つの顔は、絵画修復師。
古くなって汚れてしまった絵画をきれいにしたり、傷や破れなどを修復。

本文によりますと・・・
絵画修復とはミクロとマクロの同時作業。
あるいは凝視と俯瞰の完成の行使といえるかもしれない。
作業の直接対象は常にミクロの単位であり、
同時に全体の印象を損なうことなく仕事を完成させねばならない。

時には画材成分を化学分析したり、X線撮影したり
・・・ありとあらゆる分析をしつつ、
基の技法と同じく修復をしたりする。
実にデリケートかつセンスを要する作業です。
しかし、この業界は、常に危うい部分がある・・・。
というのは絵画といえば憑物の贋作なのですね。
まともな仕事をしているつもりなのに、
いつしか何らかのトラブルに巻き込まれていってしまう。
・・・そういうことを中心にしたストーリーです。

ということで、かなりこの美術界の専門用語なども出てきまして・・・。
そもそも、私はこの表題の「ガランス」が分からない。
何のことはない、茜いろのことだそうですが・・・。

ここに登場する人物たちの絵画にかけるそれぞれの熱い思い
・・・というのは、結構興味はあります。
・・・しかし、投機としての美術収集はちょっといただけないかな。
でも、美術界はこのような人々に支えられているわけなんですねえ・・・。

この本の最後に「凍月」という書き下ろし短篇がありまして、
若き日、ヨーロッパ帰りのキョウイチがそこにいます。
これがなんだかとても瑞々しい気がして、素敵でした。
今度は、花師の方をメインとしたストーリーなどもみてみたいです。

満足度★★★★☆


イーグル・アイ 

2009年04月02日 | 映画(あ行)
何もかも見通す目の存在

             * * * * * * * *

コピーショップ店員ジェリーに突然かかってきた一本の電話。
「私の言うとおりにしなさい。さもないと死ぬことになる。」

誰とも知れないその電話の主は、
ジェリー(シャイア・ラブーフ)の居場所や状況をすべてお見通しで、
あれこれ指示を出す。
その通りにしなければ、つぎつぎに危険が迫ってくる。

一方法律事務所で働くレイチェル(ミシェル・モナハン)の元にも同様の電話がかかってきており、
二人は何がなんだか分からないままに、
行動を共にし、ある場所を目指すことになります。
また、その二人をFBIが追うことになり、
まさにジェットコースターのようなサスペンス・アクションとなっています。

問題は、誰がどこからこのように特定の人間の所在や行動を監視しているのか、
そのようなことができるのか、ということなのですが・・・。
このことに大きく貢献しているのが携帯電話。
居場所が分かるのは周知のことですが、
その電話のマイクから音を拾い、その人の行動は何もかも分かってしまう・・・と、言っています。
(本当かどうか、知りませんよ・・・)
街中いたるところに監視カメラが設置されていて、
これを駆使すれば一人の人間をずーっと追うことができるといいます。
あらゆる機械がコンピューターで制御されている昨今、
こんなことがあってもおかしくない・・・と思えてきて、
薄ら寒い気がしてきますね。

ちょっと突っ込みを入れたくなるのは、
あの、時限装置つきのカバンなんですが・・・。
なんでわざわざ時限装置つきのカバンなのだか・・・。
全く意味無し。
そもそも、何であんなものを輸送車で運ぼうとしていたのでしょう。
ナゾ・・・。

まあ、それはともかく、
この映画の冒頭、
アフガンで米軍の掃討作戦が描かれています。
ここをよく覚えておいてください。
このストーリーの大きな原因となる部分です。
ちょっぴり風刺も効いていますね。
まあ、この部分でやっとなんとか格好がついている。
これがなければ、アクション等派手なだけで何も残らない・・・
ということになるかも・・・でした。


2008年/アメリカ/118分
監督:D.J.カルーソー
出演:シャイア・ラブーフ、ミシェル・モナハン、ロザリオ・ドーソン、ビリー・ボブ・ソーントン


【最新映画】イーグルアイ 予告編(シャイア・ラブーフ )