マイマイ新子 (新潮文庫)高樹 のぶ子新潮社このアイテムの詳細を見る |
この物語の舞台は昭和30年。
山口県防府市国衛。
主人公は9歳の少女、青木新子。
昭和30年といえば、「もはや戦後ではない」といわれ、
高度経済成長のスタートラインのような年。
まあ、正直な話が、私の生まれた年なのでして・・・。
だからこの新子ちゃんは私よりは結構お姉さんということになりますが、
この時代の雰囲気はとても良く分かります。
けれど、この作品はそんなノスタルジーに浸るためだけのものではありません。
何しろ新子のキャラがいい。
元気。
正義感が強くて、意地っ張りで、行動力もある。
学校の成績はいいけれど、
いつも通知表に「落ち着きがない」などと書かれるのがたまにキズ。
家族は、大好きなおじいちゃん、おばあちゃんと、
勤務地が遠いので普段は家にいないお父さん、お母さん、
そして4つ下の妹。
おじいちゃんとはとても気が合う。
この土地の昔の話、不思議な話、いろいろなお話をしてくれる。
妹は新子から見てもとてもかわいいのだけれど、
どうも、家族はみな妹に甘く、自分ばかりが損をしている気がしてしまう。
エデンの東のジェームス・ディーンのように、
家族はみな妹ばかり愛していて、
自分は嫌われているんじゃないかしら・・・などと悩む。
友人たちもたくさんいますよ。
同じ年のシゲル。
都会から転校してきた貴伊子。
父親が警官のタツヨシ・・・。
今風の変に賢い大人びた子どもたちではなく、
実に子どもらしい好奇心に満ち、
無邪気で、
そして、大人の世界とは一線を画すべきことを無意識に心得ている。
ああ、確かに、コドモのときの心ってこんなだったのかもしれない
・・・と思わせる何かがあります。
新子の冒険を揚げるときりがないくらいですが、
病院の霊安室に忍び込もうとしたり、
防空壕あとの洞穴を探検したり、
ヤクザの元へ敵討ちに出かけたり・・・
はたまた家出も決行。
どれも一緒にワクワク・ドキドキ、
微笑ましくて、つい、にんまりしながら読んでしまいます。
このような冒険を繰り返しつつ、
新子はいろいろなことを学んでいきます。
新子はおじいちゃんにしか愛されていないと思っていますが、
そんなことはもちろんなくて、
中でも大学の先生のお父さんは、
ゆったりと大きな心で新子を見てくれています。
こういう家族の中で育てば、なるほど、こんな素敵な子が育つわけだ・・・。
でも、最後にはちょっとショックな出来事が・・・。
私は本日そこを読んでいて、帰宅のバス停を乗り過ごしてしまいました・・・。
先日は「スラムドッグ$ミリオネア」の映画を見て、
インドの子どもたちのパワーに圧倒されたのですが、
確かに、日本も以前は同じ風だったんですよね。
時代を逆戻しすることはできませんが、
何とか、そういうエネルギーを子どもたちに取り戻してあげられたらいいのに、
と思います。
これがアニメ化されて公開が決まっています。
「マイマイ新子と千年の魔法」。
何しろ、原作がこのようにとてもいいので、期待できそうです。
満足度★★★★★