上手に風邪をひくということ 2015.10.23
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10月もおしつまり、11月に入れば、冬将軍を迎える前線も間近。
毎年この頃になるとインフルエンザ流行の話題が出る。
これまでにもブログでは 風邪の効用や上手な乗り越え方など
を話題に書かせていただいたが、
今日は整体の創始者、野口晴哉氏の著書から皆様に
ご紹介させていただきたい。
風邪の定義はいろいろあるようだが、真に効く風邪薬
を発明したらノーベル賞ものだと友人の医師が言って
いたように、原因は、とらえどころがないらしい。
油断していれば他の病気を併発しかねない。
いつの間にか治ってしまうときもあれば2か月以上
咳き込む風邪をひいたこともあった。
野口氏は、風邪をひく大元には“弾力を失った偏りの
有る身体の部分”を基の弾力或る細胞に戻そうとする
自然治癒的な体の智慧があると言う。
“体が鈍くなっていると、病気を感じない、異常も感じない、
自分は大丈夫なつもりでいる。
突然ばたっと倒れる。
それで急に死んだからといっても、頑張って鈍くなって死ぬ
一歩手前までいっているのだから、本当は不意ではない
のですが、それまで何ともないつもりでいるから、
不意とか突然とか偶然とかいって高血圧症を怖がっている。
その前に体の弾力という面から体を観て行くと、突然、
脳溢血で倒れるのも、癌になるのも、決して偶然では
ないのです。”
つまり、風邪を引く効用として、こうした体の一時的な
つまりや凝り、を解くということがあると野口氏は言う。
それは全く同感だ。
風邪の症状、鼻水や熱、咳や痰などは、すべて体の汚物
(注:体の凝りや’つまり’のためヴィールスに侵入され、
体の自然治癒力で一掃された死骸など)を出すために
必要な過程であるといえるのだ。
よく、毎年健康診断をしていたのに、癌が見つかって、
慌てたという話を耳にする。
これは、最新のクリニック機器を使ってデータを
とっても、物理的には完璧なデータでも
’つまりや凝り、順気’などの測定は、無理だからだ。
野口氏は続ける:
“ガンにしても、白血病にしても、肝臓病にしても、
あるいは、脳溢血にしても、自覚しない内にふっと
病気が重くなり、自覚したときは間に合わないというのが
今の病気の特徴です。
そういうのはその根本に鈍くなっている体がある。”
具体的に風邪の症状を経過して体に弾力を取り戻す
というのはどういうことだろう?
血圧が高い人は血圧が低くなる。
それは血管が柔らかくなるからだ。
血管の弾力性がでるからだ。
弾力ある血管は はりのある心のように、疲れ知らずだ。
頑張りのきくエネルギーが体の細胞に運ばれる。
野口氏が数万人の体を診てきて
“風邪は病気というよりも、風邪自体が治療行為では
なかろうかと考えている”という結論に至るのだ。
風邪の症状を抑え込むより、もし、風邪自体が治療行為
であると信じられれば、穏やかに風邪の症状が過ぎゆく
のを見つめることができる。
そのとき、無理な運動や仕事をすることはむしろ、
その症状がでるために体を張って頑張ってくれている
身体に対して、休養を与えることも必要だとわかる
だろう。
多くの人たちは子供のころから、ほとんど、風邪の
症状が出たら早いうちに薬を飲んで治すよう、
習慣づけられているから、“風邪を完全に経過しないで
治してしまうことばかり考えている”と野口氏は言う。
“普段の体の弱い所をそのまま残して又、次に行き、
又、風邪をひく”という、結果を残す。
風邪の原因、体の凝りや偏り、を見直そうとしない。
あるいは仕事上、どうしても力を入れなければならない
身体の一部の箇所の疲労のたまり、それを 野口氏は
一言で“運動習性”と呼んでいるが、或るところに
負担をかけ続けていると風邪を繰り返す“必要性”も
出てくる。
野口氏の患者たちを総合的にみて、
“ガンになる人とか、脳溢血になる人とかいうのを
丁寧に見ると、皆、共通して、風邪をひかないという人が多い”
という。
“絶えず、風邪を引いたり、寒くなると、急に鼻水が出る
と言うような、いわゆる、病みぬいた人”
は逆に長生きしている人が多いともいう。
体が鈍くなると疲れに対して鈍感になる。
鈍感になるから、風邪をひくほど、体が敏感に対応
しなくなる。
熱や鼻水などで体を守り、ウイールスに対して抵抗する力
も弱くなるから、体はますます、運動習性を強めて、
その人特有の凝りを定着させていく。
“上手に風邪さえ引けば血圧も下がるし、
体の硬張りもなくなるし、或る一部分が冒される
ようなこともなくなってくる” と野口氏は言う。
冒頭の風邪の定義に戻ると、だから、風邪という
のは一人ひとり詳細部分で原因は異なり、
その人の偏った体の“凝りのあるところ”に顕れて
来るといえるだろう。
喉にきたり、鼻にきたり、お腹にきたりする
のもその由縁なのだろう。
“天然の体をできるだけ天然に保たねばならない。
そうなると、いろいろな治療行為よりは、却って、
風邪を上手にひき、上手に経過することの方が
意義があるのではないだろうか。“と提言する。
参考図書:“風邪の効用”改訂6版 野口晴哉著 (株)全生発行
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