アヴェ・マリア!
【質問】
小野田神父さま、いつも興味深くこちらのサイトを拝見しております。
聖ピオ十世会の結婚観についてお聞きしたく思います。
最近では「出来ちゃった結婚」というのが日本では当たり前のごとくなってしまっています。
十年近く前、男女ともに信者のカップルの式を所属協会の神父さまが執り行ったのですが、それがいわゆる出来ちゃった婚の夫婦だったのです。
当時まだ洗礼を受けたばかりでしたが、非常に疑問でした。そういうことをしてしまっていいのか……と。聞くのもはばかられてしまいましたが。
仮に、片方、もしくは両者ともがカトリック信者の男女が、すでに女性が妊娠している状態で、婚姻の秘跡を執り行って欲しいと申し出があった場合、十世会の神父さま方はどのように判断なされるのでしょうか?
要理では、同棲はもちろんのこと、婚前交渉も禁じられていますよね?
それを堂々と破っている男女が、はたして「秘跡」にあずかる資格があるのでしょうか? すでに告解されているというのならよいのでしょうか? 本人たちの罪は許されても、周囲に対しそれはつまずきにはならないのでしょうか?
お忙しい中恐縮ですが、ご回答いただけたらと思います。
【回答】 聖ピオ十世会の結婚観について
アヴェ・マリア!
ティナさん、
こんにちは! 御返事がこんなに遅れてしまってごめんなさい。
たいへん長らくお待たせしてしまいました。
男女ともに信者のカップルの式がいわゆる「出来ちゃった婚」についてどう考えたら良いのでしょうか?
【婚前交渉は、大罪】
このごろ日本のみならず世界中で青少年のモラルが低下していますね。残念ですね。
天主の十戒では、全ての貞潔に反する行為が「思い」さえも禁止されています。子供の出産にかんする行為は、合法的に結婚した夫婦のみがすることを許されているのであって、結婚以外の「婚前交渉」「婚外交渉」は全て大きな罪となります。
聖ピオ十世の公教要理にはこうあります。
425 第六戒「なんじ、かんいんするなかれ」では何を禁じていますか。
第六戒「なんじ、かんいんするなかれ」では、貞潔に反する行ないをしたり、見たり、話したりすることすべてと結婚の不忠実を禁じています。
426 第九戒では何を禁じていますか。
第九戒では、夫婦が結婚するに際して誓いあった忠実に反するあらゆる望みをはっきりと禁じています。また、第六戒で禁じられている行ないについて考えたり、望んだりすることも禁じています。
427 貞潔に反する罪は重大ですか。
貞潔に反する罪は、天主と人の前に非常に重大で、いまわしい罪です。つまり、人間を動物と同じ状態にひき下げることになり、多くの罪や悪徳に誘い込み、この世と来世において最大の罰を受ける結果に追いやることになります。
430 第六戒と第九戒では何を命じていますか。
第六戒では、行ない、視線、ことば、ふるまいの上で貞潔で慎み深くあるように命じています。また第九戒では、内的に、つまり、心の中でも貞潔で、純潔であるように命じています。
431 第六戒と第九戒を守るためにどうすべきですか。
第六戒と第九戒を守るために心をこめてしばしば天主に祈り、いと潔き御母、聖マリアヘの信心を深め、天主はつねに私たちを見ておられることを思いだし、死や天主の罰、そして、イエズス・キリストの御受雉について考え、五感を憤しみ、犠牲を行ない、よい準備をして、しばしば秘跡にあずかるなどしなければなりません。
432 貞潔を守るために何を避けなければなりませんか。
貞潔を守るためには、怠惰、悪い交際、悪書、不節制、卑猥な書画、いかがわしい娯楽、危険な会話そのほか、罪の機会となるようなことをすべて避けなければなりません。
【しかし、婚前交渉は、秘跡による婚姻を受ける禁止条項にならない】
では、もしもすでに罪を犯してしまった或るカトリック信者のカップルが婚姻の秘跡を受けたいという場合、彼らに秘跡を受ける権利が有るのでしょうか 貞潔に反する大罪は、婚姻の秘跡の禁止条項に当たるのでしょうか
教会の定める、婚姻を無効とする障害には、年齢が足りないこと、既婚で相手が生存していること、三親等の血縁関係、霊的親族関係、公的な貞潔の誓願、異宗支障(カトリックの洗礼を受けたものと未信者との結婚)などがあり、また婚姻を違法とする障害として、混宗支障(カトリックの洗礼を受けた者と非カトリックの洗礼を受けた者の結婚)、私的な貞潔の誓願など(この他にもまだあります)を定めています。しかし、貞潔に反する大罪は、禁止条項には挙げられていません。
聖ピオ十世の公教要理によればこうあります。
845 信者が正当な婚姻を結ぶためには何が必要ですか。
信者が正当な婚姻を結ぶためには、禁止障害を持たないこと、またキリスト教の主な教えを知り、聖寵の状態にあることが必要です。これがないと汚聖の罪を犯すことになります。
846 婚姻の障害とは何ですか。
婚姻の障害とは、婚姻を無効あるいは違法とする事情のことで、前者を無効障害、後者を禁止障害と呼びます。
847 無効障害の例をあげて下さい。
無効障害とは、三親等の血縁関係、霊的親族関係、公的誓願、異宗支障などのことです。
848 禁止障害の例をあげて下さい。
禁止障害とは、混宗支障、私的誓願などのことです。
【できちゃった婚は、躓きにならないように司牧的に配慮すべき】
でも、いくら公教要理では障害にならないとしても、盛大な結婚式を挙げてもいいのだろうか と普通は思いますよね。天主の十戒を堂々と破っている男女が、はたして「秘跡」にあずかる資格があるのでしょうか 告解すれば、全ては赦されて、償いを果たさなくても良いのでしょうか 本人たちの罪は許されても、周囲に対しそれはつまずきにはならないのでしょうか そのような思いは当然だと思います。
そこでカトリック教会では、結婚式でもいろいろな程度の荘厳さを設けています。例えば、模範的なカトリックの青年男女が貞潔を守りつつ婚姻の秘跡に与る場合は、荘厳な歌ミサや全ての儀式が挙行されるけれども、あまり模範的ではないカップルの場合には、荘厳な儀式などを執り行わないとかです。
中には、教会の中での儀式が拒否されて香部屋で、司祭も短白衣を着ずにただスータンでストラを掛けただけで(ラテン語で in nigris と言う)、ミサ聖祭もなく、婚姻の相互の同意を確認するというだけの婚姻の儀式(!)もあります。
では、すでに女性が妊娠している状態で、或いは子供が生まれている状態で、婚姻の秘跡を執り行って欲しいと申し出があった場合、十世会の司祭はどうするでしょうか
聖ピオ十世会では、それぞれの国や管区によってやり方や習慣は違いますが、カトリック教会の精神に従って、通常の場合、全ての荘厳儀式を挙行することができなくなります。例えばフィリピンの場合、婚姻の儀式には、とても荘厳な取り巻きとか、特別のロウソク、新郎新婦を結ぶロープなどがありますが、それらが禁止されたり、歌ミサではなく読誦ミサになったりします。
イギリスの場合、純潔を意味する白いウエディング・ドレスを着用することが禁止されます。
また普通、妊娠が誰の目にも明らかな場合には子供の出産後に式が延期されます。
これはカトリック教会が、天主の十戒に忠実であればあるほどそれだけ大きなご褒美があるよ、ということを誰の目にも分かるように示したいからなのです。
大変送れてしまいましたが、これでご質問にお答えできた、と期待します。重ね重ねお返事が遅れてしまったことをお詫びします。しかしこれに懲りずに、またのご質問をお待ちしております。今後とも、よろしくお願いします。
天主様の祝福が豊かにありますように!
トマス小野田圭志神父(聖ピオ十世会司祭)
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