おかんのネタ帳

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夜来香ラプソディ 感想その1

2022-05-09 11:30:44 | 演劇・舞台
 音楽劇『夜来香ラプソディ』。
cubeという事務所の25周年記念の舞台です。
なので、cube所属の俳優が主になって出演してます。

ちなみに5年前、20周年の時に上演された音楽劇『魔都夜曲』は、藤木直人さんが主演。
松下洸平くんも出てたけど、服部良一さんをモデルにした若いピアニストの役でした。
5年後の、25周年は、その洸平くんが主演。すごいね~



第二次世界大戦末期の上海で、人種やイデオロギーの壁を乗り越えコンサートを開催しようとした人々を描く物語。
1945年当時の上海は、租界という治外法権が存在し、“魔都”と称されていました。
「蘇州夜曲」や「別れのブルース」といったヒット曲を数多く手がけた作曲家・服部良一、「夜来香」の作曲家・黎錦光(れいきんこう)、日本でも中国でも愛された歌姫・李香蘭を中心に、音楽を通じて絆を結び合う人々の葛藤と夢を描きます。

演出は、『魔都夜曲』に引き続き河原雅彦さん。
音楽はcube所属のアーティストの音楽活動やライブに欠かせない存在の音楽プロデューサー本間昭光さん。

舞台はたくさん観てますが、東京初演を観ることはめったになくて、今回、新橋演舞場で東京千穐楽を迎える『陰陽師」と、『夜来香ラプソディ』の初日が重なったので、思い切って上京、同じ日に2本、観てきました~
長いお芝居をマチソワ、新橋からコクーンまで汗だくで移動、走りましたよ~~
いや~、間に合って良かった〜


シアターコクーンがある、bunkamura 

5年前の『魔都夜曲』の時は、舞台が始まる前からバンドの生演奏とキャストの生歌がありました。
今回は幕間を含めてずっと、服部さんの曲が流れています。
当時の音源?というような、懐かしい曲ばかり。

けど、遅刻したらあかん舞台でした~!
(間に合ってよかった~~)
舞台の始まりは、ちょっと意表をつかれたというか、洸平くんファンにはたまらない始まり方でしたね。

客席の通路を憲兵たちが歩き、舞台のそばに佇みます。
物々しい雰囲気の中、開演のブザー 
タキシードでびしっと決めた洸平くんがタクトを持って上手から登場、客席に語りかけました。

「このようなご時世の中、たくさんの方にお集まりいただき、誠にありがとうございます・・」

一瞬、物語なのか、現実なのかわからない台詞です・・・
あまりに今の状況のことを言ってるようで不思議な感覚になりましたが、これは、洸平くんではなく、服部さんの、1945年6月のコンサートが始まる前の挨拶なんですね。
・・・そしてこのコンサート、つまりこの舞台『夜来香ラプソディ』の、幕開でした。
(え?ブザー?って思ったら、コンサートの開演のブザーやったんですね!)

服部さんが力強くタクトを振り下ろすと舞台奥にいる生バンドの豊かな音楽が流れ、ダンサーたちが登場します。
その瞬間、客席にいる私たちは、戦争のまっただなかで行われるこのコンサートの観客の一人になっていたのです。

とにかく、力強くタクトを振る、この服部さんを演じる洸平くんがカッコ良くて~ → こちら
めっちゃくちゃ男前です!

服部さんの次に、タキシードに身を包んだ、黎錦光(れいきんこう)が登場します。
演じるのは、洸平くんの事務所の後輩、白洲迅くん。男前です!

黎錦光は中国の作曲家で、「夜来香」を作った人。
二人が、このコンサートについて話をし、オープニングのメロディが流れると、木下晴香ちゃん演じる李香蘭が登場。
赤い幕が引かれてステージ全体を埋めるような大きな階段が現れ、キャスト全員が登場します → こちら
全員で、本間昭光さん作曲の「希望の音」を、高らかに歌い上げます。
作詞は、岩里祐穂さん。

♪ 今こそ ここに幕が上がる

  音楽に隔てるものは何もない 
  国境も 憎しみも 邪魔するものはない

服部さん、つまり、洸平くんがソロで歌った歌詞は、

♪ 人生を鳴らせ

でしたね。
壮大なメロディと歌詞、オープニングだけしか歌われないのが、ちょっと残念。
そして、今行なわれているコンサートシーンと行きつ戻りつしながら、この日を迎えるまでの出来事が描かれていきます。
あの時代を生きた人々のドラマです。

上海に渡った服部さんを迎えたのは、陸軍報道班文化担当の中川中尉。
演じるのは、洸平くんと同じ年の上山竜治くん。ミュージカルで活躍している俳優さん。
中川中尉は服部さんをクラブ「ラ・クンパルシータ」へ案内し、服部さんはめっちゃ感激するんですね。
戦時下なのに、ここにはジャズがある、音楽がある、音楽を楽しむ自由があるんだと。

ここで、「夜来香」を作った黎錦光に熱烈歓迎され、服部さんは思わず、歌いだします。

♪ あわれ春風に なげくうぐいすよ~

洸平くん、うまいですよ、ほんと。
そこに、「夜来香」を歌いながら登場するのが、李香蘭を演じる木下晴香ちゃん。
晴香ちゃんは、グランドミュージカルにも出演する歌える女優。
若いけど、透き通った歌声がすてきです。

李香蘭が歌いだしたことで、服部さんは驚くんやけど、白洲くん演じる黎錦光に促されて、二人で「夜来香」をデュエット。
ハモるんですよ。洸平くんが対旋律を歌うんです。
もう、ほんまに、うまいよね~~!

とにかく、劇中の服部さんは熱い男です。
音楽が好き、戦時中の規制がある中でも音楽を届けようという気持ちが熱いんです。

実際の服部さんは3回、中国に渡っているそうです。
最初は1938年、芸術慰問団として中国へ。
その時から、中国の音楽家と交流があったようですね。
1944年に訪れた時は、陸軍報道部員として。
文化工作を音楽を通じて行うという任務。
音楽ファーストの服部さんを悩ませるのは、この任務ですね。

音楽会を開こうと提案するのは、陸軍報道部の山家少尉。演じるのは山内圭哉さん。
彼は音楽や映画など中国の文化面に精通し、中国語が話せて、中国名まで持っているという人。
裏社会にも顔が利く人のようです・・・

服部さんに上海で大音楽会を開くことを提案するのですが、服部さんは素直にウンと言えません。
日本に対して反感を抱く中国の人を懐柔するという文化工作なのか。
音楽が国のプロパガンダになってはいけないと、服部さんは強く思うのです。

山家さんは戦地で攻撃を受け、部隊は壊滅。
傷を負って、死を覚悟したときに助けてくれた仲間と民家に隠れた。
そこで聴いたのが「別れのブルース」だったという話をします。
「別れのブルース」は服部さんが作った曲。
日本では発売禁止になった歌ですが、戦地の兵隊たちの間では人気の曲だったそうです。

自分は音楽に救われた。音楽は、自分に生きる勇気を与えてくれた。
だから今、こんな状況だからこそ、上海にいる人々・・日本人も中国人も、すべての人々に音楽を聴いて欲しいのだ、と。

ラ・クンパルシータの店内にいた人がみんな、黎錦光も、中川中尉も、山家さんの話に聞き入り、
音楽会を開くことに賛辞を送ります。

「ぼくは、ぼくは、恥ずかしい~」

反発していた服部さんが、山家さんの本当の気持ちを聞いて、自分を恥じるシーン。
あそこも、びっくりするくらい洸平くんは体を使って?嘆き、詫びるんですね。
・・・東京初演より、大阪公演のほうがすごかったです。
中川中尉を投げ飛ばしてましたから~(苦笑)

服部さんと何度もぶつかるのが軍人の長谷部さん。演じるのは山西惇さん。
実在していない人ですが、当時の軍人を代表するような人物として描かれています。
ラ・クンパルシータに集い、ジャズに興じる服部さんらに嫌味というか、非難するんです。
日中戦争さなかのこんなご時世に「音楽なんて非国民」だと。
「音楽会なんてできるわけがない」とも言います。

「音楽で戦えるのか」

「音楽は、人が生きていくために必要なものです」

山西さん演じる長谷部に訴える服部さん。
長谷部と対峙するシーンが何度かありますが、最後の二人のシーンは涙がこぼれました。
服部さんは、共産党員だった黎錦光が共産党組織の人間に圧力をかけられて悩んでいることを知って、音楽会はやめる、って言うんですね。
音楽の力を信じてたのに、音楽では救えないことがあるんだと。自分の無力さを嘆くんです。
・・ああいうお芝居はほんとにうまい。洸平くんのエモいところです!

その時に、長谷部さんは言うんですね。
服部さんがつくった「別れのブルース」に自分も救われたということを。

「どうにも立ち行かない今だからこそ、耳を塞いではいかんのじゃないか」

長谷部さんは山家さんと一緒に、あの時戦地で「別れのブルース」を聴いていたんですね。

というかこの台詞も、現代にも通じる言葉です。沁みますわ~

もちろん、音楽劇やな~っていうくらい、歌がたっぷりあります。

歌われる曲は、全部で12曲。
オープニングが、本間さんがこの舞台のために作った「希望の音」。
2曲目は、服部さんと李香蘭が歌った「夜来香」 → こちら
参考までに Youtube に上がってるのを貼っておきます・・

3曲目は、李香蘭が音楽会で歌う服部さんの曲「蘇州夜曲」 → こちら

4曲目は、服部さん、黎錦光、李香蘭が屋台でビールを飲み、語り合い、歌い始める服部さんの曲。「タリナイソング」 → こちら
中川中尉も加わって歌いましたね~ 

5曲目は、ラ・クンパルシータで、支配人と山家さんが歌う、服部さんの「チャイナタンゴ」 → こちら

6曲目は、ロシア民謡の「赤いサラファン」 → こちら
李香蘭の幼馴染のリュバは白系ロシア人。李香蘭に歌の勉強をすすめたリュバ。
舞台では悲しい再会をしますが、晴香ちゃんと元タカラヅカの仙名彩世さん、お二人が歌います。
とっても素敵なハーモニーでしたね。
リンク先は、由紀さおり・安田祥子さんのデュエット。

7曲目は、服部さんが作曲した軍歌「祖国の柱」 → こちら
服部さんは戦意高揚の曲を作りたがらなかったそうですが、(作ったけど売れなかったという説も~~)こういう曲を作られていたんですね。
初めて聴きました。
戦意高揚のための音楽会ならやりたくないという服部さんを説得しようと、黎錦光が服部さんの部屋で、アカペラで歌います。

8曲目は、二幕、音楽会シーンで中国人女優の白光が歌う「バイバイ上海」 → こちら
Youtubeにはなくて、配信サイトの視聴で。
仙名さんが歌います。キレイやし、歌もうまいし~~

9曲目は、山家少尉の職務室で中川中尉とコーヒーを飲むシーンで「一杯のコーヒーから」 → こちら
ここで、やっと山内さんらしい?笑いがあります! 
このあと、帰還命令がくだるんですけどね(涙)

10曲目は、なんと、ナポリ民謡「サンタルチア」。
実在の人物でもある中川中尉。
イタリア留学をして声楽を学んだという中川さんがめっちゃ歌い上げるんですけど、なぜか、イタリア国旗まで出てきて。
(国旗までいるんかい~~? 苦笑)
上山竜治くん流の笑い?を提供してくれてますね~~ これは、リンクなしです。

11曲目は、音楽会で川島芳子が歌った「別れのブルース」 → こちら
実際には、川島芳子は歌ってないはずやけどね。
歌う壮一帆さんが、めっちゃキレイで~ かっこいい!!
歌もうまい、ほんとに!

12曲目は、「夜来香幻想曲」。
服部さんが、黎錦光が作った「夜来香」をジャズのシンフォニックバンド用に編曲した曲やそうです。
音楽会のラストに流れて、李香蘭が歌うのですが、当時書いた楽譜は持ち帰れてないとか。
交響楽団が演奏して、李香蘭が歌ったようですが、実際はどんなんやったんでしょうか。
舞台では、ナマ演奏で壮大な曲にになってましたね!

東京初日は3月12日。
初日はどうしても手探りのようなところもあるのですが、ベテランのお二人(山内さん、山西さん)が、しっかり締めてくださってて、座長の洸平くんは生き生きしてましたね。
生き生きしすぎてた感もありますが~~ (苦笑)

「長谷部さん」と言うところを、「山家さん」て言ってしまい、すぐに、「いや、長谷部さん」と言い直してましたね。
気にならないくらい自然な感じで言い直してました(気付かなかった人もいたかと~)
座長とはいえ群像劇です。
それでも、洸平くんの牽引力を感じましたね

洸平くんと白洲くん、晴香ちゃん。
ほんとに、若い3人の舞台やなとしみじみ。

パンフにある山内さんのコメントが若い3人を支えてる感があって・・・
「若い彼ら彼女らが素敵に見えるように、輪郭を縁取っていくのが僕たちの仕事やと」思うって!
ほんと、うれしい言葉でした。
洸平くんについては・・・服部良一について、戯曲の情報が「音楽が好き」しかないので、
「勢いだけで演じたらただのアホに見ええてしまう(笑)・・・・洸平くんは独特の回路で芝居をする俳優なので、それがうまく作用したらいいなと思いますね」

どうですかね、山内さん。
確かに初日は「ただのアホ」に見えてしまいそうでしたけど(苦笑)大阪公演では、説得力ありました。
素敵でしたよ!頼もしかったですし!!

そして、パンフの山西さんのコメントは読みながら涙がこぼれました。
・・・なぜこれほどたいへんな思いをしてまで僕たちは舞台に立とうとしているのか・・・
今回のお芝居にも出てきますが、大変な時でもお金を払って劇場に足を運んでくださる方々がこんなにたくさんいる。感謝の気持ちでいっぱいです、と。

山西さんはつらい時に「あのドラマみたいになってるな」「あの小説みたいやな」と思うことで救われたそうですが、舞台もそれと同じ効果があるんじゃないかと。
客席のお客さんと共有できる。それはとても大事なことで、まさに、舞台に立ち続ける理由なのかなと。
舞台は、キャストスタッフだけでなく、観客とともにつくりあげるものですもんね。

座長の洸平くんは、「舞台は、芝居は難しいという当たり前のことを思い出させてくれる」と言ってます。
ドラマの出演も増えたけれど、時間をかけて作り上げる舞台で鍛えられたからこその演技やと思っています。
というか、ドラマで瞬発力を鍛えられてきたんやなと感じましたよ。
経験は裏切らないですから。

映像も良いけど、もちろん、歌も良いけど、やっぱり、もっともっと舞台で拝見したいなぁ~って思います。

相変わらず、長い感想になってしまいましたけど・・・・
書きそびれているところとかあるので、また書きます~

『夜来香ラプソディ』感想の前に、は → こちら
「夜来香ラプソディ」 感想その2 は → こちら



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