水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

のだめカンタービレ

2010年05月01日 | 演奏会・映画など
 映画ジャッジというサイトを見たら、「のだめカンタービレ後編」が酷評されていた。

 ついに実現した二人の“共演”は、グランドフィナーレにはあまりにも地味すぎやしないか。30点。(渡まち子)

 1話逃さず見ていたファンならもっと評価アップだとは思うが……。20点。(前田有一)

 音楽家を目指す若者たちは苦悩や葛藤よりも、「クラシックやってます」的な浅薄な選民意識に酔ってお祭り騒ぎを繰り返している。そこには音楽に対して真摯に向き合う姿勢はなく、バラエティ番組のノリではしゃいでいるだけだ。30点。(福本次郎)

 「音楽に対して真摯に向き合う」って、どうすることだろう。
 野球でいうところのイチロー選手のようなのをイメージしてるのだろうか。
 たぶん、福本氏のイメージでいったら、おれなんか全然だろうな。
 楽譜のすべての音に音名をふってやっと何の和音かわかるレベルで、こんどこそ完璧にアナリーゼするぞと思いながら、気がつくと本番が終わり、次からがんばろうと考えている自分。
 なかなか結果がでないとき、ま、おれは音楽の専門教育受けたわけじゃないからなと言い訳してる自分。
 楽典や指揮法ももう少し勉強しなければと思う一方で、もう少し部活にさける時間があればなあと言い訳している自分。もう少し音楽に真摯に向き合えたなら … 。
 
 パリに留学してコンセルヴァトワールでの勉強を続けながら、コンクールに出してもらえず、与えられた課題をこなすのに精一杯ののだめは、だんだんと焦りを覚えるようになる。
 コンクールで入賞する友人や、千秋先輩との競演を果たすピアニストの孫RUIの姿をみて、コンクールに出させてほしいとオクレール先生に直訴するのだめ。
 しかし、先生はそれを認めない。もっと課題をしっかりこなしなさい、まだ音楽にちゃんと向き合ってない、と諭すのだ。
「ちゃんと向き合ってましゅよ、のだめだって … 」ってのだめが涙目になるところのせつなさを感じられない人は、この映画を語らなくていい。
 物心つかない頃から英才教育を受け、幼いうちに華々しくデビューした孫RUIみたいな人には勝てっこないと案じているのだ。
 自分もちゃんとやってる、練習もしてる、のだめのピアノが一番だと言ってくれる人もいる、そう思いながら、自分に自信が持てない状態なのだ。
 これを「音楽家を目指す若者たち」の「苦悩や葛藤」と言わずしてなんというのだろう。

 コンセルヴァトワールのオクレール先生は、のだめの天分を充分に理解しているものの、彼女の最も欠けてかけている部分を教えたいと思っている。
 それは、長年の西洋音楽の歴史が築いてきた様式とその精神であろう。
 どんな曲でも、その天性の才能で自分なりに演奏はできてしまうのだめの力量はもちろんわかっている。
 でも、そんなのだめが、ちゃんとした西洋音楽の精髄を体にしみこませることができたときに、彼女の天分が、その時々のものではなく、揺るぎないものとして開花すると確信しているのだ。
 だからこそ、のだめには毎回きびしい課題をだし、コンクールに出ることを許さない。
 一方のだめは、オクレール先生のそんな思いには気がつかない。
 もちろんそれはのだめだからではなく、若さがそうさせるものであり、きっと誰もが通る道だ。
 もう一歩というところで、彼女はオクレール先生からにげてしまう。
 
 中高生のときに吹奏楽をはじめ、そのまま音大で勉強した後、吹奏楽の顧問になったという、この道一筋の先生がいる。
 そんな先生方の率いるバンドに惨敗するときの気分を思い浮かべると、「ちゃんと向き合ってましゅよ」と歎くのだめを涙無しには見られなかった。
 のだめのような天分さえおれにはない。

 のだめの才能を、オクレール先生と別の方向から開かせようとしたのが、シュトレーゼマンではあるが、彼のとった方法がいいものかどうかは意見のわかれるところである。
 結局のだめは、ピアニストとしての自分にもどれなくなるのだから。
 最後に、そんなのだめにもう一回本気でピアノをひかせるのが千秋先輩だ。
 だから、この映画の最後に二人の連弾シーンが描かれるのは必然であり、ここでおわるけど二人は二人で良い感じになっていくんだろうな、今後もいろいろ試練はあるだろうけど二人で乗り越えていけるだろうなと予感させて大団円を迎えた「のだめカンタービレ」は、一見じみだけど、じつに深いのである。
 「チルソクの夏」「スイングガールズ」「サマータイムマシーンブルース」「奈緒子」「ラストフレンズ」そして「のだめカンタービレ」と追いかけてきた上野樹里ちゃんの、一つの節目かなと思った。
 K越高校H田先生と「スイングガールズ」の生ライブに行き、あまりのかわいさに驚いてから何年も経つ。まさか大河ドラマの主役にまでなるとは思わなかった。
 原作の二ノ宮先生も「平成よっぱらい研究所」から隔世の感がある。
 この映画を観て30点とかいってしまう寂しい人生を過ごしてなくてよかったと思う。ぶらぁぼ。
 
コメント (3)
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