水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

武士道シックスティーン

2010年05月16日 | 演奏会・映画など
 剛と柔、静と動、凹と凸、赤と黒、猪木と馬場、談志と志ん朝、佐渡裕と大野和士、栄と伊奈 … 。そして、成海璃子と北乃きい。
 この二人、すごすぎる。
 作品そのものは、ある意味古風とさえいえるほどのストレートかつオードックスな青春スポ根だ。
 成海璃子演じる主人公の磯山香織は、幼い頃から道場主である父親から徹底的に剣道を鍛えられ、中学生の全国チャンピオンにもなる。
 そんな磯山を、たった一回倒してしまったのが、北乃きい演じる西荻早苗。
 磯山は、自分を負かした西荻をおって、彼女の通う中高一貫の女子校の高等部に進学してくる。 
 そこで見つけたのは、剣道は楽しめればいい、磯山に勝ったのはまぐれだったという早苗であり、入部した剣道部も、磯山が目指す剣道をやれるほどの厳しい部ではなかった。
 休み時間に鉄アレイをもちながら五輪の書を読み、昼休みはあぐらをかいて大きな握り飯をほおばる磯山を、まわりの生徒は敬遠するが、早苗は「武士だーー」と目をきらきらさせる。
 お互いのことが気になってしょうがなく、自分にないものを相手がもっていることに気づき、紆余曲折をへながら心を通わせあっていく二人。
 二人が巌流島に見立てた小高い丘の上で、防具をつけずに二人が対決シーンはもう、ほんとに涙なくしては見られない(またかよ)。
 いや正直にいえば、前半のなんでもない場面で、たとえば成海璃子が鬼の形相で北乃きいちゃんをにらむ場面でぐっときてしまっていたのである。
 お芝居がすごすぎる。二人とも。
 ビジュアルも演技力もたぐいまれな二人だが、撮影中にちょうど役の二人のようにライバル心をいだいたりしてるのではないだろうか。
 そうでないとしても、一生懸命さが伝わってくる仕事ぶりだ。
 仕事に対する誠実さ。ちがうな。
 自らの才能に対する誠実さだ。
 無意識のうちに彼女たちは自分のやるべきことをつかみ、ひたすらうちこんでいるのだろう。うらやましい。
 そんな二人の力を存分にひきだしている監督さんもえらい。
 せっかくの素材をつまらないギャグでだいなしにしている監督さんもいたので、なおさらそう思った。
 お金はあるけど想像力のかけらもない監督さんがつくったSFもどきみたいなのもあったけど、そういう意味の大作でなくても、3Dとかにしなくても、普通の素材でいい映画はつくれるのだ。
 こんないい作品をなぜ県内ではやってないのだろう。
 ここをお読みの方、ぜひ新宿か池袋へ行ってみてください。
 たぶん、青春どまんなかにいる人より、その時代を対象化できる年齢になった方に、直球でささってくると思います。
コメント
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