映画『星守る犬』は、原作のマンガ通りにつくられていたので、原作で泣けなかったからやはりこっちでも泣けなかった。
いや決してつまらないわけではないし、ハッピーという犬に感情移入できる人にとっては心打たれる作品となるだろう。
ていうか、犬がかわいそすぎ。その原因は西田敏行扮するお父さんだ。
娘さんが幼いころは明るく楽しかった家族が、それぞれの人生の変化とともにだんだん心が通わなくなり、不況によるリストラでお父さんが職を失うと、娘や妻との関係も冷えきってしまいついに熟年離婚を迎え、病気をかかえたままホームレスになって、無縁死を迎えるという、現代社会の問題を公式のようにあてはめた人生だ。
身一つでバンに乗って旅に出て、山中でそのまま死を迎えようとするのは、自殺に近い亡くなり方だが、たった一人(一犬)の味方がハッピーという犬で、お父さんが息をひきとったあとも、けなげに食べ物をさがしてきてお父さんにとなりにおく。
たしかにせつない。
ちょっと不器用なだけでこんな悲しい運命になってしまう日本社会の現状、なんていうメッセージもこめらているのかもしれないが、どうしてもこのお父さんがかわいそうとは思えなかった。
年が近いせいか、人ごとと思えないのが一番の理由だろう。
西田敏行といえば、柴俊夫との「坊っちゃん」が「池中玄太」よりも面白かったなあという世代だから。
誰もが無縁死を迎える可能性はあるとは思いながら、おれならもう少し、こうなる前になんとかしたいと思ってしまう。
仕事にしても、家族に対しても。
そんなたいそうな人生を送っているわけではないのだから。
お父さんの年齢設定は、たしか定年少し前くらいのはずだ。
ぜんぜん若いじゃないか。
60歳過ぎてもエネルギッシュな方はいくらでもいる。
縁あって昨年から何回かバンドをご指導いただいた先生も、お若い。
それは決して見た目とかの問題じゃなくて、何かをやるということについて面倒くさがらない若さという感じだ。
むしろ若い人よりも、躊躇なくいろいろやってしまう感覚で暮らしてらっしゃる。
先日も「映画館で『もしドラ』シニア1枚って言うのちょっと恥ずかしかったよ」とおっしゃっていた。
もし奥さんが出て行ってしまったなら、新しい彼女をつくろうかぐらいのいきおいで生きたいじゃないですか。 たぶん現実社会の西田敏行氏って、そんな感じだと思うけど。
なんか、もう年だからとか言って諦めてる姿を見ると逆に「かっこつけてんじゃねえよ」と思ってしまう。
もう一つ、お父さんの生き方に、今の自分たち日本人の象徴を見てしまうのもつらい。
先日の大震災以来、この国のいろんな問題があきらかになって、これを機にみんなちゃんとしようよと言う人はたくさんいる。
そう思っている人ももちろんたくさんいる。
でも、結局かわんなそうな雰囲気がただよいはじめてるよね。
みんな粛々と、放射能あびながら暮らしてるじゃないですか。
家族を失い、ふるさとを奪われ、いまだに水道も電気もないところで暮らしている人がたくさんいて、政治家はあんなだし。
わかってるよ、陽一郎君。選んだおれらが悪いんだよ。でもここまでって思わなかったもの。
ひょっとしたら、誰が政治家になっても、そんなに結果は変わらないのかもしれない。
東電がとか、役所がとか、マスコミがとか文句は言うけど、そんな問題でもないような気がする。
それぞれの局面において、それぞれの場所で、ほとんどの人がまじめに生きている。
がんばらなくていい分までがんばっている人がいっぱいいる。。
でも国全体としたら … 、みんなで緩やかに車の中で死を迎えようとしているようにしか見えないのが、今の日本なのかなと思えてしまうのだ。
久しぶりに書いててくらくてすいません。仕事は元気です。