水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

エンディングノート

2011年10月10日 | 演奏会・映画など

 昨日は、指揮のレッスン、一日試験問題作成。
 今日は、さいたまスーパーアリーナでの塾主催の相談会。
 私立高戦士に休息はない。
 万が一のことがあっても、休息のない企業戦士には認められる過労死認定は、たぶん教員には認められないだろうなあ。

 定年退職から数年後に癌をわずらい、たくさんの家族に見守れながら亡くなっていく「エンディングノート」の砂田さんの死は、あまりにも幸せな亡くなり方だと思った。
 67年の人生は平均寿命からすれば少し短いかもしれない。
 もちろんいろいろと辛い局面はあっただろうが、企業戦士として家庭をも顧みずとびまわり、そんな状態だったから夫婦の仲違いも過去にはあり、でも熟年離婚のような事態にはいたらず、病後かえって夫婦の絆は深まり、長男長女たちは結婚し孫をもうけてくれて、ファザコンの次女はいつもカメラで自分を撮影してくれている。
 のちに是枝監督の助手まで務めることになった次女の手によって、それらの映像は編集されて一本の映画となった。
 死を迎えることを宣告された砂田さんが行ったのは、「エンディングノート」をつくり、自分で自分の死を段取ることだった。
 葬祭場をみつける、遺産分与のだんどりをする、伊勢志摩観光ホテルの黒鮑のステーキを食べる、孫と気合いを入れてあそぶ、妻に「 … 」と言う、など。
 だんどりは自分のサラリーマン人生でもっとも得意としたことであり、そう考えるとこういう死の迎え方をすること自体が砂田さんなのである。
 死ぬ間際にこんなことをしたいと願っても、死期を悟った段階ではもう体がいうことをきかなくなっているのが普通だ。
 そう思うと、間際まで体も意識もしっかりしてて、意識が混濁したらすぐに召されていった砂田さんはうらやましくさえ思う。
 もっといえば、自分の願いを叶えるためのお金、虎ノ門病院の個室に入院できるお金を心配しなくていい状態であったことが、うらやましい。
 金持ちだからあんな死に方ができるんだと批判する気持ちはむろんないが、幸せな最期を迎える大きな要素ではあろう。
 ああ、やっぱお金って大事なのね。
 あと、アワビのステーキってそんなにおいしいのかな。今死を宣告されて食べたいもの何と聞かれたら、GOGOカレーとかヨーロッパ軒とか花田の味噌ラーメンとか言ってしまいそうになる自分を想像すると、おれって豊かとは言えないなと思い始めた。
 せめて … えーと、ズワイガニのセイコ(雌)のウチコとか言ってみようかな。
 セブンイレブンのおでんの牛すじも捨てがたいけど。あ、山田うどんで最近はじまった肉南蛮そば(480円)は絶品だ。
 死ぬ間際になってはじめて奥さんに「 … 」とか言うのはどうなんだろう。ぎゃくにひきませんか、言われた方は。
 ドキュメントというジャンルに入るのかもしれないけど、これはあくまでも次女の砂田麻美監督による「作品」だ。エンターテイメントとしての映画作品だ。
 そして砂田監督という一つの才能がまたあらわれたなあと思える映画だ。

コメント
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