水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

10月26日

2011年10月26日 | 日々のあれこれ

3学年だより№11「淡々(2)」

 作家の村上春樹氏は、「小説家にとって最も重要な資質は何ですか」という質問に、「言うまでもなく才能」だと述べる。「文学的才能がまったくなければ、どれだけ熱心に努力しても小説家にはなれない」と。
 小説家という限られた(選ばれたと言うべきかな)生き方ができるのは、おそらく神から命じられた限られた方々だけであろうことは、想像に難くない。
 才能の次に大事なのは、何か。
 村上氏は「集中力」そして「持続力」だと言う。


 ~  自分の持っている限られた才能を、必要な一点に集約して注ぎ込める能力。これがなければ、大事なことは何も達成できない。そしてこの力を有効に用いれば、才能の不足や偏在をある程度補うことができる。
  … 集中力の次に必要なものは持続力だ。一日に三時間か四時間、意識を集中して執筆できたとしても、一週間続けたら疲れ果ててしまいましたというのでは、長い作品は書けない。(村上春樹『走ることについて語るときに僕が語ること』文春文庫) ~


 文学的才能の「まったく」ない人が、集中力や持続力をもって努力しても小説家にはなれない。
 しかし、小説でなければ、何か別の対象におきかえて「集中力」と「持続力」をもって努力すれば、その別の対象で何らかの結果は出ると考えられるのではないだろうか。
 実は、村上氏自身、自分の才能は「それほど恵まれていない」と言っている。
 ノーベル文学賞に最も近いと言われる作家、『1Q84』という数百万部を越えるベストセラーを生んだ村上氏は、自分の才能の不足を「集中力」「持続力」とで補ってきたと言う。

 

 ~ このような能力(集中力と持続力)はありがたいことに才能の場合とは違って、トレーニングによって後天的に獲得し、その資質を向上させていくことができる。毎日机の前に座り、意識を一点に注ぎ込む訓練を続けていれば、集中力と持続力は自然に身についてくる。これは前に書いた筋肉の調教作業に似ている。日々休まずに書き続け、意識を集中して仕事をすることが、自分という人間にとって必要なことなのだという情報を身体システムに継続して送り込み、しっかりと覚え込ませるわけだ。そして少しずつその限界値を押し上げていく。気づかれない程度にわずかずつ、その目盛りをこっそりと移動させていく。これは日々ジョギングを続けることによって、筋肉を強化し、ランナーとしての体型を作り上げていくのと同じ種類の作業である。刺激し、持続する。刺激し、持続する。この作業にはもちろん我慢が必要である。しかし、それだけの見返りはある。 ~


 東大に入学できる高校生は約3200人。しかも毎年だ。
 何百年に一人の作家かもしれない村上氏の才能が恵まれてないのだとしたら、受験勉強に必要な才能など、ないに等しいのではないか。
 大事なのは、集中を持続すること。つまり淡々とやり続けることだけなのではないだろうか。

コメント
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