初めて観る、劇団だっしゅ公演「DISASTER~愛しきあなたへ」は、チラシから予想してたお芝居とは全く違ってた。
「東日本震災を題材にし、命を考える作品」とチラシにあって、何もない試験中の日曜だしという気持ちで出かけた。
場所は大塚駅から徒歩5分の萬劇場、地下3階、客席130席弱のちょっとあやしい小屋だ。
メール受付に「お早めにお越し下さい」と書いてあったので、開場時間の少し前に会場につく。
受付でお金を払い、番号順の入場ですともらった整理券番号が10番だったので、なんだ全然混んでないじゃんとほっとし、まあそうだろなあとも思った。
でも、10分前のタヌキの着ぐるみ姿の二人が前説で現れるころには客席もほぼ埋まっていた。
災害時の避難誘導の方法はまじめに説明してたが、携帯の電源は切ってといいながら盗撮してブログにアップしてもいいと言い始めたり、ちょっと下ネタの交じる劇団員の暴露コーナーがあったり、こんなに「充実した」前説は初めて聴いた。
この段階ですでに予想外の展開で、でもけっこう好きな感じ。
本編に入ってからも、シリアスなシーンと笑いをとりにいくシーンとがほどよく混じっていて、だからこそ重い題材がストレートに伝わってきたのかもしれない。
主人公の幸(ゆき)さんは、市役所の「何でもやる課」に勤務する職員。
明るく元気で天真爛漫な役で、しかも役にぴったりの顔立ちでアニメ声、でもけっこうグラマラスで、すごい魅力的だ。
彼女は赤ん坊のころ、施設の前に捨てられ、同じような境遇の数人の仲間とそこで育ってきた。
その仲間たちや彼女の暮らす町の人々との、あれやこれやが描かれていって、これ震災とどうつながるのかなと思いながら見ていた。
途中で、幸がラジオのDJを担当することになった時、もしかしたらあの話につながるのかと思い、だったらつらいなと思ったけど、予想通りだった。
幸が交際している浩一くんの妹が妊娠し、父親はそれを知らずにドイツに留学してしまい、子どもをおろすという妹を説得する話が前半のメイン。
それが解決し、浩一とも結婚の約束をし指輪を贈られた翌日、地震はおこった。
海の近くにある放送塔で、彼女は避難を呼びかけ続ける。
津波がきます、みんな高台に逃げて! と叫び続ける。
避難放送をし続け多くの人の命を救い、自らは津波にのまれていった津波南三陸町の職員の方の話をもとにしていた。
彼女の遺体がみつかったあと、浩一が「彼女をかえしてほしい」と叫ぶ。
何もいらない、他の誰かはどうでもいい、彼女さえ助かってればいいと考えるおれはまちがってますか? と叫ぶ。
がんばろう? これ以上どうがんばれって言うんだ、おれら何もかも失ってるんだよ、と叫ぶ。
被災地の方の声を、しかもなかなか伝わってこない本音を代弁していると思った。
「地震のシーンなしで、二人が結ばれたところで終わった方がよかった」というアンケートの声があったそうだ。
たしかに、それだとお客さんは楽しく帰れる。
それじゃだめなんだろうなあ。
かといって、最初から最後までシリアス一辺倒にもしたくない劇団なんだろう。
役者さんはみな達者だ。
もっとメジャーな劇団の役者さんにまさるともおとらない。
こんなにスキル持ってて、下ネタやらギャグやら入れなくてもいいじゃんと思えるくらいだ。
でも、これが彼らのスタイルであろうことは間違いない。
前説の方が、今日は下ネタ80%カットですと言ってたから、ふだんはもっとすごいのかもしれないけど。
いい意味で裏切られたし、出会ってよかったと思う。行ってよかった。