東北大学の前期入試で、バスの大混雑のため受験生が会場に到着できず、試験開始を30分遅らせたというニュースがあった。
~ 国公立大学の2次試験の前期日程が25日、全国で始まった。仙台駅では東北大に向かう臨時バスに受験生と一緒に乗る父母が増え、そのあおりで乗り切れない受験生が続出。東北大は試験開始を30分遅らせた。 … 市バスを運行する仙台市交通局によると、仙台駅から東北大に向かう臨時バスが大混雑。受験生と同乗する父母が例年よりも目立った。やはり東北大と結ぶ定期運行のバスに父母を誘導したが、そちらも満員になってしまったという。(朝日新聞2014/2/25) ~
昨今の娑婆のようすを知っている方なら、最近は就活も保護者ががんばるくらいだから、大学入試に親が一緒でも不思議ではないな、ぐらいに感じるだろう。
実際、大学の入試会場には親用の待合室も用意されている(昔はなかったですよね)。
一方で、入試を遅らせるほどたくさんの親がついて行くとは何事だ、東北大学の受験生しっかりしろ! と感じた方が多数いることも予想できる。
案の定、ネット上では「大学受験に親がついていくなんてばかか、子離れしろ、親離れしろ」的な意見がたくさん書かれていた。
自分も最初そう思った。
でも、受験は毎年行われている。今年に限って保護者が極端に多くなるのも解せぬ。
試験開始を遅らせるほど混乱したとしたら、それを見越せない大学側に問題がないはずがない、何かあると思いながら、そのままにしてたら、こんな事情があったらしい。
~ 2014入学者向け説明会 開催決定! 東北大学新生活サポートセンターでは、新入生の皆さんに余裕を持って入学準備を進めて、充実した大学生活を送って頂くために、合格者向け・受験生保護者向け説明会を開催します。入試区分や入学後の住まいに応じて日程を分けて開催いたします。必要な入学準備をお手伝いし、新入生の皆さんの自立と成長の第一歩となる経験を提供いたします。(ただし、2月25、26日一般前期試験日は受験生の保護者様が対象) ~
東北大学生協主催で、保護者向けの説明会が行われていたという。予約や申し込みなしの先着定員制。
これなら、例年以上に保護者がでかけていったというのも理解できる。たとえば埼玉県の受験生の親御さんは、見事合格できたら、どこの住まわせたら良いのか、寮はあるのか、震災の住宅事情への影響はまだあるにちがいないとか考えるはずだし、同日に説明会あるそうだと聞けば、じゃ行ってみるかとなってもおかしくない。
交通手段が駅からバスしかないと受験要項に書いてあれば、そのバスは十分に用意されていると考えるのは普通だ。川東のように、ピストン輸送でがんがん運んでくれると埼玉県民は考えるのではないか。
新聞記事だけを見て、すぐに最近の受験生はとか、親はとか安易に言わない方がいい。
これはリテラシーの問題だ。
メディアの報道を見て、どう思うか。どう判断するか。
たとえば新聞やテレビの報道がいかに偏ったものであるかを、震災の時に思い知ったではないか。
なのに、「最近は入試に親がみんなついていく」と新聞に書いてあったらそのまま信じ、「へえ」とか、「ふざけんな」とか思う。「ほんとに?」と思うことを忘れないことが、メディアリテラシーだろう。
リテラシーを高めることは、国語教師の仕事でもある。
熊本県の高校生が、「明日ママ」反対署名をしたというニュースにも同じことを思う。
その生徒さんは 子どもの頃いやなあだ名をつけられて苦しんだ経験があり、この署名集めを思い立ったという。
その生徒さんをせめるつもりはないが、ある程度の国語力と番組理解能力があれば、もう少しちがった対応になるのではないか、高校の先生方は何を指導されているのかという疑問は抱く。ドラマの内容よりも、報道による空気感に動かされている部分はないのか、と。
それを言ってあげるのが大人の役割で、その結果、彼が自分の信じた道を歩むこと自体には何の問題もない。
ただ、この生徒さんが、いろんな人たちに利用されるばかりにならないことを祈りたい。