講習受講者用の課題を添削していると、「あなまさなや」の訳ができない子が多かった。
「あなかま」の訳語として「静かに!」を丸暗記させるだけになってたかもしれないと反省する。
「あなまさなや」は、感動詞「あな(ああ、なんと)」、形容詞「まさなし(よくない)」の語幹、終助詞「や(なあ)」で構成される。
「あなまさなし」は、課題の文章では「なんてみっともない」のニュアンス。
それを強く言うと「あなまさな!」になる。
映画「銀の匙」の1シーン。
自分のミスで、絞ったばかりの牛乳500リットル分をダメにしてしまった八軒君が、御影さん(広瀬アリス)に尋ねる。
「牛乳1リットルって今いくらなの?」
「買い取り価格が83円かな、だから500リットルだと … 」と御影さんがいうと、八軒くんが「41500円か!」瞬時に言う。
アリスちゃんが「計算はやっ!」と声を漏らす。
「はやい」ではなく「はや!」という。これが形容詞の語幹用法だ。
吹雪の日に外にでた瞬間口にするのが、「寒いなあ」ではなく「うっ、さむ!」である。
これが感動詞+形容詞語幹であり、古典では「あなさむ」になる。
「きもっ!」とか「まじうざ」も同じ。
古典では「あなかしこし」が「あなかしこ(なんと畏れ多い)」になり、「あなかまし」が「あなかま(なんてうるさいの)」になる。「あなとし(疾し)」の「あなと(まじ、はや!)」もたまに出てくる。
ちなみに1994年のセンター試験で「あなかま」の意味が問われたときは、こんな選択肢だった。
① 仲間におなり ② 静かにしなさい ③ とんでもない ④ もっと大声で ⑤ かまわずに
①はだじゃれだけど、ひっかかった生徒さんもいたな。①が遊びであることに気づけば、対になっている②か④のどちらかが正解である可能性は高いから、古文の知識がなくても、この問題は実質二択問題だったのだ。