学年だより「デフォルト・モード・ネットワーク」
過去、成果をあげてきた先輩達の様子を思い起こすと、みな「素直」だった。
「学校の勉強さえしっかりやれば大丈夫」という言葉を素直に信じ、その通りに勉強を積み重ねていた。
しかし素直と従順とは異なる。
ただひたすら先生の言うことを鵜呑みにしていたわけではない。
授業や宿題で与えられる課題をこなしながら、自分なりに咀嚼していた。
いったんのみ込んだうえで、最も自分に必要な形にして貯蔵していったと言い換えてもいい。
そしてそれは「無意識的に」そのようにしていた部分が大きいような気がする。
これは必要だよ、役に立つよといって与えられた情報はとりあえず素直に吸収し、あとは脳の判断にまかせていたのだ。
睡眠時間以外のすべてをフルスロットルで活動し続けている人も、世の中にはいる。
しかし、それをずっと続けるのは、普通の人にとっては、身体的に、精神的に負担が大きすぎる。
のんびりする時間、ぼおっとする時間も必要だ。
「成功者」と世間から呼ばれている人たちも、思いのほかそんな時間を作っている方を多くみかける。
外から見れば、身体的には休息をとっている状態、何もしてないように思える状態、自分の意識としても何も考えていないと思っている状態であっても、脳自体は活動し続けている。
むしろそういう時間帯の方が、脳は大量のエネルギーを消費し続けていることが、最近の研究であきらかになっている。
次に何をすべきか、とっさの出来事にどう対処するか、インプットされたままの大量の情報をどうするか。
デフォルト・モード・ネットワークと名づけられた回路が、脳のあちこちに指令を発して、準備をしているという。
何かの仕事を意図的に行っているときは、脳の必要な部分が集中的に活動している。
話しているときには言語野が、行いの正しさを悩んでいるときには前頭葉が、というように。
何もしていない(と自分では思っている)とき、むしろ脳内では活発にネットワークが広がり、調整してくれている。
たとえば読書している時間は、何もしていない状態の逆に5%しかエネルギーを消費していないそうだ。
眠っているときも同じだ。
解決できなかった問題が、ある時急にひらいめいたり、新しいアイディアが突然おりてきたりするのも、この作用に基づく。
とすれば、とりあえず人の言うことは「素直」にきいておいて、やれと言われたことは意味を考える前にまずやってしまって、あとは脳におまかせすればいい。
ちなみに、このデフォルト・モード・ネットワークの機能が弱まっている状態と、アルツハイマー、うつ病との相関が明らかになりつつあり、新たな診断や治療が模索されている途上だという。