学年だより「ドーパミン(2)」
日常的にドーパミンが出やすい状態は、どうやってつくればいいか。それにはコツがある。
~ ドーパミンはタダなのですが、ドーパミンを出すには、実はちょっとしたコツがいります。
… どういう時にドーパミンが出るかというと、「サプライズ」の時に出ることがわかっています。簡単に言うと、ドーパミンはちょっと意外なことがあると、出るのです。
子どもの頃はサプライズがたくさんあります。
子どもというのは、この世の中のことをあまり知りません。だから、経験したことがない、初めてのことがたくさんあります。
たとえば2歳の子どもは今年の春、物心ついて初めて桜を見るわけです。赤ちゃんの時も見ていたかもしれないけれど、その時はあまりよくわかっていなくて、今年の春、初めて「桜っていうのはなんなんだろう」と思って見るわけです。
「さまざまなこと思い出す桜かな」という松尾芭蕉の旬がありますが、私たち大人も桜を見て、昔のこととかいろいろなことを思い出します。ですが、物心ついて初めて見た桜は、子どもにとって大きなサプライズです。この時にドーパパミンが出ます。
同じように、初めてイチゴを食べた子どもの脳を想像してみてください。皆さんはイチゴを食べ慣れていますが、子どもは生まれて初めてイチゴを食べるわけです。赤くて三角をしているものはなんなんだろう。そういう味のものがあることも知らないで、おっかなびっくり食べてみます。初めてスイカを食べた時、初めてバナナを食べた時、子どもの脳では何が起こっているかというと、ドーパミンが出ているのです。
ドーパミンは初めてのことをした時に出るのですが、それはちょっと不安になるくらいの初めてのことでないとダメなんです。 (茂木健一郎・羽生善治『「ほら、あれだよ、あれ」がなくなる本』徳間書店) ~
自分が理解できる範囲内のもの、結果がわかっているものをやるとき、ドーパミンは出ない。
なんかよくわからないけど、これからどうなるの? どこに連れてってもらえるの? 何が自分にもたらされるの? というドキドキする状態のとき放出されている。
「素直に勉強に取り組むタイプは伸びる」と前に書いたが、脳科学的にも説明がつくだろう。
提示された新しい問題に素直に向かい合っているときは、初めてイチゴを食べる状態なのだ。
これを解きなさい、これを読みなさいと指示されたとき、「これって何のためにやるんですか?」「やって、何かいいことあるんですか?」という人には出ない。
そもそも「学ぶ」とはどういう状態を指すのだろう。
それまで知らなかったこと、自分にないものを身につける変化のことを言うはずだ。
だとしたら、それがどういうものかわからないものをまま、とりあえず言われた通りのみ込んでみることではないか。何かよくわからないけど、自分を変えてくれそうなものに人はドキドキする。ドーパミンが放出され、前頭葉が活発化し、どんどん吸収していく。