キングズ・シンガーズ。1968年に、ケンブリッジ大学を構成するキングズカレッジの学生によって結成されたコーラスグループである。依頼メンバーが入れ替わりながら現在まで半世紀近く活動を続け、世界各国でコンサートを行い、グラミー賞を二回受賞している … 。
幼いころからダークダックスやデュークエイセスが好きだった。あ、ボニージャックスもだ。
高校時代には、デュークエイセスの福井公演に行って感激した。後に本校の入学歓迎演奏会でよぶことができたが、その福井公演の感想を直接告げるまで20年かかった。
キングズシンガーズをNHKFMで初めて聞いたのはたまたまだったのだろうか。
あまりにも厚く、豊かなハーモニー。今は、どんなに難しいコードで歌っているか理屈ではわかるが、当時はただただすごいと感じるだけだった。
ラジオから録音したカセットテープを聞くのだから、音質自体は今とは比べものにならなかったはずだ。でも何度も聞いた。テナー、バリトン二人、バスという普通の四人編成のうえに、裏声で歌うカウンターテナーが二人配置された六人編成。音楽的には最大限の編成だ。しかもアカペラ。
今でこそ、アカペラのコーラスグループは山ほどあるが、キングズシンガーズが草分けと言っていいのではないだろうか。当時はボイパなんて言葉もなかったと思う。
高校時代に聞いていた歌声は、たぶん創世記のメンバーだった。生で聴きたいと思ったかな。あんまり思わなかったんじゃないかな。まさか本場に行くことはないし、仮に日本公演があったとしても東京まではなあという感覚だったろうし。
30年以上経って初めて、彼らのコンサートに行けた。場所は紀尾井ホール。
自分にはあまりなじみのない美しい音楽ホールだ。そういえば、亡くなった真島俊夫先生が「地球」という新曲を発表されたのを聴いたのはここだった。
当然、創世記のメンバーは一人もいなくて、予想以上に若いメンバーだった。パンフレットを見ると、2010年とか2014年に加わった方もいる。
歌声も若い。もちろん上手い。いや、上手い下手を云々するレベルではない。
クラシカルな彼らのオリジナル作品、世界各国の民謡(日本も含めて)、ビートルズ、アメリカのポップス、どの楽曲をとっても、クラシックの上品さと、ポップスの華やかさがほどよく混じり合い、会場一杯を包み込む倍音に身を委ねてしまう。
アンコールの「ダニーボーイ」「ふるさと」は、さすがに決壊してしまった。
年配のお客さん比率が高かったが、親に一緒にお子さんもけっこう目についた。入場できたの? というくらい小さい子もいたのだが、みんなちゃんと聴いている。
都会のお父さんお母さんは、こんな音楽を子どもに聴かせるのだなあと別のところにも感心した。うちも一回サントリーホールのオケに連れてったな。あとミューズの林家たい平師匠も行ったか。もうどこもついてきてくれない。